婚約者候補の筈と言われても只の家庭教師ですから

第23話 スコット公爵一家

「お久しぶりね、アメリア随分痩せたみたい」

「ようこそおいでくださいました。

ここのところ少しばかり忙しくしておりましたものですから」

　スコット公爵一家が今日の午前中王都につき、ランドルフ子爵家での夕食に招待したが会話が妙に続かないでいた。

「ご弟妹はどちらに？」

「弟は学園の寮に入っております。妹達は親戚のうちに行っておりまして、暫くは其方に泊まってくるようです」

　妹達はギルバートの騒動が終わるまで、母方の祖父の家に預けられていた。

　そろそろ帰ってきても良いのだが、居心地が良いようで中々帰ってこないでいる。

「これはご弟妹の方にと思って持ってきたの。今度渡して頂けるかしら」

「お気遣い頂きありがとうございます」

　微妙な空気の中でスコット伯爵は静観し、ソフィーとアメリアだけが会話していた。

　その原因になっているジョシュアは、真っ青な顔で目の前のポタージュスープを見つめて震えている。

　隣の席のイライジャが自分の食べかけのスープとジョシュアの前のそれを取り替えようとしたが、

「いや、だっ大丈夫だから」

　震える手でスプーンを取り上げた後、再び固まってしまった。

　全員が見守る中ロージーが、

「ジョシュア様坊っちゃま、遠慮せずイライジャ様に交換してもろうたらえんです。

命を守るんは1番大事なことですけ。

不安と甘えの違いを、よおっく考えなさいませ」

　食堂の中の緊張感が最高潮になる。

「不安になっても良いの？」

　ロージーは大きく頷き、

「理由のある不安は大切にせんといけませんです」

「イライジャ、交換してくれる？」

　にやりと笑ったイライジャがスープ皿を取り替え、ジョシュアは一口スープを口にした。

「美味しいです」

　全員の顔に安堵と喜びの表情が広がった。ジョシュアはもう一口スープを飲んでから、ロージーに向けて親指を立てた。

　その後の食事は順調に進み、穏やかな時間が過ぎていった。

　帰り際アレクシスがアメリアのところにやって来て、

「病気だったのは俺じゃないから」

「はい？」

「だから、王都に来るのが遅くなったのは俺のせいじゃないんだ」

　アメリアはにっこり笑って、

「はい、ソフィー様がお手紙で知らせてくださいました。

イライジャ様がお風邪を召されたとか」

「母上が知恵熱だって」

「おい、ジョシュア！　さっき迄の殊勝な態度はなんだ？」

　イライジャが顔を赤くして抗議している。

　ソフィーが笑いながら手袋を嵌め、

「事実だから騒がないの。こんな大きななりをしている癖に、想像以上のポンコツだったのよ」

　ランドルフ子爵夫妻はソフィーの物言いにびっくりして思わず、

「イライジャ様はポンコツですか？」

「ちっ違います。慣れない分野に挑戦するので、色々考えてたら体調を崩して」

「ねっ、ポンコツでしょ？」

　アレクシスが首を傾げながら、

「イライジャ・・えっ？　もしかしてお前って・・童○？」

「煩い、プライベートに踏み込むな」

「マジか～、今度やり方とか色々教えてやるから心配するなよ」

「煩い、お前「煩いのはお前達二人ともだ。子爵家の玄関先で見苦しい」」

「さあ、騒いでないで帰りましょう。

帰ったら昔のオリバーのポンコツぶりを聞くと勇気が湧くから」

「「「えっ？　父上も、ポンコツだったの？」」」