第15話 庶子でいっぱい

「すぐ後ろで食事をしていた男性達が、噂話をしていまして。

アレクシスは色んな女性とお付き合いされていると。


なので、沢山の新鮮な人参が目の前にあって食べ放題なのに、態々萎びた人参を取りに行く人はいないわと」


 アメリアが真っ赤になって俯くと同時に、食堂に大爆笑が響き渡った。

 壁際に控えていた使用人達も口を押さえて笑っている。


 アレクシスだけが呆然としていた。


「アメリアは、人じゃなくて馬に例えたんだよね。

それに孤児院と庶子の話とあとなんだっけ、玉なしの話も抜けてる」



 アメリアとアレクシスが青褪めた。


「ロージー、全部話しちゃったの?」

「俺、どんな噂されてんの?」



 ガックリと俯いたアメリア以外の全員に見つめられたロージーが渋々話し出した。



「孤児院はアレクシス様の庶子で一杯だとか、新しい孤児院はアレクシス様専用だとかでしたね。

後は、あれだけ遊んでて庶子がいないなら玉無しなんじゃないかと言われとったです」



 全員が、頭を抱えたアレクシスを呆れ顔で見つめた。



「アレクシスは、日頃の行いを考え直したほうがよさそうだな」


「はい」


 アレクシスが小さな声で返事した。




 翌日の午前中、ソフィーとアメリアは客間でアメリアの作品を広げていた。


「綺麗、これがアイリッシュクロッシェレースって言うのね」


「はい、ここの花のところみたいに立体的になってるのが特徴なんです」


「とても素敵だわ。こっちがノルマンディーレース?」


「色々なレースの端切れや作品をパッチワークで繋げて作ります」


「どちらもとても珍しいわね。普通のレース編みはしないの?」


 アメリアは恥ずかしそうに、

「珍しいものの方が高く売れるものですから」


「家計の足しにしてきたと言うわけね」


「私の趣味でもあるんです。今では時間を見つけては何か作ってないと落ち着かなくて」


「もしかしてこの半年の間にこれを?」


「はい、お給料を頂くのが申し訳ないほど時間が余ってしまったものですから。

もし宜しければこれを」


 アメリアは、大きなテーブルクロス程の大きさのノルマンディーレースを差し出した。


「頂いていいのかしら」


「勿論です。その為に作りましたの」



「ありがとう、遠慮なく頂くわ。今度お茶会を開く時にみんなに見せびらかさなくちゃ」


 ソフィーはにっこりと笑いながらレースを広げている。


「この半年で3人ともびっくりするほど変わったわ。

ジョシュアの件があってからどんどん悪くなる一方でね。もうどうにもならなかったの。


ジョシュアは引きこもっちゃうし、アレクシスはあちこちで喧嘩しててその内女遊びに夢中になって。

イライジャはいつも機嫌が悪くて。


まさか半年でそれを立て直してくれるなんて、いくら感謝してもしたりないわ」


「元々立派な方々でしたから」




「で、誰にするか決めたの?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る