婚約者候補の筈と言われても只の家庭教師ですから
との
第1話 破格の待遇
「は?」
「だからね、私の息子達の婚約者になって欲しいの」
「息子・・“達” ですか?」
「そうよ、じっくり見てからどれでも好きなのを選んでちょうだい」
八百屋でキャベツを選ぶみたいに、手に取って重さを測るとか?
あり得ない提案をしてきたのは、
その横では穏やかな笑みを浮かべるスコット公爵が、ゆったりと紅茶を飲んでいる。
「3人とも個性豊かで、なかなか婚約者が決まらなくて困ってるの。
あなたの様な方が来てくれたら、公爵家の将来は安心だわ。
どれを選んでも、あなたが次の公爵夫人になるのは確定だから心配しないでね」
アメリアは、あり得ない話に呆然と立ち尽くしていた。
ランドルフ子爵の長女アメリアには、両親と弟が一人と妹が二人いる。
子爵家は数年前事業の失敗から資金難に陥り、長女のアメリアは家計を助ける為キャンベル公爵邸で双子の家庭教師として働いていた。
「手に負えないって
その手腕をうちでも発揮して欲しいの」
「・・息子さん達はおいくつでいらっしゃいますか?」
「上から、23・21・19よ。丁度二つずつ離れてるの」
計画出産に成功したと、自信満々な顔のスコット公爵夫人だが、
「キャンベル公爵家の双子と同列に考えるのは些か問題があるかと」
「あら、それ程違わないと思うわ。
男の方の精神年齢なんて、子供の頃からそんなに成長しないもの」
夫人から『ね?』 と言われて返答に困った様子のスコット公爵は、
「身体が大きくなってる分、中身も成長してると思いたいがね」
「あら、悪知恵は働くけどそれだけだわ。いつまで経っても成長しなくて困ってるの」
「失礼ながら、スコット公爵家であれば縁談は選び放・・幾らでもあると思いますが」
「そう、選び放題なのよ。ところが実際会ってみると、あっという間に逃げられちゃうのよ」
「息子さんが断るのではなく、断られてしまうのですか?」
「断られるし、文字通り逃げ出した方もいらっしゃるの」
スコット公爵夫人は頬に手を当て溜息をついた。
「どの様な状況なのかは分かりかねますが、私などではお役に立ちかねるかと」
「お願い、どれも駄目だったらその時は諦めるわ。
暫くの間でいいからうちに来て、あの子達を教育・・見て欲しいの。
失礼な言い方になってしまうけど、ここでのお給料よりもっと出させて貰うわ。
ご実家のことはカサンドラから聞いているから、そちらにも援助させていただくつもり」
スコット公爵夫人が提示した金額を聞いて、アメリアは言葉を失った。
(それだけあれば家の借金はかなり減って、弟の学費の手助けもできるわ。
いずれは妹達の持参金も準備出来るかも)
「もし、上手くいかなかった場合はどうなりますでしょうか?」
「ご実家への援助分は不問。あなたには毎月お支払いする金額の10年分を慰謝料としてお渡しします。
但し、最低でも一年は粘って欲しいの」
「お引き受けします」
(一年新しい職場に勤務すると考えれば、こんな破格の待遇は他にはあり得ないもの)
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