懺悔

バブみ道日丿宮組

お題:愛、それは償い 制限時間:15分

懺悔

 死のうと思い、ひたすら風邪薬を飲み続けてた。

 最初に起こったのは、腹痛。そして次に起きたのは頭痛。徐々に身体が侵食されてる感じがした。

 でも、それらは次第に収まって、次第に睡魔が襲ってくるようになった。

 いよいよ死ねるんだと思うと、ちょっぴり寂しくなった。

 後悔はないけれど、私を大事にしてくれた両親には申し訳なくなった。

 けど、もう決めたこと。

 20歳を迎えることはできない。捨てられた私にもう生きる意味なんてない。

 そうしてもうろう状態に陥ると、幻覚が見え始めた。

 それはかつて愛を語り合った恋人との日々。

 ……幸せだった頃の自分だ。

 私は必死に手をのばすが、そこには届かない。私じゃない私とばかり恋人は話してる。

 その娘じゃない。そうしたいのは私だ。邪魔だ、殺してやりたいと思った。そうすることもできない自分はただ不快で……どうしようもなくクズだった。

 次に見えたのは、他の娘と話す恋人の顔。私の知らない顔をしてた。私に向けてくれた笑顔は嘘だったのだ。

 学校で噂されたことはほんとうだった。恋人はヤリチン王子で誰彼構わず手を付ける、と。

 信じたくなかった。

 だって恋人といる時間はほんとに幸せで他のことが考えられなかった。

 高校が終わり、大学に通いはじめても私との関係は変わらなかったから、私こそが本命なのだと思ってた。

 でも……よくよく考えれば、それはありえなかった。

 同棲しようといっても拒否られ、身体を求めても拒否られ、夜の連絡も拒否られ、手をつなぐことでさえしてくれなかった。

 友だち以上恋人未満。

 そんな関係だった。

 私がもっと押し気味だったら良かったのか、別の恋人を選べば良かったのか。

 わからない。わかりたくもない。

 幻覚がストロボのように消えかかった。

 いよいよ、この世界から溢れる時間が近づいてきた。

 恋人が誰かのものになるのなら、いっそのこと私の手で殺してしまえばよかった。

 そうすれば、私の愛こそが真実であると世間が認識してくれたのに。

 憂鬱な気分も薄れてきた。


 さようなら。ごめんなさい。


 お別れの言葉が浮かぶと、私は見知らぬベッドで意識を取り戻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

懺悔 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る