第7話 二通目のラブレター・拓郎視点

 月曜日にラブレター問題が発覚し、今日は金曜日。


 風紀委員は手がかかりを得られていないようだった。

 凛子は悩んでいる様子を見せていた。気持ちいい。悪だくみを暴かれてきたが、今回こそは勝つことができるかもしれない。さあ、悩むに悩むがいい。モリアーティがホームズに勝利するという、歴史的瞬間になるかもしれない! 滝壺に落とすような真似はしないから安心しな。


 龍一がおれの席にやってきた。

「だんな~凄いですねぇ~」

「は?」

 うざっ。なんやこの絡み方。

「もう六限目だし、今週終わっちゃうじゃん。なのにラブレターのこと、気づかれてる気配ぜんぜんないじゃん!」

「みたいやなぁ」

 おれはにたりと笑った。うざっと思ったがいいこと言うじゃないか。

「自分たちのホームに招いたのに、何の成果も得られなかったんだね」

「おいおい、あんま言ったんなってぇ。おれの方が一枚上手やったってことよ」

 眉をキリっとさせ格好をつけ言った。

「情けないね! ちゃんと仕事してるのかな」

「風紀委員が無能なわけじゃない、おれが天才なだけや」

「おお~! これで何も起こらなければ逃げ切れるね」

「おい、何も起こらなければとか言うな! 起こりそうやんけ!」

 龍一は他人事だと思い気楽に笑っていた。不吉な連想をさせやがって……。


 六限目は社会だった。龍一と一緒にロッカーへ教科書などを取りに向かった。

 ロッカーにはすでに凛子がいた。凛子は神妙な顔をして何かの紙を開き読んでいた。

 またラブレターのことで追及されては堪ったものじゃない。必要なものを素早く取り出し、顔を背け通り過ぎようとした。


「ね、拓郎くん」


 凛子に呼び止められた。いやな予想が的中してしまった……。呼ばれたのはおれだけなので、龍一はそそくさと離れていった。散々貶していたくせに情けない……。

「なんや」

 おれは覚悟を決め振り返った。

「これなんだけどね」

 凛子は先ほど持っていた紙を掲げた。

「なにそれ?」

「ラブレターみたいなんだよね」

「えっ……」

 一瞬、思考が停止してしまった。

「しかも林先輩と同じ方法で入ってたんだ。密室で、ノートに挟まり……」

 おれはますます困惑した。


 ただラブレターをもらったわけじゃない。おれが考え出した方法でロッカーに入っていいたのだ。つまり大貴さんが出したことになる。だが大貴さんから何も聞いていない。

 どうして凛子にも出したのだ? 林先輩のことが好きではなかったのか?


 意味がわからない。


 凛子は鋭い眼差しでおれを眺めていた。そんな目で見られても、おれにもわからない――。

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