第7話 ゲーム好きの折檻・拓郎視点

 龍一がとぼとぼと歩き戻ってきた。


 魂を抜かれたかのように憔悴している。よほど怖い目に合ってきたのだな。でもこれからまた、こってりと絞られることになるんだぞ?

 学は怒り心頭だった。龍一を見ると鼻息を荒くした。ゲーム狂であるから、今回の失態は看過できないのだろう。


 教室から廊下に出ると、龍一は正座させられた。


「郷田先輩ですら椅子に座らせてくれたのに……」

「何か言ったか、龍一?」

「ううん……」

 龍一は顔を伏せ、首をゆるりと振った。


 学は腰に手を当て仁王立ちし、龍一を見下ろしていた。学の目は冷たく、それでいてどす黒い憎悪の塊のようなものがうねっていた。おれにはツノとキバも見える。大変だな、風紀委員にも怒られたばかりだというのに。


「お前は馬鹿か、いや馬鹿とは知っているが馬鹿か! こけてゲームが飛び出しただぁ? ちゃんとチャックを閉めておけよ馬鹿!」

「ごめん……」

「ごめんじゃねーんだよ!」

 じゃあどう言えばいいのだろうと思った。


「俺らにも疑いの目を向けられたらどうするんだ。没収されたらどうするんだよ! 馬鹿が!」

「でも僕、学たちのことを吐かなかったよ? 僕だけが持ってきたって言っといたから」

「当たり前だッッ!!」

 学は唾を飛ばした。口を拭いこちらに向くと、

「どう思う。風紀委員は怪しんでいると思うか?」

「怪しんでるやろなぁ。ただでさえ摘発者も多いし、ヨウハンは協力が楽しいゲームやからな」


「そらみろ、疑われてるってよ! ちくしょう!」

 学は龍一を睨みつけた。

「南にも大根の花とか言いやがるし、ほとほと呆れるぜ! これからはお前が見張りをしろよ! ばぁーかぁ!」


 龍一は涙目になっていた。


 ここまでだな。フォローを入れることにしよう。


「まあまあ、起こってしまったことは仕方ないやんか」

 ギロリと、今度はおれが睨みつけられた。

「拓郎が南にゲームをしないかと言ったのも、まずいと思うがなあ」

「そうそう学の言う通り、ヨウハンをしていることがばれちゃったからね」


 庇ってやったというのに、龍一が噛みついてきた。おれに怒りの矛先を向けようという算段らしい。


「うるさいな、別にええやんけ……」

「問題は、拓郎がぼろを出しているかどうかだな」

「出してない! とは思うけど……」

「勢いが弱まったな……」

 学は嘆息をついた。

「じゃあ、風紀委員にも目をつけられてるやろし、学校でするのは諦めるか?」


「そんなわけにいくかよ! 絶対やめないからな!」


 学は吠えた。どれだけゲームが好きなのか……。

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