第2話
「ところでマークって今どこにいるのかしら?ちょっと用事があるのだけれど」
そう言うと、父さんも母さんも黙り込んでしまった。あれ?聞いたらまずかったかな。そりゃそうか、私は婚約破棄された身だものね。何か復讐するとでも思われているのかも……あながち間違いではないけれど。
「マークに迷惑をかけようなんて思ってないわ。ちょっと確認したい事があって……」
慌てて付け足すと、父さんは少し驚いた顔をした。なんだ、復讐するなんて思われていないようだ。
「レイチェルがそんな事するなんて思っていないさ。ただ……マークは国外追放が決まったんだ。もうすぐこの国からいなくなる」
「うん?」
ピンと来ていない私に、父が重たい口を開いて説明し始めた。
「最近のことなんだが、騎士団の招集命令があってな。よくある森林の魔物討伐だったようなんだが、その……マークが仲間を見捨てて逃げようとしたんだ。そしてそれが原因で、森林付近の街が魔物に襲われかけたんだ」
「それでどうなったの?」
「マークは騎士団内で糾弾されたのだが、よく分からない言い訳をしていたそうだ。なんでも剣に力が宿らなくなったとか何とか……。結局、退団処分だけでなく国外追放もくらってしまったんだ。来週にも出ていくらしい」
森林付近の街には貴族が大勢住んでいる。国外追放は重い処分だが、避けられなかったのだろう。
魔石のお守りを失ったせいだとは思うけれど、まさか逃げ出すとはね……。その上貴族に目をつけられるなんて、運にも見放されてるじゃないの。
「お前が気にすることはない。もう忘れなさい」
黙り込んでしまった私を見て、父さんは優しく慰めるように言って部屋を出て行った。
父さんは私がマークに同情しているように見えたようね。……私はそんな優しい娘じゃないのよ。
マーク、本当にダサい男になったものだわ。自分が弱くなった原因にまだ気づいていないのかしら。まさか国外追放になるなんて思わなかったけど、想像以上に上手くいったようね。
魔石のお守りには、持った人の仕事が最大限上手くいくように祈りが込められていたのだ。それを失ったマークは剣術が弱くなり、レイチェルの家の商売は繁盛したという訳だ。もっと軽めの効力かと思っていたけれど、最高だわ!私の三ヶ月分の祈りってなかなか強いのね。
追放前に一応マークの顔を拝んでおこうかしらね。そうと決まれば準備しなくっちゃ。来週が楽しみだわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます