勇者召還された俺は魔王だった?
日影男
異世界
第1話 召喚
それは、唐突に、テンプレ通りに始まった。
ある日の放課後の学校の教室。
今度の文化祭でのクラスの出し物を決めるために、俺達は集まっていた。
俺は床に妙な圧を感じて下を見た。
教室の床一面に「例のアレ」が、淡く輝いていた。魔法陣にしか見えない「アレ」が。
クラスメイトの何人かが騒ぎ出し、逃げようと動き出した奴もいたが、間に合うはずもなく、、
教室全体が光に包まれた。
光が収まると、石造りの神殿の様な建物の中に居た。
あの時教室にいたクラスメイトは、全員居るようだ。
俺達は、体育館程の広さがある部屋の中央に固まっている。
床には例の魔法陣があり、台座状にちょっとだけ高くなっている。
そして、俺達以外にも人が居た。
金属の鎧を着こんだ騎士っぽいのが、大勢周りを囲んでいる。
他にも豪華な感じの服の奴や。魔法使い風の奴らもいくらか居るな。
などと、俺が周りを観察していると、あまりの異常現象に固まっていたクラスメイト達も再起動したらしい。
キョロキョロと周りを見たり、ザワザワ騒ぎだしたりしている。
だが、武装した騎士っぽいのに囲まれている異様な雰囲気に、大声で騒ぐ奴は今の所いない。
そんな妙な睨み合いの中、向こう側にいた豪華な服のおっさんが、ちょっと前に出て来てしゃべりだした。
周りを騎士が固めているところを見るに、お偉いさんだな。
「よく来た、勇者たちよ。我が王国の召還に答えてくれた事を感謝する。余は国王ナンデール12世である。
急な召喚ではあるが、現在、わが王国は我らの力だけでは打破出来ぬ事態にあるのだ」
出たよ、テンプレ。軽々しく召喚なんかしやがって、どんだけ他力本願なんだよ。
国王は、横に居た役人っぽい爺さんに目配せして元の位置に戻り、代わりに爺さんが前に出た。
どうやら、「王様のお言葉」は、もう終わりらしい。爺さんの方がしゃべりだした。
「ここからは、宰相である私から説明いたしましょう」
そんな感じで宰相の爺さんから状況説明が始まった。
魔王がどうとか、魔王国がこうとか、一方的に。
クラスメイト達?静かなもんだ。周りで騎士共が睨みを利かせてるからな。
うむ、これはダメなタイプの勇者召還ですね?
俺は爺さんの説明を聞き流しつつ、慌てず騒がず小声でつぶやいた。
「ステータスチェック」
ラノベで訓練された高校生の嗜みである。
よし、一発でアタリだ!目の前に半透明のウインドウが現れた。
ワードが合わなくて、すぐには見れない場合もあるからな。
奴らに見られないように、念のためクラスメイトの影に隠れてウインドウを出したが、他人には見えない仕様らしい。
クラスメイトの何人かも、同じ様な動きをしている模様。
さてと、テンプレ通りにチートの一つもあればいいが、、ん!?
名前:王間 大
職業:魔王
*身体能力*
体力量:B (99%)
魔力量:S (99%)
力:B
敏捷:B
器用さ:C
生命力:A
知力:C
魔導特性:S
んー?身体能力値は標準が分からないと、比較できんな?
スキルは、、と。
なんか多い?のか?
*スキル*
剣術
棍棒術
体術
高位全属性魔法
高位無属性魔法
高位探査魔法
高位収納魔法
高位飛行魔法
召還魔法
送還魔法
ん?送還魔法?自力で帰れるの?
俺が驚愕していると、なんか騒がしくなった。
「無理!絶対やだ!魔王と戦って倒すとか!もうやだ!帰して!元の世界に帰してよ!」
「そうだ!王国のことなんか、俺達には関係ないじゃん!帰してくれ!」
「ですからっ!魔王を倒せば帰れます!」
「倒す前に死んじゃうかもしれないじゃない!」
「そうならない為に、訓練と準備を我々が、、」
おう。いつの間にかそんなとこまで話が進んでた模様。
よし、ここで俺、登場!
「まあまあ、落ち着き給えよ。君達」
「ふざけんな!王間!落ち着いていられっか!バカ!」
「まじめな話をしてるのよ!」
「もうやだー!お家に帰してー!」
泣いたり、騒いだりするクラスメイト達を見回して、俺は言った。
「安心しろ。俺は送還魔法が使えるらしい!」(キリッ!)
「マ、、マジか!?」
「か、帰れるの!?」
「元の世界に帰してー!すぐに帰りたいー!」
詰め寄るクラスメイト達の後ろに、宰相の爺さんが見えた。
うん、顔色と表情が変わってるね。ヤバイ感じに。
今すぐ、送還魔法使えるか?いや、使えるか?じゃねえ、使うんだよ!
所謂、チートってやつなのか、なぜか魔法の使い方はなんとなく分かる。
この場所と、元の教室が繋がっている感覚がある。
この繋がりに沿って、みんなを戻せばいい。、、と感じる。
頭の中で送還魔法を選択し集中する。
血の気が引くような感覚がして、体から何かが抜けるのを感じた。
魔法の対象をクラスメイト達に合わせる。
床の魔法陣が輝き始めた。召喚された時のように全員が光に包まれる。
周りの騎士共が動くのが見えたが、もう遅い!
そして、クラスメイト達全員が光の中に消えた。
、、、俺を残して。
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