3章 エルフの国
1話 二人の無邪気な行動
学園長から馬車を借りて、エルフの国へ向かっている途中、ルビアが首を傾げながらミアに尋ねた。
「エルフの国ってどんな場所なの?」
「そうね。自然豊かなところだよ!」
するとルビアはそわそわした表情に変わりながら俺に言った。
「ノア聞いた! 自然豊かなんだって!!」
「あぁ。楽しみだな」
「ね!」
その時、ラッドやミーシェは少し複雑そうな表情をしていた。
(まあそうだよな)
ラードンの刑が決まったとは言え、まだ実行されてはいない。それをラッドとミーシェは見てから行きたかったのに決まっている。
(本当に悪いことをしたな......)
でも、いつ決まるかわからない刑を待っているほど俺たちも時間が有り余っているわけではない。学生と言う時間は有限である。刑を待って、結局数年かかると言われたら待っていた時間は無駄になってしまう。
俺はラッドとミーシェのことを少し見ると、二人はすぐに俺が見ていることを気づき、言った。
「楽しみですね」
「そうですね」
「あぁ。二人もそう言ってくれて助かるよ」
その後も他愛の無い話をして、二週間程経った。そして徐々にエルフの国へ近づいているんだなと実感する。
(ミアの言った通りだな)
魔法都市スクリーティアは、人工的に作られた場所が多く、その周辺も自然豊かな場所は少なかったが、ここ最近は森や平原が続いていて、自然豊かになっていくのを実感する。
その時、ミアが馬車を止めて言った。
「あ、あそこ見て」
指を刺されている方向を見ると、そこには小さな村が存在していた。
「村があるね」
「うん」
「あそこから、エルフの国になるんだ」
「え?」
まだ二週間程しか経ってすでについて驚いた。
(一ヶ月はかかると思っていたんだけど)
「まあまだ、国の端っこだけどね」
「あぁ~」
そう言うことね。ミアが暮らしていた国まではまだ時間が掛かるが、エルフが暮らしている街には着いたってことか。
「そうだ! あそこに寄って行かない?」
「え?」
なんでよる必要があるんだ? するとミアは上目遣いで言ってきた。
「まずみんなにどんな場所か見てほしいから......。ダメ?」
俺はそっぽを向きながら答えた。
「い、いや、ダメじゃないよ」
(かわいすぎだろ......)
本当に無邪気な行動をされると困る。それはルビアも一緒のことだが、二人とももっと自分が可愛いということを自覚してほしい。すると、ルビアが俺の足を踏んで来た。
「痛!」
「ノア、鼻伸ばしすぎ」
「いや......」
「ああいう仕草が好きなの?」
なぜか変な質問をされて驚く。
「い、いや......。まあ嫌いじゃないかな?」
ここで嘘をついたらミアに傷をつけてしまうかもしれないと思い、ごまかしつつ答えた。
「そう......。(私も今度やって見よ)」
「え? ちょっと声が小さくて聞こえなかった。もう一回言ってくれない?」
「何でもない!」
「そ、そうね。(よかった)」
なぜかルビアとミアは俺には聞こえない声で言ってきた。
(何を言ったんだろう?)
そう思いながらも、問いただすことはしないでエルフが暮らしている小さな村へ入って行った。
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