15話 謎な女性


 俺はすぐさま、ミアの近くによってカバーできる距離を取った。そして同様に、ラッドはミーシェの近くによっていた。俺たちとラッドたちも最低限、援護できる距離を保って戦闘を開始した。


 まずは俺が、モンスターの群れの頭上に黒風コクイを使って視界をふさぐ。そしてミアはモンスターが翻弄しているのを、一体ずつ風切エア・カッターを使って倒して行った。


 ラッドやミーシェは、兄妹だからなのか阿吽の呼吸でモンスターをことごとく倒していた。


(すごい......)


 はっきり言って俺はあそこまで連携が取れるわけじゃない。だからこそ心底すごいと思った。


 お互い大きな怪我することなくゴブリンなどのモンスターを倒して行った。だが、倒しても倒しても数が減らない。


(このままじゃ......)


 このまま戦っていても、いずれ体力が尽きて俺たちが負けるのは目に見えている。その証拠に、ミアはすでに息が上がっていた。だから大声をあげてみんなに言う。


「俺が最初に魔法を撃つ。その後はラッドとミーシェでモンスターを倒しながら一階層に戻るぞ! ミアはその援護! 俺は後方で追ってくる敵を倒して行くから!」


 全員アイコンタクトで了承してくれたのが分かったので、俺は影縫カゲヌイを使って数十体のモンスターを倒して一瞬道を切り開いた。


「行くぞ!」


 全員で一階層めがけて走り始めた。ラッドやミーシェがことごとくモンスターを倒してくれたおかげで、簡単に一階層付近まで到着することができた。だがその時、後ろからミノタウロスがもう突進をしてきた。


(なんでこんな場所に......)


 ミノタウロスは中流層に行かない限りいないはずなのになんで......。それに今のペースで走っても一階層につく前にミノタウロスと接敵する。ペースを上げたいが、ミアの体力がない。もし接敵でもしたら誰かが死ぬかもしれない。


 そう思ってしまったので、俺は後ろを向いてミノタウロスに影縫カゲヌイを使って一時的に時間を稼ぐ。


「後で追いつくから先に行って」

「え?」


 ミアが唖然としながら言った。


「いいから行けって!」


 本当なら影縫カゲヌイを使ったぐらいなら立ち止まらなくてもいいが、魔力がもうほとんどない俺にとって、魔力を走りながら練ることができなかった。


 ラッドはそれを察知したのか、ミアを連れて一階層に行ってくれた。


「後どれぐらい持つか......」


 今の魔力で、死体の影を操ることもできない。もしミノタウロスを倒せたとしてもその後モンスターがやってきて死ぬ未来しか見えなかった。


 案の定、ミノタウロスは影縫カゲヌイをすぐに振りほどき攻撃してきた。よけるのに一歩遅れてしまい、攻撃を食らってしまう。


「ウ......」


 その後も、ギリギリのところで攻撃を避けていたが、それも時間が経って行くにつれて徐々に攻撃を受けてしまう。


 そして、ミノタウロスの薙ぎ払いをもろに受けてしまい、岩に打ち付けられる。もう視界も朦朧として来ていた時、もう一度ミノタウロスが攻撃をしてきて死を覚悟した。


 そんな時、頭の中にルビアやミア、ラッドそしてなぜかオリバーなどの顔が浮かんできた。


(あぁ。こんなところで死にたくない)


 そう思った瞬間、ミノタウロスが影の中に飲み込まれていった。


(今まで使ったこともない影魔法......)


 一瞬安心になったのも束の間。すぐにゴブリンやコボルト、リッチなどがこちらに寄ってきた。その時、モンスターたちが一層されていった。


(は?)


 徐々に近づいてくる一人の女性。そして言われる。


「あなた影魔法を使っていたよね? もしかしてアリアブルって名前?」

「......」


 話す力もなく頷いた。そこから意識が徐々に遠のいていった。


「そっか。じゃあ・・・・・・」


 最後、この人がなんて言ったのかわからず気を失ってしまった。

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