11話 ダンジョン当日


そこから魔法の実技を何日間も受けてダンジョンに入る当日になった。クラスメイト全員が緊張しながらダンジョン前に立っていた。そして先生がやってきて話し始める。


「皆さん死なない程度に頑張ってください。一応は私たちも見回りに行きますのでそこまで緊張しなくて大丈夫ですよ」

「......」


 先生がこう言ったものの、みんな固まっていた。


(そりゃあそうでしょ)


 俺みたいに戦闘経験がある人がこの話を聞いたら優しいと思う。なんせダンジョンで見回りをしてくれる人がいる時点で安心できるって言えば安心できる。でも死と向き合ったことの無い人がいきなり死と向き合うとなると話は変わる。


 見回りといっても戦闘は自分で行わなくちゃいけない。見回りがあるとは言え、最初の戦闘がどれだけ怖いか。はっきり言ってここにいる人の中で平常心を保って居られている人は数人しかいない。ラードンもその一人だ。


 俺はルビアやミアの方を見ると、二人は他の人たちに比べて緊張していないように見えて驚く。


(ルビアは戦闘経験ないのによく普通でいられるな)


 すると二人が話しかけてくる。


「どうしたの?」

「ね。さっきからノア変だよ?」


(いやいや、二人が変なんだよ?)


 ミアは戦闘経験があるかもしれないからわからないが、ルビアがここまで平常心を保っている方が変だ。


「いや、二人とも緊張していないんだなって思ってさ」

「だってノアがいるじゃん!」

「そうね。ノアがいるから不安なんて無いわ」

「......」


 そこまで信用されていると逆に困るな。俺だってできることとできないことぐらいあるし。でも二人がここまで信用してくれているならそれに答えたい。


 最後に先生が軽く注意事項を話し終えて、続々とダンジョンに入って行った。そして俺たちの番になって、ダンジョンの中に入った。


(まあ人為的なダンジョンなら安心だよな?)


 ダンジョンとは大まかに二つ種類がある。一つ目は自然に発生するダンジョン。そしてもう一つは訓練用で作られた人為的なダンジョン。前者は冒険者たちが入り、ボスなどを倒して報酬などをもらうダンジョン。後者は人為的に作って、騎士になったばかりの人や俺たちみたいな学生の経験を積ませるダンジョン。


 自然に発生するダンジョンなら危険性が高いが、人為的に作られたダンジョンならある程度作った人などが制御しているはずだからそこまで危険性はないと思う。


「ダンジョンなんだよね!?」

「そうだね」


 なぜかルビアはワクワクした雰囲気を出して聞いてきて、そしてミアに話しかけていた。


「ミアもダンジョンは初めて?」

「うん。でもダンジョンじゃないけど、モンスターと戦ったことはあるよ」

「そ、そうなんだ......」


(やっぱりミアは戦ったことがあるのか......)


 なんとなく授業で魔法が使い慣れている感じがあったから、そうなんだとは思っていた。


 その後もルビアとミアが話していたので、俺はラッドとミーシェに簡単な戦闘方針を話してダンジョンを進み始めた。


 ダンジョン攻略を始めたら、先程の雰囲気とは一変して全員が気を引き締めて行くのが分かった。そして数分間歩いたところで、数体のゴブリンと接敵した。

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