10話 可能性
「まず、ラッドさんとミーシェ。お初にお目にかかります。ミア・マルティネスと申します」
「こちらこそお初にお目にかかります。ラッド・リックブルドと申します。隣が妹のミーシェ・リックブルドです」
「よろしくお願いいたします」
(やっぱり、元王族だからあまり緊張してなさそうだな)
そう言えば、俺以外みんな王族じゃね? ふとそう思った。なんか場違いな感じがしながら、三人の挨拶が終わったところで本題に入る。
「今日話したけど、ダンジョンでラードンに命を狙われる可能性が高い」
「それは私も?」
「いや、狙われるのはせいぜい俺やルビアまでだけど、ミアもそこにいる時点で狙われる可能性はあるってこと」
俺がそう言うと、ミアは納得したような顔をして言った。
「じゃあ別に大丈夫ね。最悪ノアが助けてくれるでしょ」
「まあ」
するとルビアが勢いよく立って言う。
「ノアは私を守ってくれるから、ミアはノアをあまり頼らない方がいいかも」
「ノアが私とルビアを守ってくれればいいじゃない! それにラッドさんやミーシェさんもいるし大丈夫じゃない?」
(それって俺の負担やばくね?)
ルビアにミアを守りつつ自分自身の身も守らなくちゃいけない。まあラッドやミーシェがいるから何とかなるとは思うけど。そう思っていたところで、ラッドが言う。
「でしたら俺かミーシェがミア様を守りましょうか?」
「それは最終手段だよ! 私はノアに守ってもらいたいの」
「ノアの負担が大きくならない?」
(ないすルビア!)
ルビアが俺の負担も考えてくれたことを言ってくれて少しホッとする。流石に王女二人の護衛は精神的にもきついしな。
「だったらルビアがラッドさんやミーシェさんに護衛をしてもらえばいいじゃない!」
「それはダメ! ノアは私の専属護衛なんだから!」
その後、数分間なぜか俺がどちらの護衛をするかで話が脱線してしまっていたため、しぶしぶ言う。
「二人とも護衛しますから大丈夫ですよ。自分の身が危険になったらラッドやミーシェに助けてもらうって感じにします」
すると二人は少し申し訳なさそうな顔をしながらも頷いた。相談も無しに行ってしまったため、ラッドとミーシェ方を向き、頭を下げた。二人は両手を横に振り、了承してくれた。
(よかった)
「じゃあ話を戻しますが、ラードンの件について話しましょうか」
今回仕掛けてくる確率が一番高いのは、ダンジョンにいる時である。だけどもっと早く仕掛けてくる可能性もある。そしてそれは、俺たちとよく行動しているミアにも関わってくる。
なんせ一緒にダンジョンに潜ることが決まっている以上、ミアに接触してくる可能性がある。そうじゃなくても力づくでミアをダンジョンに潜らせないように仕向けてくる可能性もある。
だからこそ今回、五人で集まって話す機会を設けたんだ。
「それでダンジョンではどんなことを想定しているの?」
「予想できるパターンは二つかな? 一つ目は、戦闘中に紛れてラードンが攻め入ってくる可能性。そしてもう一つは、ラードンがモンスターを俺たちに仕向けてくる可能性だ」
すると全員が首を横に傾げていた。
「まあ簡単に言えば、モンスターに絡めて殺しに来るってこと」
「それはなんで?」
「今回は授業の一環で受けるんだから、先生方が回れる範囲内でダンジョンを探索するはず。だったら死体を見つける時に、人の手が下されていたら犯人を捜さなくちゃいけない。そうなったら、ラードンは今までの計画が本末転倒になってしまうだろ?」
俺がそう言ったら、全員が納得した顔をした。そこでミアが尋ねてくる。
「先生が回れる範囲でダンジョンを潜るってことでしょ? だったら死ぬ可能性は少ないんじゃない?」
「あぁ。でも一つだけ簡単に人が死ぬケースはある」
「え? それって」
俺はみんなにその可能性を言った。すると全員顔を青ざめてしまった。
「最悪このパターンになったら、ルビアとミアだけでも逃げてもらうからね。これは決定事項だから」
俺は真剣な顔でそう言った。
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