7話 ルビアとミアと俺


 今、俺はクラスの中で一番目立っている。右となりにはルビア、左隣にはミアがいる状況だ。ルビアが隣にいる時点で目立っているのにミアまで俺の隣に座ってきたらより一層目立ってしまうのは目に見えていた。


「は~」


 ついついため息をついてしまった。はっきり言って目立ちたくない。目立つということは注目を集めているということ。そうなれば俺の情報を探る奴すら出てくるかもしれない。でもそんなことはお構いなしにルビアとミアが話しかけてくる。


「「ため息なんてついてどうしたの?」」


「少し疲れててさ」


(精神的に!)


 でもそんなこと言えない。そんなこと言ってしまったら二人とも自分を責めてしまうかもしれない。せっかく学園生活が始まったのに最初から気を使う関係に何てなりたくない。欲を言えば今後もそんな関係にはなりたくない。普通に友達として接していきたいし。


「ルビア? 少しはノアに休暇を与えたらどうなの?」


「そうね...。ノアごめんね。いつもいつも仕事をさせてしまって」


「いや、そういう意味じゃないから大丈夫だよ?」


 失敗した。仕事のしすぎととらえられたか...。別に仕事と言ってもルビアといてもあまり疲れたりしない。


「そう? なら良いけど。休みたくなったら言ってね?」


「あぁ」


 まあ結果オーライだな。休みが欲しいとは思っていなかったけど、休める確約が結果的にもらえたことだし。


「だったら私のところで働かない? ルビアのところより好待遇にするわよ?」


 ミアが少し笑いながら言ってきた。今の流れ的に場を和ませるために冗談で言ってくれているのが分かるけど、なぜかルビアの顔が険しくなっていた。


「ダメ! ノアは私のなんだから!」


「え? まあそうだね」


 ルビアに命を預けたんだからルビアのものと言われても納得はする。でもここで言うことか? 案の定クラスメイトのみんなが俺たちに目線を送っていた。そして周りに見られているのにルビアも気づき、みるみるうちに顔が赤くなっていった。


「え? あ、違うよ? ノアを物扱いしたとかじゃなくて...」


 手をばたばたさせながら俺に言ってくる。


「わかってるよ」


「ミアもそう言うこと言わないでよ! ノアはダメだよ?」


「わかってるわよ。冗談に決まってるじゃない。まあ少しは本気だったんだけど...」


 ん? 最後なんて言ったんだ? まあいいか。そこでルビアが話を変えるように話題を振った。


「ミアは護衛を連れてきたの?」


「えぇ。後で紹介するわね」


「うん!」


「助かる」


 今後ルビアとミアが一緒に居ることが増えるだろうし、護衛同士も顔合わせはしておきたいしミアがそう言ってくれて助かった。


 その時、教卓に青髪の中年男性がやってきた。


(やっとか)


「まずは皆さん。入学おめでとうございます。本日よりこのクラスの担任になるジャック・クェーサーです。学園に入学してきたということは何かしら学びたいことがあったのでしょう。それを4年間の間に身に付けるように頑張ってください。できる限り私たち教師もサポートします」


 俺が学びたいことか。できるなら上級魔法などを身に付けていきたいが、最優先はルビアの護衛だしできるかわからないな...。でも4年もあるし何とかなるか。


「それで本日入学してそうそうですが、皆さんには魔法の適性を受けていただきます」


 教師がそう言うと周りの生徒が騒ぎ出した。まあ学園に入ったってことは魔法を学ぶのが当たり前なことだし、クラスメイトも期待していたと思う。自分はどの魔法に適性があってどの魔法に適性がないのか。俺も最初はワクワクしていたしな。


「では皆さん。今から魔法室に向かっていただきます。案内しますね」


「「「はい」」」


 生徒全員が相づちしながら教室を後にした。

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