19話 振り返り


 勇者パーティと話した後、オーラ様やミア様、クララ様たちにルビアが別れの挨拶をする。



「皆様。今日までありがとうございました」


「今回はいろいろとありましたので、次のお茶会ではより良い時間にしましょ」


「そうですね。今回はノア様に助けられてばかりでしたので次会ったときはお礼の品でもお持ちしますね」


「あ、ありがとうございます」


 いきなりミア様に言われたため、少し口ごもる形で返答してしまった。


「ノアくん! 次会えるのは来月か再来月かな? 次はノアくんの国でお茶会があるって聞いてるから楽しみにしてるね!」


「はい。お待ちしております」


「ノア。君には本当に感謝しているし友人だと思っているから忠告するよ。道を踏み外すな。どんな状況であってもだ」


「...。わかった」


 リックさん、エリンさんと別れの挨拶が済んだのでローリライ王国に帰る馬車に乗ろうとした時、ミア様が


「ノア様。今回の件で勇者パーティは何かしらの罰があると思います。だからローリライ王国で何かしら勇者パーティの変化が起こると思いますけど、頑張ってください」


 勇者パーティの拠点がローリライ王国なので、会うのはしょうがない。そこでオリバーに言われたことを思い出す。


{どうなっても知らねーからな}


「ありがとうございます。ご忠告感謝します」


 するとなぜかミア様は


「後、私のぼ、母国に来ていただけると嬉しいです...」


 顔を赤くして言うから何かと思ったけどそんなことか。俺も行ってみたいしもちろん了承する。


「はい。ぜひ機会がありましたら寄らさせていただきます」


「絶対ですよ!」


「はい。その時はお世話になると思いますが、よろしくお願いします」


「うん! じゃあ次はローリライ王国に行くから楽しみにしてるね」


「はい。心よりお待ちしております」


 ミア様との会話も終わり、馬車に戻るとルビアが切れ気味に


「ねえ。ミアさんと何話していたの?」


「勇者パーティの件とお互いの国に行った時、よろしくお願いしますって話ですよ」


「ふーん」


 ルビアはそっぽを向く。


(俺、何かしたかな?)


 話しかけられる雰囲気でもなかったので俺も外を見る。


 本当にいろいろとあった。来る途中で妖精族エルフを助けたら、ルビアとお茶会をするミア様だったり。それに執事としての仕事に、護衛としての仕事。それを両立するのがどれだけ難しいのかわかった。俺が執事として未熟なところもリックさんやエリンさんは優しく教えてくれた。本当に二人にはいろいろな面で助けられた。


 ミア様の護衛として連れてきたのがオリバーたちであって驚いたけど、それ以上にオリバーと模擬戦を行うことになった方が驚いた。オリバーと戦ってみて、やっぱりこいつが勇者なんだなって実感させられた。勇者覇気とエクスカリバーの組み合わせ技なんて反則だろって何度思ったか。ギリギリのところで勝てたのはよかったけど、そんな時、ルビアたちに刺客が来たのは驚いた。


 なんで今なんだよって。あの戦いは俺一人じゃ無理だった。リックさんやオリバーたちが居なかったら誰かしらが死んでいたに違いない。


 あの戦いで一人殺してしまってからの数日間、本当にきつかった。起きている時でも寝ている時でも殺した奴の顔が思い浮かぶ。だからカウンセリングを受けさせてもらえて本当に助かった。


 そして今日、オリバーたちからパーティに戻って来いって言われたとき、嬉しかったがルビアが来てくれたことで現実が見えた。


(居場所はあるんだと)


 だから一段とルビアを悲しませるようなことはしたくないし、俺の命に代えても助けたいと再認識させられた。


「ルビア、本当にありがとな」


「え?」


 無意識に言葉が出てしまう。


「いや...」


 面と向かって言うのがこんなに恥ずかしかったなんて...。


「じゃあちゃんと私を護ってね? 私から離れないでね?」


「あぁ」


 よくわからないけどルビアの機嫌が直ってよかった。


------------------------------------------------------------------------------


 ローリライ王国に戻るとすぐ国王に報告しに行く。その途中で中年太りの宰相---ドーイ・プーイックに会う。なぜが驚きながら俺たちを見てきて


「ルビア様、ノアくん。おかえりなさい」


「ドーイただいま」


「ドーイ様。ただいま戻りました」


「本当に無事で何よりです」


(??)

 

 この時の俺はまだ何も知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る