5話 魔法とは


 ローリライ王国からエーディリ王国まで馬車に乗って1週間ほどかかるため、護衛役として一番気を張る時間である。でもそんなことお構いなしにルビアは暇そうに外を見ている。初日、2日目こそおとなしくしていたが、3日目に突入した時


「もう無理! つまらない!」


「そう言われましても...」


 周りをキョロキョロ見始めて今にも不満が爆発しそうだった。いつもなら本などを読んでおとなしいのに遠出になると無理そうだった。まあ予想はついていた。ルビアにとってローリライ王国を出るのが久々すぎるから。まあ俺もそうなんだけど...。


「あ! そうだ。ノア私に魔法を教えてよ!」


「魔法ですか?」


「うん! 私魔法を使ったことないの。結局スクリーティアに行ったら魔法を教わるんだしここで教わってもいいよね?」


 まあ基礎的なことならいいか...。索敵魔法---ラウンドを使い、周囲に警戒網を敷く。


「わかりました」


「やった! 何から教えてくれるの? やっぱり火? 水? それともノアの得意な魔法?」


「教えるのは魔法の雑学ですよ」


「え~。つまんない。もっと実践的なことを教えてよ」


 そう言われても馬車の中で魔法を使うわけにもいかないし...。


「ルビア様が積極的に学ばれましたら最終日ぐらいには魔法をお見せしますよ」


「本当!」


するとニコニコしながら教わる体勢に入る。


「ではまず基礎属性の魔法とは何があると思いますか?」


「火、水、土、風、光、闇かな?」


 ルビアがちゃんと答えられたことに驚く。普通戦闘に参加しない王族や貴族、一般市民は基礎属性をすべてしらないのが過半数である。だからこそちゃんと勉強してると感心する。


「はい。合っています。大抵の魔法はこの基礎属性の魔法を組み合わせることでできますが、基礎属性だけではできない魔法もあります。それが無属性ユニーク魔法です」


無属性ユニーク?」


 首を傾げながら尋ねられる。


「はい。無属性ユニークは言わばその人個人が持っている固有魔法です」


「それってその人しか使えないってこと?」


「半分正解で半分は不正解です。世界で1人しか使えない固有魔法もあれば、代々固有魔法を受け継がれる魔法もあります。なので私の家にもありますし、ローリライ家にもあると思います」


 そう。俺の家にもあるがそのような家は少ない。だからそうそう固有魔法を持っていると言ってはいけない。だけどおれはルビアに命を託した。だったら嘘偽りなく言うのが礼儀というものだろう。


「そうなんだ。じゃあノアは無属性ユニーク魔法を使えるの?」


「はい。ですが今はあるということだけ知っていただけたらいいと思います」


「うん。今度見せてくれる?」


「機会がありましたらお見せしますよ」


「わかった」


 俺の家に代々続く無属性ユニーク魔法は一人に対して使う魔法ではなく、複数人を相手にする魔法だ。だからそうそう見せるわけにはいかない。だけどなんで俺の家の無属性ユニーク魔法が複数人なのかわからない。暗殺一家なら1人に対する無属性ユニーク魔法であると思うはず。俺だってそう思っていた。でも無属性ユニーク魔法を教わった時、なんとなく暗殺者と近い魔法だなと思った。


「では魔法とはどうやって使えるようになると思いますか?」


「う~ん。頑張る?」


 ...。誰だって頑張るだろ! と心の中でツッコミを入れた。


「いくつか言われてはいますが、人族なら大気中に含まれている魔素を体内にある魔素と組み合わせることによって魔法が使えると言われています」


「へ~。って無視しないでよ! 頑張らなくてもできるの?」


 そこ掘り返すか!? せっかくスルーしたのに。


「頑張るのは当然としてです。ルビア様が言っているのは間違っていませんよ」


「でしょ!」


「はい...」


 そんな精神論を堂々と言われてもなんて答えていいかわからないだろ!


「それで他に言われていることとしては、例えば妖精族エルフ。この種族は精霊の力を借りて魔法を使えると言っています」


「精霊っているの?」


「そうですね。実際いたと本では書いてありますが、現代では逸話に近いです」


「そっか」


 精霊使いがいたと本に記載されていたのを見たことがある。だけど現代で精霊使いがいるわけではない。いや、俺が知らないだけかもしれないけど。


 そこから毎日のように魔法の基礎を教えていき、あっという間に最終日になった。


「今日が最終日だよ? ノア魔法を見せてよ」


「約束しましたのでお見せしますよ」


 ルビアは毎日真剣に話を聞いてくれた。だったら俺もそれに答えなくちゃいけない。


「やった!」


「ですが、その前にルビア様の適性属性を知りたくはありませんか?」


「え? わかるの!?」


 本当ならやるつもりなどなかったけど、ここまで頑張ってくれたんだからこれぐらい良いだろう。


「はい。これに唾液でも汗でも何でもいいのでつけてみてください」


 そして俺は1枚の紙をルビアに渡した。この紙に自分の体液を流すことによって基礎属性が分かる仕組みになっている。


 俺が教えた通りにルビアが唾液をつけると紙が光りだす。それにルビアは驚いて紙を床に落としてしまう。それでも紙は光り続けていた。


(ルビアは光が基礎属性なんだ...)

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