第13話 授与式


 会場に戻ると、先程の歓声がなくなっていた代わりに、俺たちに視線を送って来ていた。


(こんなにいたのか...)


 さっきまでは緊張していたのと勝てなかったという感情で会場全体を見渡すことができなかったため、ここまで観客がいることに驚く。そしてルビアや国王、王妃、父さん、トニーさんがそろうと


「今から授与式を始める」


 国王が会場にいる人に言う。すると観客たちが次々とざわつき始める。授与式などは王室などで行うことが主流のため、模擬戦会場で行われることに驚いているんだろう。


「先ほど対戦してもらった二人は前へ」


「「はい」」


 国王の前にトニーさんと一緒に立つ。


「聖騎士及び12騎士トニー・ブラウン。負けはしたがよい試合であった。明日よりローリライ王国の指南役を命ずる」


「ありがたき幸せ」

 

 知らなかった。トニーさん指南役になるんだ...。もしかして俺だけでなくてトニーさんも試験官ではなくて、普通に試験を受けたってことか? まあ今後トニーさんと関わることができそうだし、剣技など教えてもらおう。


「次にノア・アリアブル。先ほどの試合、見事であった。明日より我娘であるルビア・ローリライの護衛役を命ずる」


「ありがたき幸せ」


 トニーさんもこう言っていたしあってるよな? もし間違えたら観客である貴族たちや放映で見ている国民に悪い印象がついてしまう。


「そしてもう一つ。私の護衛---リアム・アリアブル。ここまでよく仕えてくれた。報酬としてアリアブル家は男爵家の爵位を与える」


「...」


 え? 今なんて言った? 俺の家が男爵家? 父さんそんなにすごい事していたのか!?


「謹んで拝命致します」


「授与式の終了を宣言する」


 国王がそう言うと貴族の方々が騒ぎ出す。


「アリアブル家って何?」


「わからん。でも男爵家になったってことはそれだけすごい事したんでしょう」


「さっき模擬戦をしていたノアって人もアリアブルって名字だけど親子なのか?」


「どうなんだろう? でもすごいことだな。最近貴族になった例がなかったから」


 俺を含め模擬戦会場にいた全員で会場を後にする。観客の声が聞こえなくなったところで父さんの横に立って


「父さん。そんなすごい事したの?」


「別に何もしてない。でも爵位をもらえたってことは護衛と言うのはそれだけ危険と隣合わせってことだ。ノアも明日からそうなるんだから覚悟しておけよ」


「うん」


「後一つ。これは護衛をしている先輩としてからだ。絶対に護衛している人物を死なせるな。それが大切な人と天秤にかけられた状況でもだ」


「わかった...」


 大切な人...。俺にとってそんな人は限りがある。でもわかっているつもりだ。ルビアは俺の命に代えても助ける。父さんのもとから離れるとすぐルビアが近寄ってきて


「明日から宜しくね。護衛さん!」


「宜しく。いや、よろしくお願いします。お姫様」


「うん!」


 こうして俺の護衛が始まった。

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