第5話 実家


 王室を出た流れで王宮を出ようとしたところで


「ノア! あの...。頑張ってね」


 俺は頭を下げる。


「うん。それと今日は本当にありがとうございました」


「え? 突然どうしたの? それに護衛に関しては私のわがままなんだからお礼を言われる筋合いないよ」


 ルビアはこう言うが、俺が心配してくれて言ってくれたのだと思う。その気持ちだけでも嬉しいのに、試験まで受けさせてもらえるようになって本当に感謝してもしきれない。それにもしあの時ルビアが来てくれなかったら立ち直るのにどれだけ時間がかかっていたことか...。


 だからルビアには面と向かってお礼を言いたかった。


「また明日な」


「うん!」


 ルビアと別れて王宮を出て家に向かう。


(今日はいろいろとあったな)


 朝、勇者パーティを追放されて絶望に満ち溢れている時ルビアに偶然会って職のチャンスまで与えてもらった。どれだけルビアに助けられて、信頼できる存在なのかを実感した日だった。


(どん底から絶頂までの気分を1日で味わったな)


 本当に濃い一日だった。精神的に疲れつつ家に入る。家に帰るのなんて何カ月ぶりかな? 勇者パーティにいた時は宿で一緒に泊まっていたから家に帰れなかった。


「ただいま」


「ノアおかえりなさい。家に帰ってくるなんて珍しいわね」


「うん。今日は父さんも帰ってくるって。ちょっと外で体動かして来る」


「そう! わかったわ」


 親父に言われた通り体を動かし始める。


(見られてるな)


 数分体を動かしていたがずっと俺に視線を送ってきているのがわかる。見られている人たちに殺気を放つとぞろぞろと出てきた。


「おかえりなさい。坊ちゃま。体はなまっていませんな」


「スミスか。驚かせないでくれ。1人手練れがいると思ったから殺気を出しちゃったよ」


 出てきたのは俺の家に仕える執事であるスミスを含め3名だった。スミスは大丈夫そうだが、他の2人の顔が青い。悪い事しちゃったな...。


「坊ちゃま。こちらにいるのが新入りのものです」


「あぁね」


 また新入りをとったのか...。職業が暗殺者であり、才能が少しでもある若者であれば仮契約として家の部下になることができる。まぁ毎回1ヶ月ほどたったらみんなやめていくんだけどね。


「お初にお目にかかります。シュリと言います。数日前よりアリアブル家でお世話になっております」


「お初にお目にかかります。ラッドと言います。同じく数日前よりお世話になっております」


「ノア・アリアブルです。訓練頑張ってね」


 二人に挨拶をして本題にはいる。


「それでスミスはなんでこんなことを?」


「はい。今後当主様になるお方の実力を少しでも知っていただきたくて。誠に申し訳ございません」


「いいって」


 俺の実力ね...。まあ普通の人よりかは強いと思うけど、親父に比べれば実力なんて無いに等しい。


「それで今から少しお時間がありましたらこの二人の稽古をしていただけませんか?」


「ん? 稽古? まあ親父が帰ってくる前までだったらいいよ」


「ありがとうございます」


 軽い運動になるだろうし、今後期待できる人材か見たいしな。それとは裏腹にシュリとラッドは震え始めていた。

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