第21話 『和平協議』 その11
イカ焼きおじさんが焼き鳥おじさんに、こう、言いました。
『きみを、これ以上巻き込むつもりはない。どうぞ、好きにしてほしい。』
『そうですか。では、このまま、ここで成り行きを見て良いかな?』
イカ焼きおじさんは、あきれたように答えました。
『せっかく、助け出したんだ。ほら、ここから見ろよ、火山の方の空が、真っ黒だ。火山灰が降ってきている。溶岩流は、もう洞窟の途中を海に向かって開いてるはずだから、まあ、ここまでは来ないと思うが、確信はないな。この噴火が、いつまで続くのかもわからない。地球に帰りたまえ。他の三人、三・・・は、たぶん、宇宙ごきが救出してるさ。』
『え、え、え! ちょとっまった。あんた、宇宙ゴキとつるんでたのか?』
『はははは。宇宙ゴキ全体ではない。今度の、新任の指令官だけさ。ぼくの目標は、ここのミタメクマ族を統合させて、より、民主的な政府を作らせることだ。今のここの村の体制は、どちらと言うと、全体主義的だがね。もっとも、それは宇宙ゴキがそうしただけだ。支配するのに都合が良かったからね。ここは、相手次第だがうまく、和解させて、ひとつの共同体にしたいんだ。ただ、こっちの副官たちは、戦いがしたいんだなあ。そこで、こうした形はとったがね。まあ、うまく行くかどうかは、まだ、わからない。』
『なおさら、観ていたいですな。』
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ぼくらの乗った、不可思議なエレベータは、本当に短時間で村の地下にまで達して、そこからは上昇して、宇宙ゴキの本部に現れたのです。
『さて、われわれは、再度交渉の場所を設けるが、もうきっと、あのレジスタンスたちは、ミタメクマの本部に到着しているころでしょう。出向いて行こうと思います。一緒に来てくだだい。お約束だからね。』
『はあ? なんで、急に、そういう話になるんですか?』
ぼくが、いささか、訳が判らなくなって、尋ねたのです。
『まあ、物事、根回しが大切だと言うわけですな。』
『はあ・・・・・』
新任の指令官は、実は、すでに、あのガスを防ぐ、防護服を着ていたらしいのですが、見た目は、ごく普通の軍服のようで、マスクも前部は透明な膜らしくて、うす暗い地下では、まったく気が付かなかったようなのです。
大した技術です。
でも、ここの占領守備隊には、配布されていなかったようです。
彼は、その同じ防護服を着た幹部を、小数率いて、ミタメクマたちの本部に向かったのです。
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『村の仲間から連絡で、宇宙ゴキの頭目が、ここに向かったようですぜ。くまら。』
『よーーーーおおし。戦闘準備。配置につけくま!』
『くまくま!』
レジスタンスの、屈強な副官は、そう指示をしたのです。
彼は、ここで、本当に仲間と、戦うつもりだったわけです。
イカ焼きおじさんは、その報告を聞いて、肯いたのです。
傍らには、焼き鳥おじさんが立っていました。
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『連中、まじめに戦争する気、らしいなあ。』
パパみためくまさんが、いささか苦々しく言いました。
『話を聞く気はないらしい。』
評議員たちは、会議室に閉じ込められておりました。
そこに、部屋の入口に、ふいにイカ焼おじさんが現れたのです。
『開けろ。話をしたい。』
そこは、リーダーですから、入口を見張っていたミタメクマ兵士は、敬礼して、ドアを開けたのです。
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