僕らの夏休み解放作戦

聖 天馬

序章 夏の始まり

 ミーンミーンミンミンミン……


 七月下旬人生において最も青春を謳歌できるであろう高校生活二回目の夏休みになぜ登校しなければならないのかと、炎堂明(えんどう あきら)は考えていた。

 これが部活だったらまだ良いむしろ部活は好きだ。何も考えずにただ走ればいいんだから、昔から走るのは好きだ、だから陸上部も好きだ。

 だが今日は部活じゃない。

 勉強は嫌いだ。なぜあんなにごちゃごちゃと考えなければいけないのか、なぜあんなに覚えることが多いのか、体を動かすようにわかりやすければいいのに。


 ミーンミーンミンミンミン……


 暑い。

 このくそ暑い中なぜ好きでもない勉強のために学校に来なければならないのか。

 いや理由はわかっている、夏休み前の試験で赤点をとったからだ。

 五教科のうち三つ赤点がある生徒は夏休みに補修があると言われていた、三つじゃなくて五つなんだから見逃してくれと懇願したがおまえみたいな前代未聞のバカは初めてだと言われてあっけなく却下された。


 ミーンミン……ジージージー……


 蒸し暑い。

 空には雨雲が広がっていていつ雨が降り出してもおかしくない。

 まるで自分の夏休みが灰色のものになると暗示されているようだ。

 嫌だ。補修なんかで貴重な高二の夏休みを潰されてたまるものか。

 とにかく遊びたい部活にも打ち込みたい、友達と遊びに出かけたり一晩中騒いだり、他にも夏祭り、花火、プール、海、水着のお姉さん、ひと夏の恋、人生初の彼女だだってつくりたい、そしてあわよくば一線越えたい……。


 ジージージー……


 決意を胸に明は校門を跨いだ。

 夏休み、それは青春の輝き。貴重な青春の一ページを失うわけにはいかない。


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