第2話 移動
集合場所へ行く最中も隣にいる少年は一人ではしゃいでいた。名前はバルグ・ロイ。年は見た目から僕よりも五~六ぐらい下のようにみえる。
みんなよりも先に着いた僕達は近くあったベンチに座り待機することにした。
しばらくすると徐々に集まってきて全員が集合した。イグナを抜かして……。
最後に来たゼバスが来ると彼は少年を連れてどっかへ行ってしまった。
荷物をたくさん背負って来ていたが、何が入っているかは分からなかった。
だが、僕が受けたときはゼバスのカバンからとんでもない物が出てきて、ひどい目に合った事だけは覚えている。
すると向こうから何事もなかったかのような様子で物陰から出てきた。
「いいぞ、合格だ。シグマよりも優秀かもしれないですね」
「やったぞ〜!」
少年は嬉しそうにはしゃぐと僕の方へ向かってきた。
「よろしくな! シグッち!」
いきなりあだ名?!と言わんばかりの馴れ馴れしさである
「シグッちよりも二つ年上だったからね〜。っま、よく年下に見られるのはいつものことだし。気にしてないからいいんだけどね」
衝撃の事実である。人を見た目で判断してはいけないというのはこの事を指すのだろうか? そんな中、キッドパーティーでは完全に祝賀ムードである。
そういう事でみんなで歓迎会をすることになった。
そこではバルグの特技や昔の思い出話などを聞いた。ゼバスがどんな試験をしたのか聞いてみると、どうやらガラクタを寄せ集めて作った立体型パズルを解かさせたらしい。僕の時は凶暴なサソリを出してきて全部倒せっていう試験だったような……。
何がシグマよりも優秀だよ! そもそも比べるジャンルが違うじゃないか!
しばらくバルグが席を外している間に僕はゼバスに問い詰めた。
「ちょっと、副隊長。なんか僕の時よりも優しくありません?」
すると、それを聞いたゼバスが微笑しながらガラクタを出てきた。
「じゃ、あなたもこのパズルやってみるか?」
そう言われてやってみたが、一体どうなっているのか全くわからなかった。
ゼバスに二回までヒントをもらったが、結局解けなかった。
「やっぱり、君はバルグに負けてるじゃないですか」
笑いながら言われると少し腹が立つが、何も言い返すことができない。
バルグの場合、二回で全て解けたらしい。
残念がっている所にちょうどバルグが慌ただしく帰ってきた。
「みんなさん、大変です! 通りがかったおじいさんから聞きました。トリエントスコープのパーツの場所」
一同が完全に沈黙をする。逆にそれに驚くバルグ。
「よし、行くか!」
隊長が仕方ないような声で声をかける。
「なんでみんな残念がるんですか!」
「だってー、歓迎会の最中だしー。 もうちょっと飲みたいしー」
既に酔っ払っているイグナがまだゆっくりしたいらしい。
「では、あなただけ休んでいればいいんじゃないですか?」
何故かイグナに対して風当たりが強いゼバスであるが、もうそろそろ仲直りして普通にして欲しい。
そして、そんな話を聞きもしないイグナは、既に寝ていた。
結局、本当にイグナだけ置いていって他のみんなはバルグの手に入れた情報を元に馬車で半日はかかるグルグスヴァ町へ行く。そこは独自の文化を持っていて、異郷の地としてボダグミア島では知られているらしい
町へ到着するとそこは辺り一面草原であり、その中に点々と家があり美しい景観が見える場所であった。目の前には大きな石碑が立っており、この町が持つ独特の文字で長文が刻まれていた。
バルグが教えてもらった情報によるとここの石碑の周辺を掘るようになっていて、それぞれ散らばって発掘作業を始める事にした。場所はくじ引きで決めることになったのだが、運が悪い事に僕は石碑の近くを掘ることになってしまった。少し気が引けるが、考え方を変えると一番当たりやすい場所だとも考えられる。これで僕が当てればきっと隊のみんなに尊敬されるような人になれるかもしれないし、もしかしたら世界で唯一発見した探検家として有名になるかもしれない。何の根拠もない自信が僕の心を奮い立たせた。
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