実力を隠して廃嫡された双子の片割れは海を渡り本来の実力『無敵の絶対防御≪アブソリュート・シールド≫』を駆使して自由な人生を謳歌する!

Nuim

第1部 実力を隠して廃嫡された双子の片割れは海を渡り自由な人生を謳歌する!

第1章 実力を隠して廃嫡された双子の片割れは新大陸で本気出す。

第1話 廃嫡

 ゼノファリア王国東部ファビュラス侯爵領。


「お兄! 嫌だ! 行っちゃヤダ! ミリアと遊んでよ! 今日はお兄がボール投げていいから! ミリアがキャッチする方でいいから!」


 腰まで伸ばした金色の髪とワンピースの裾を揺らしながら涙目で叫ぶミリアの腕にはミリアの顔と同じくらいの大きさのボールが抱えられている。


 ミリアが投げるボールを僕が拾ってくるという遊びがミリアは大好きだった。


「ミリアじゃ僕が投げたボールは受け止められないだろ。それに、ここは屋敷の中だけど、今日からお兄と呼んでいいのはジェドだけだよ。そうしないと……」


 もしジェドが双子だと世間にバレてしまえばファビュラス侯爵家は終わりだ。

 王家を謀ったとして罰せられてお家取り潰しにされてしまう可能性だってある。

 とは、7歳のミリアには言ってもわかって貰えないよなぁ。


「カシム兄さん。本当に……僕なんかでいいんだろうか」


 僕とそっくりな顔をした赤い髪のジェドが自信なさげに目を泳がせている。


「何言ってるんだよジェド。剣の腕も魔法の腕も誰が見たってファビュラス侯爵家の跡取りに相応しいものさ。そうでしょう、父さん。母さん」


「ああ――そうだな。ジェドの腕前なら貴族としての務めは十分に果たせる。気質は戦闘よりも頭を使う方が得意そうだが……領地を持つ貴族として全く問題ない。胸を張りなさい、ジェド」


「そうよ、ジェドはとってもいい子よ。お勉強があんなに得意なのに、騎士にだってなれるくらいに強いんですもの。お母さんはとっても鼻が高いわ。けどね、それはカシムだって――」


 僕の言葉に続いて父さんと母さんがジェドを励ます。

 その流れで母さんは僕のことを褒めようとするけれど……。


「僕はジェドには敵わないよ。の方だってのは自分が一番よく分かっているからね。ま、それでもこうして健康な体で旅に出られるまで育ててくれて、僕を生んでくれて、これまで守ってくれて……感謝しているよ」


「カシム……ああ、カシムっ!」


 涙を流しながら母さんが僕の体を強く抱き寄せる。

 この温もりと触れ合えるのもこれが最後か。


 ゼノファリア王国の貴族の間では「双子」というのは忌み嫌われている。

 理由としては、本来ひとりの人間に宿るべき能力がふたりに別れてしまったり、妙に偏ってしまったりして普通の子より劣ると考えられているからだ。


 魔物や敵国から領土を守るために戦うことが義務づけられている貴族にとって、双子というのはそれだけで「無能」として蔑まれる。


 それがいつしか、「双子が産まれたら殺す」という慣習となってしまった訳だ。


 そんな僕とジェドのことをひとりの息子として育てることを決意した両親はとてつもない苦労をしてきたことだろう。


「母さん、そろそろ行くよ」


「いやよ! 離さないわよ!」


「ミリアも!」


 がっしりと体を抱きしめている母さんから離れようとしたらもっと強く抱きしめられてしまい、挙句妹のミリアまで抱き着いてきてしまう。


「……ちょっと、父さん、ジェド、見てないで助けてよ」


 ジェドは相変わらず困ったような顔をして、父さんは肩を竦めて苦笑していた。


 そうして、なんとも騒がしい別れの時間を過ごし、僕はファビュラス侯爵家で過ごした12年の日々に別れを告げた。

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