Prologue


 天使は微笑みを向ける。


 まばらな人波の街中、寒そうに肩をすくめて歩く彼女を見つけて。



 “これから始まるよ”



 風に乗せて歌うけれど、彼女は気づかず通り過ぎていく。


 また別の天使が笑う。



 “こっちも準備OKみたい”



 こちらの天使が見ているのは、反対側を歩くコートを着た彼。


 すれ違う二人、微笑み見つめる天使達。


 また、びゅうっと風が吹く。



 この街を見守る天使達はいたずら好き。


 髪を切った彼女と新しい日々のため服を買い揃えた彼に……それは始まりのサインと気づかせたくて風を吹かせている。



 “まだ早い”



 神様は言います。



 “待つのだ、時が満ちるまで”



 暖かい風が吹いて街が陽の光に包まれる頃……二人は出逢い、物語が始まろうとしている。

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