第12話 魔法の練習?
「……魔法は使えるようになったから、今からは冒険者として生きていくうえで使いやすい魔法を教える」
ようやく自分一人で魔法を使えるようになって浮かれていると、少し離れてこちらを伺っていたアリスが近付いてきた。
「あれ? 魔法って、イメージさえあれば何でも出来る、というか、型なんて無いって書いてあったと思うんですけど」
アリスの言葉に、アリスから渡されて読んだ、魔法についての本の中には、確かに魔力とイメージさえ出来れば、何でも出来ると書いてあったことを、愛斗は覚えていた。
「……その通り、間違ってはいない。……けれど、誰でもすぐに有効なイメージを作れるわけではないから、魔法を専門にして研究しているのでなければ、特に冒険者や兵士にとっては、いくつか使いやすい魔法の型を覚えておけば、いきなりイメージを作ろうと慌てることなく魔法を使える。……すぐに自分がしたいことをイメージ出来て、実行するだけの器用さがあればいいけど、君はそうは見えないから」
確かに、アリスの言うことは理に適っていて愛斗も納得することが出来た。
愛斗が納得したのを感じたのか、それとも気にせず続けようとしているだけなのかは分からないが、アリスは早速自分の周りに様々な魔法を展開した。
「……魔法は、基本的に何でも出来るとは言っても、魔法を使い始めたばかりだと何が出来るのかがはっきりと分からないと思う。……基本的に、冒険者とか戦いを生業にするものにとって使いやすいのは、ボール型、アロー型、トラップ型の魔法が、相手にもよるけれど効果的に使える魔法」
そこまで一度話すと、アリスは一度周りに展開していた魔法を全て消し、一つずつ解説をし始めた。
「……ボール型は、そのままぶつければ打撃としても使えるし、それなりに面積も大きいから当たりやすい。……その代わり、あんまり早くは動かせないし、当たっても相手が硬かったりすると表面に少しぶつける程度であまり殺傷力が無い」
「……アロー型は、ボール型を矢の形に整えたもので、ボール型よりも細いから早く動くし、遠くまで飛ばしやすい。……細いから貫通力もあるけど、小さいから当てるのが難しい」
「……トラップ型は、時間で発動するものだったり条件を満たした場合に発動するものだったりと種類が多いけれど、直接攻撃用の魔法というよりは、足止めだったり、妨害としてよく使われる魔法がとりあえずトラップ型と呼ばれる。……例えば、相手の足元を凍らせて滑らせたり、足元の地面から岩のとげを突き出して足止めしたり。……使いこなせるととても便利だけれど、自分も相手も動いてる中で正確に発動させないと一緒に行動している仲間の邪魔になったり、魔力の無駄遣いになったりで使いこなせるようになるまでかなりの訓練が必要」
「……直接相手に攻撃するような魔法は大体この三種類。……他に役に立つ魔法は、治癒魔法や強化魔法、阻害魔法とか。……治癒魔法は自他の傷を癒したり、治すため、強化魔法は力や速さを魔力で強化する魔法、阻害魔法は強化魔法の逆で敵の身体を魔力で阻害して弱くするための魔法。……魔法の種類としては大体こんな感じだけど、分かった?」
「分かりました!」
「……うん、ちゃんと話が聞けていい子。……次は、どんな属性があるのか教える」
静かにアリスの話を聞いていた愛斗を、小さい子を褒めるようにしながらも魔法の種類について話を終えたアリスは、属性について話すために今度は全てボール型のモノであるが、様々なボール型の魔法を展開した。
「……魔法の属性はいくらでもあって、まだ私たちには分かってないのも含めるとどれだけあるのかは分からないけれど、現在分かっていて、実用可能だと思われているのは今ここに私が出している属性。……左から順に、火、水、風、氷、土、光、闇の属性。……出来ることは大まかにはそれぞれ、燃やす、濡らす、吹き飛ばす、凍らす、作る、光る、消す。……治癒魔法や強化、阻害魔法もそれぞれの属性でそれぞれの効果が出たりするから、試してみるといい」
まくし立てるように告げられた説明を聞き終わると、アリスはすぐに展開していた魔法を全て消してしまった。
もう少し見ていたかったと愛斗が少し不満そうにしていたのが伝わったのか、アリスは愛斗に向けて口を開いた。
「……ボール型の簡単な魔法とは言っても、たくさんの属性を、同時に、維持したままでいるのは魔力も多く使うし、疲れるからあまり長時間は無理」
「……最後、威力について。……基本的に冒険者として生きる分にはあまり必要は無いけれど、一応魔法の威力は十段階で分けられてる。……これは、測定の時に魔門を測定したと思うけれど、その数字に相当する魔門での最高威力がその魔法の威力として決められてる。……私なら、六段階までの威力で魔法が使える。……理論上は君は私よりも遥かに強い魔法が使えるはずだけど、魔力が多くないから、緊急事態でない限りは使わない方がいい」
「……それじゃあ、教えることはここまで。……本当は少し練習もしたかったけれど、もう遅い時間になって来たし、今日はここまで。……ご飯食べて、明日からちゃんと訓練する」
アリスの言葉でようやく愛斗も既に日が沈み始めているのに気が付くと、荷物を片付け始めた。
そして、アリスと一緒に広場から出て帰路につくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます