白い洋館
ガレージの中で軽自動車から降りると、
「じゃあ、私はここまでだから」
と、
「あなたの携帯電話をお預かりします」
と言って自分の携帯電話を取り上げられた。しかしそれ以外は特に何もなく、ガレージから直接、館に入れた。
「う…わぁ……」
もう、溜息しか出なかった。外から見た時以上にそこは、まるでテーマパークか何かのように非現実的な<おとぎの国>だった。
足首まで埋まるカーペット。生まれて初めて見る豪華なシャンデリア。本当に火が燃えている大きな暖炉。何もかもが初めて触れるものばかりだった。
「
これから夕食が出るということでテーブルに着くと、メイドの女性がここで暮らす上での注意事項を告げてきた。
「この屋敷の敷地内では自由に行動していただいて構いませんが、外出は原則としてできません。また、他の方と連絡を取ることも許可できません。もしそれを破られますと、こことは別の場所に即時移っていただくことになりますが、そちらはここよりもかなり古い施設になりますので、正直申し上げて刑務所と大差ない環境になると思います」
「お…おう……」
一部、そういう感じの気になる部分はあったが、他は、食事も何もかも至れり尽くせりだということなので、ここを追い出されるようなことはしようとも思わなかった。
そして、その白い洋館に着いてからの
朝、目を覚ませば「おはようございます」とメイドの女性が優しく声を掛けてくれた。家族の誰も口をきこうともしない自分の家とは大違いだった。
朝食は質素だったがちゃんとあたたかく、人の手が入ったものだった。バランス栄養食かヨーグルトかトーストを自分で焼いて食べていけというようないい加減なものじゃなかった。
朝食が終われば勉強をさせられた。最初は「げーっ!」と思ったが、「分からないところはどこか?」と訊かれ、「どこが分からないか分からない」と正直に応えると、丁寧に分数のところから教えてくれた。すると、学校ではさっぱり分からなかったのに、『あ、そういうことか!』と閃くように頭に入ってきた。
そうなると不思議なもので、今まで分からなかったところが次々と分かるようになり、それが面白かった。
勉強を面白いと感じるなど、生まれて初めての経験なのだった。
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