第3話 騙し騙され

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 それから私たちの騙し合いの日々が始まった。

 あるときは部室である視聴覚室で。


長窪ながくぼ、外見てみろ! ヤバいぞ! UFOだ!」


 興奮した様子で窓の外を指差す郡山先輩。

 騙し合いと言えばもはや定番のそれだが、無視するのも可哀想なのでわざと引っ掛かることにした。


 でも、願い事の件がある以上ただでという訳にはいかない。

 私は先輩が座っていた椅子にある物を仕込むことにした。


「えっ、どこですか?」


 窓際に寄り、先輩の指の先を見る。


「あっ、よく見たら飛行機だったわ」


「むっ、また騙したんですか?」


「騙される方が悪いんだよ。俺たちはそういう勝負をしてるんだからさ」


 楽しそうに笑う先輩が何の疑いもなく、元いた席に座った。

 そこで私が先輩を驚かすべく大きな声を出す。


「あっ、先輩! さっきそこの席に大きな蜘蛛が死んでましたよ!」


「うっ、マジか! 最悪。そういうことは座る前に教えてくれよ」


 私の渾身の演技にすっかり騙されている郡山先輩。

 ばっと立ち上がり、お尻を手で払う。

 すると、おもちゃの蜘蛛が地面に落ちた。


「うお!?」


 郡山先輩はそれを見て再び驚きの声を上げた。

 私はその様子がおかしくておかしくて、お腹を抱えて笑っていた。


「やりやがったな長窪。悔しいけど今のは完璧に引っ掛かったわ。っておい、そんなに笑うなって」


 いつまでも笑っていた私のことが気に入らなかったのか、郡山先輩が私の肩を指先で優しくつついてきた。


 あー、楽しい。もう毎日が楽しくて楽しくて仕方がない。

 こんな日がいつまでも続けばいいのにな。


 いつからか私はそんなことを思うようになっていた。

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