高嶺の花園ちゃんがこんな僕に恋をした

七瀬 橙

プロローグ

 その朝、目覚めた僕の頭の中がスッキリと澄んでいて驚くほどに清々しかったこととか。


 昨夜見たはずの夢ですら洗い流されたように、余計な思考は一切なかったこととか。


 それを不思議に思う気持ちごとどこかに置き忘れてしまったようだと、僕が半ば他人事のように感じていたこととか。


 そんな些細ささいな違和感なんて、直後の出来事によってすべてこの梅雨空の彼方へとぶん投げられる勢いで。



 頭がズキズキと痛むことに気づく。


 どこかにぶつけたという覚えはなかったが、手をやってみると後頭部が腫れていた。


「おはよう。昨夜はどうしたの? もう体調は良くなったの?」


 母が朝食を用意しながら言った。続いて、昨夜は夕食も食べずに寝てしまったと母に言われたが、僕は一向に思い出せなかった。


 違和感の正体を明確にする前に、僕は玄関のドアを開ける。


 そして、僕は目の前に広がる衝撃的な光景に硬直することになる。

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