日本の伝統色辞典
柊ふわり
赤系
第1話 桜色《さくらいろ》
桜色は、薄い紫みのピンクです。
現在は桜といえば染井吉野ですが、古代は山に咲く、山桜でした。
染め方も現代では桜の木で染めますが、古代は紅花や蘇芳で淡く染めています。紅染では、もっとも淡い色です。忠実に古代の色を出す染織家さんは、この方法で染色しています。
桜色の名前は、江戸時代の中期頃に広く伝わったのではないかと言われています。平安時代にも桜の名前は文学に出ていますが、桜の襲(表-白、裏-紅花や蘇芳)などで表されることが多かったようです。山桜を見るとわかるのですが、若葉が赤く、花弁は白く、遠くから見るとピンクに見えることから、そのように表されたのではないかなと思っています。実際、桜の襲は光が透過すると、ピンク色に見えるようですよ。
ちなみに織色では、縦糸を紅、横糸を白で織ったもので表されるようです。
古代は花といえば梅の時期もありましたが、平安時代、京都に都がうつされた頃から花といえば桜になりました。桓武天皇が紫宸殿の前庭の梅の木から、桜へ植え替えたことがきっかけのようです。
日本の国花である桜の語源は、コノハナノサクヤヒメからきています。コノハナが桜を意味していて、「サクヤ」の音が桜となりました。
色名に桜がつくものは他にもあり、薄桜、灰桜、桜鼠、里桜などがあります。
薄桜は、別名を薄花桜とも言います。紅染でもっとも薄いとされる桜色より、さらに薄い色です。
灰桜は、灰色がかった桜色です。くすみがかっていますが、濁りはない色。桜鼠より、明るい色です。江戸時代の後期に、百鼠とよばれるほど鼠色が流行しました。灰桜は、そのうちのひとつです。
桜鼠は、「さくらねず」とも、「さくらねずみ」とも読みます。淡い紅色が鼠がからせた、くすんだ桜色。江戸時代の中期頃に染色が行われるようになり、明治時代に流行しました。
鼠がついた色は、他に梅鼠や藤鼠があります。
里桜は、ごく淡い紅色で、薄いベージュのように落ち着いた色です。京都の色で、春爛漫の春を象徴しているそう。
注意なのは、英名のチェリーという色名。こちらはサクランボの赤い実の色のことを指します。日本のように、花の色のことではない色なので、勘違いしやすい色でもあります。
もし英語の色名にあてはめるとすれば、ペール・ピンクでしょうか。ベリー・ペール・オーキッド・ピンクを当てはめる方もいます。蘭の花のような赤味のごく薄い色です。桜鼠は、シルバー・ピンク。明るい灰味のピンクです。
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