同じ空の下で

@serikim

第1話

「今日の授業はこれで終わります」

「ありがとうございました」


私は、小原花。日本語教師。ギリギリ30代の39歳。独身。

行き遅れと言われても負けずに生きている。

毎日楽しく。笑顔で。


「カッコ良すぎる〜!先輩、カッコいいと思いません?!」

雑誌を見せてくるこの子は可愛い可愛い後輩教師のマナ。韓国大好きなイマドキ女子だ。「パク…ソンジュン?えーと…こないだと違う人?」

「え?!全然違うじゃないですかー!!こないだのはパクシジョンですよ〜なんでわかんないんですかー?」

「そっかそっか。カッコいい、カッコいい!」

「ほんとに全然興味ないんですねー先輩」

彼女のこんなところは昔の私のようだ。私も大好きだったな、韓国ドラマ、韓国映画

俳優、Kポップも。


「お先に失礼しまーす」

「あ、小原先生!ちょっと寄ってくれる?」

「はい」

校長がお呼びだ。またいつもの居酒屋へのお誘いかしら。二日連続は勘弁してほしい。


「失礼します」

「帰りがけにゴメンね!まぁ、座ってよ」

ドアの前に人がいないか、よく確認してドアをしめる校長。

「小原先生、韓国に興味ないよね?」

「?? ないですけど…」

「でも韓国語はいけると」

「あ、えぇ、まぁ、基本会話くらいは」

「ちょっと韓国である仕事。お願いしたいんだ、極秘でね」

「極秘、ですか?」

校長が言うには、知り合いが韓国の超VIPの日本語教師を探しているらしい。期間は1年間。家付き、給料は今の倍。条件は韓国に興味がないこと。生徒については行ったらわかると。情報はそれだけ。怖いんですけど。


「ちょっと…考えてもいいですか?」

「うん、早めに返事頼むよ」

「はい」


いつもの電車に乗り、いつものスーパーに寄って、いつもの道を歩いて、いつもの家に帰り、いつものビールを開ける。


これからもずっと、この“いつも”は続くのだろうか。それはそれで幸せだ。仕事もある。友達もいる。自由。何不自由ない毎日。平凡な毎日。


でも…「このままでいいの?」時折、どこからともなく、もう1人の自分が話しかけてくる。


「韓国、かぁ…」



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