第44話 商談の挨拶に俺と愛央が立ち会う!?

年末も近くなった11月16日、誕生日を3日後に控えた俺らは朝から内線で呼び出された。まぁ今日月曜日とは言え14日土曜日の文化祭振替で休みだからいいんだけどさ、いくらなんでも朝5時に内線かけなくてもいいだろうとは思っていたのである。


たく「はい匠。おはようさん」

昭仁「おはよう。今起きたばかりかい?」

たく「3時に起きて赤ちゃんとチア部のご飯作ってたんですけど」

昭仁「どうもすんずれいしました。あおっち起きてる?」

たく「いやまだ寝てんだけとあじしたよ」

昭仁「しょーだん、入りました」

たく「お呼び出しですか。で、何時に行けば」

昭仁「午前9時30分6階第2会議室。10時に来るから」

たく「あい。愛央と二人で行きますよ。その代わり昼飯マックでよろしゅ」

昭仁「代償だから・・・うんわかったよ。今回は二人だけね。わかった?」

たく「あい。またあとで」


俺は電話を切って飯を作り終え編集をしていた。3時間後の午前8時、愛央が起きていつものようにぎゅーってしてきた。


あお「たっくーん」

たく「はよ」

あお「ぎゅーっ♡なんかたっくん不安な顔してるよ?どうしたの?」

たく「会議室呼び出し」

あお「それってもしかして・・・」

たく「今日商談。今回は俺らだけって」

あお「うん・・・わかった」

たく「おいばか。まさか愛央、何する気だ」

あお「たっくんに・・・キスっ♡」

たく「何してんの朝から」

あい「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

たく「あらこのタイミングで起きちまったか。とりあえず泣きやませないと」

あお「たっくん!フレ!フレ!ふぁいとっ!」

たく「早っ。まぁでも今そんなこと言ってる暇はない。あいちゃーん、ごはんだよー」

あい「ひっく・・・きゅぴ?あい!」

たく「ばぁ!ほーれ泣き止んだ。さ、食べるよ」

あい「あい!」

たく「あーん」

あい「あーいっ!あむあむあむ・・・ごっくん・・・おいちー!」

たく「おー、食べられるか。よかった」

あい「あい!たったーもあーんきゅぴ!」

たく「えっ!?俺?」

あお「あーんっ♡」

たく「ちょ・・・まぁいい。あーむっと。え、美味っ」

あお「ねぇたっくん。今8時だけど大丈夫なの?」

たく「やっべ!9時半に呼び出しかかってんだ!急いで準備しないと・・・」

あい「たったー、あおねーねー」

たく「あにどした」

あい「あいたんひとり?」

たく「いやどっか出かけるわけじゃねぇけど」

あお「お姉ちゃんたち、会社の商談挨拶行くから」

あい「ひっく・・・きゅぴ・・・」

あお「たっくんー、あとで愛央がチアやるからダメな男、またやってくれる?」

たく「はぁ・・・まぁそうだよな。挨拶終わったらやるか」

あお「ありがとう!」

あい「たったー、じかんー!」

たく「やばっ。着替えよ」


俺はそう言って部屋に行き、かっちりしたスーツで部屋から出ると、愛央がポンポンを持って花道を作っていた。あいちゃんは俺の姿を見た瞬間抱きついてきたのだった。


あお「たっくんかっこいい〜!」

あい「きゅぴ〜!」

たく「どこが!?」

あお「フレっフレっ!がんばろっ!」

あい「あーいー!」

たく「愛央、チアやるのはいいけど着替えたら?」

あい「チュールスカートとジャケット着ればオフィスカジュアルっぽいコーデになるよね?」

たく「あじゃあそれでいいべ」


俺らはそういう会話をしていると、内線がかかってきた。


たく「はい匠」

昭仁「もうすぐ来るって。6階来れる?」

たく「駆け上がるわ。あと10分くらい?」

昭仁「いや20分はかかるって。あおっちのチアをやる暇はあるかも」

たく「じゃあブツは持ってったほうがいい?」

昭仁「成功するにはあおっちの応援があったほうがいいかも」

あお「パパの嘘つきっ。ほんとは愛央に応援されたいんでしょ?」

昭仁「バ、バレた」

あお「ふふっ。大丈夫っ。ちゃんと応援してあげるから!」

たく「んじゃ今から行くよ」

昭仁「あいー」


そうやって電話を切るとあいちゃんにぎゅーをして6階第2会議室に行った。愛央はチアのポンポンを左手に持ち、ベージュのブラウスとチュールスカートを着て会議室に来た。


昭仁「お、きたきた」

あお「パパっ、フレフレがんばれっ!」

たく「応援すんの早っ」

昭仁「ありがとうね。じゃあ急いで隠してジャケット着て」

たく「愛央そいや名刺どうした?」

あお「あっ・・・忘れてきちゃった」

たく「だーと思ってほれ持ってきたよ」

あお「ありがとっ♪だいすきっ♡」

たく「もうすぐ来るはずだよね」

昭仁「うん」

あい「うわぁぁぁぁぁん!!!」

たく「下であいちゃん泣いてる?」

あお「多分」

たく「まさか携帯電池切れたか!?まだ時間あるよね!?」

昭仁「うん。行ける?」

たく「行く」

あお「じゃあ!愛央応援してあげる!」

あい「たったー!!!うわぁぁぁぁん!!!」

たく「逆に来ちゃった・・どうしたの?」

あい「けがしちゃった・・・」

たく「痛いよなぁ。よし、治してあげる。愛央、頼んだよ!」

あお「うん!すぅ・・・フレーっ♪フレーっ♪たーくーみーんっ!フレっフレったくみんっ!フレっフレったくみんっ!Foooooo〜!!!」

あい「きゅぴ・・・」

たく「んっ・・・ちっ・・・ふぅ・・・よーし、痛くないよ〜」

あい「ありがとう!」

あお「良かったぁ!」

たく「ばぁ!」

あい「きゅぴぴぴぴ!」

たく「じゃああいちゃーん、お部屋戻ってね」

あい「あい!」

昭仁「プロ技じゃん」

たく「愛央のおかげ。あんがと」

あお「たっくんには勝てないから・・・むぅ」

秘書「いらっしゃいましたよ」

昭仁「ありがとう」


そして俺らは入学式の5億倍緊張していた。商談ともなると会社の命運がかかるものもあるから。


畑本「はじめまして。琴乃さん」

昭仁「こちらこそはじめまして。畑本さん。本日はよろしくお願い致します」

畑本「こちらこそ、よろしくお願い致します。それで・・・こちらの方は?」

昭仁「ご紹介致します。息子の匠と娘の愛央です」

たく「只今ご紹介に預かりました。私、琴乃匠と申します。よろしくお願い致します」

あお「はじめまして!わたし、琴乃愛央って言います!よろしくおねがいします!」

畑本「はじめまして。畑本はたもとと申します。お二人は本日学校の方はどうされたのですか?」

たく「実は先日、私どもが通学しております私立方南高校の文化祭がございまして、本日は振替でお休みとなりまして、それでご挨拶を、ということになりました」

畑本「そうなんですね。では一日中、よろしくお願いします」

たく「不束者ではございますが、こちらこそよろしくお願い致します」

畑本「それでは琴乃さん、商談の方を」

昭仁「はい」


こうやって、商談が始まった。愛央は不安になり、ポンポンの持ち手部分をずっと握り締めて俺の横に立っている。しばらくして・・・社長こと、うちの父ちゃんが出てきた。


あお「たっくん・・・成功するかなぁ」

たく「勝利の女神がそんなこと言っていいのかよ」

あお「ほんとに愛央不安でっ・・・!」

昭仁「たっくーん、あおっちー」

たく「あに?」

あお「なぁに?」

昭仁「今お帰りになられたよ。取引、成立」

あお「やったー!おめでとう!」

たく「すげぇな、よかったよかった」

あい「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

たく「おーっと、甘えん坊が泣いちゃってる。俺ら部屋に帰るね。あいちゃんと遊んであげなきゃいけないから」

昭仁「おう!ありがとう!」


愛央はポンポンを持ったまま父ちゃんにぎゅーってすると俺と一緒に急いで部屋に帰ってきた。そしてギャン泣きしているあいちゃんを俺らは2人でぎゅーってしてあげた。そしたらあいちゃんは泣きやんだのだ。


あい「ひっく・・・たったー?ねーねー?」

たく「ただいま」

あお「お姉ちゃん、帰ってきたよ!」

あい「たぁ!(´。>ω(•ω•。`)ぎゅー♡」

あお「ごめんね、心配させちゃって」

あい「ねーねーのぽんぽん、ふさふさしてて気持ちいいきゅぴ・・・」

たく「・・・寝たぞ?」

あお「愛央が好きだからかな?」

たく「一人で退屈だったんでしょ。だからかも」


愛央はぐっすり寝ているあいちゃんをぎゅっと抱っこして、骨董品のゆりかごにあいちゃんを入れた。


あい「きゅぴぃ・・・」

あお「かわいい♡」

たく「そのままの服で寝かせてるけど大丈夫なのか?」

あお「あとで愛央があいちゃんとお風呂に入るから大丈夫!」

あい「うっ・・・ひっく・・・」

たく「そろそろおやつかぁ・・・」

あお「あいちゃん。起きて?」

あい「うっ・・・」

たく「やばいかも。先におむつ変える」


俺は急いで布団の横にあったあいちゃん用のおむつを1枚だし、爆速スピードで交換したのだ。


あい「ありがとうきゅぴ」

たく「よかったよかった」

あい「ねーねー、ちあ!やりたい!」

あお「よーし、たっくんを応援しちゃおう!」

あい「あーいー!」

たく「ばか、やめろ。16時にやるとか」


この会話をしていたその時、俺の携帯がいきなり鳴り出した。俺は急いで電話に出ると・・・


たく「お待たせいたしました。琴乃匠でございます」

店長「ごめんね匠くん!」

たく「・・・どうしたんですか店長」

店長「いきなり今日来れない人が出てしまって・・・来れる?」

たく「愛央とあいちゃん今から風呂ぶち込んでその間に飯作ろうとしたんだけど・・・まぁでも、いいですよ」

店長「ありがとう!悪いけど、1レジでいいかな?」

たく「あーいいっすよ。その代わり来月シフト夕方はほぼ全てでいいので3レジでお願いしますとだけ言ってくれますかね。それが条件で」

店長「おっけー。じゃまたあとでねー」

たく「はいー」


ということで、電話の主は近所のおじちゃんことうちのバイト先の店長。軽いノリで承諾したけど、ご近所なのでなんの問題もない。俺らは昔から世話になってたから今は俺が急な呼び出しにも対応できるようにしてある。このことを愛央に伝えないと。


あお「今の電話、誰?」

たく「おじちゃん。なんかね、今日出れるかって」

あお「たっくん、夜ご飯作ってくれるんでしょ?」

たく「うんまぁそうなんだが・・・多分今から行って帰ってくるのが20時20分。間に合うかね?」

あお「待てるよ。たっくん、応援していい?」

たく「だから・・・用意が早いっつーの!」


怒鳴ってしまったけど、その後面白くて笑っちゃった。俺はすっきりしたのか、愛央たちに結局励まされてバイトに行ったのだった。

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