第114話 詫びの品

 出したブツの数を見て、即座に数えんの面倒臭いとボヤいたババア。


 確かに捨てずに拾ってこれるようになったからね。ごめんなさい。


「ざっくりでいいよ。ババアはこれまでかなり俺に甘くしてくれてるでしょ?」


『ヒッヒッヒ、毎度』


 その結果、5万ポッキリでの買い取りになった。

 これが多いのか、少ないのかとかは別にどうだっていい。寧ろ少なくていいけど、どうせババアの事だし多めに査定してくれたんじゃないかな?


 まぁいいや、レッツショッピングタイム。


 戦うのも大好きだけど、この時間もかなり好き。何か、単純に自分で稼いだ金的なもので欲しい物を自由に買う行為が嬉しいのと、頑張りが認められたような気分になるから。


 とりあえず最初に見るのは服。大人が居酒屋行って最初にビールを頼むのと同じ感覚に似てるかもしれない。資産が潤沢な内に良い物を買わなくては。


〈ユニコーン皮シャツ〉多分汚れに強いから買い。

〈怖厭猿毛皮パーカー〉字面のアレさとなんでパーカーがあるのかわからないが、これは買いたくなった。

〈弾斬馬皮ハーフパンツ〉斬撃に強そう&楽そうなので買い。

〈滑蜥蜴鱗ショートブーツ〉何かしら役に立ちそうなので買い。

 後は普通のシャツや下着を購入。これで合計26000BP。ショートブーツが一番高かったからきっと役立つ物だと思う。


 これで大体稼ぎの半分を使った。


 流れで武器防具を見たけど、イマイチピンと来るのが無くて購入は見送った。


 次いで雑貨類。

 肩掛けの頑丈そうなバッグと、完全防水&延焼遅延というリュックを。あとは封印布ってのがあったからナイフ梱包用に、ガンベルトのような物、フラッシュバン的な物を購入。合計20000程だった。


 封印布で10000持ってかれたけど、これはある意味で衣服よりも優先すべき物だから後悔は無い。


『ヒッヒ、毎度あり。さて坊主、クズから分捕りたい物は決まったかえ?』


 買い物楽しかったと余韻に浸っていると、ババアから忘れかけていた事を問われてしまった。

 そう言われても......何を貰えと言うのか。一番欲しいのはアイツの生命だけど、殺せないって言われちゃったしなぁ。......何か腹立ってきた。


「中位って言えばいいのかな? それ以上の鑑定、収納、修復のスキルが欲しいけど」


 最初の方ですっごく悩まされた三つのスキル。やっぱりこれが欲しい。欲しいんだけど......こういうのって取り引きできるのか?


『ヒヒヒッ......なるほどのぅ。で、どうなんだい? 聞いてたじゃろ』


 悪魔さんに踏み貫かれている肉塊へ、ババアが威圧感たっぷりに言う。


『うーん、中位なら在庫があったと思うからぁ大丈夫だよぉ。でも上位とかになると......渡せない訳じゃないけどそれなりに時間を貰うかなぁ。その人間の子基準だと、その子が老齢になるくらいの時間がねぇ』


 流石悪魔。俺とは随分と時間感覚が違うようだ。

 後は上位とかになると、やはり相当なレア物らしい。有り難い情報だ。でもお前はいつか殺す。


『ケチ臭いヤツじゃの。お前の戯れで人生を狂わせたツケが中位とか......それだと釣り合っていないからお前の得意な隠蔽も渡しておやり』


 流石ババア。いつもありがとう。


『あの悪辣な貴女がここまで丸くなるとはねぇ......そういった部分の感情はよくわからないけどぉ、ここは素直に従っておくよぅ』


 ......ムカつく。悪魔さん、もっとやっちゃって。

 そんな感情を込めて悪魔さんに視線を向けると、素敵な笑顔で親指を立てて返事をしてくれた。その直後、グブチュッて音が聞こえた。ちょっとスッキリした。


『......酷いなぁもぅ。契約外の事はしないのが悪魔なのにさぁ。じゃあちょっと目的の物を取りに行ってくるからァ......うん......あのー、そろそろ解放して欲しいかなぁ』


 身動ぎしか出来ず、ただブジュブジュと音を立てているだけの肉塊であった。悪魔さんは一向に踏みつけている力を緩めようとしていない。


『ねーェ? 聞いてるぅ?』


 緩めるどころか強くなる踏みつけ。焦りの見えてきた肉塊。いい笑顔の悪魔さん。


『あと五十年くらい見ていたいのじゃが、そろそろ離しておやり。そのクズは真性のクズじゃ。目を離すと何をするかわかったもんじゃないから監視で一緒についていくといいわい......序でにクズの拠点に何か良さそうなのがあったら貰っておいで』


『むう......わかりました。オババ様の温情に感謝するんだな』


 わざとらしくイラッとする溜め息を吐いた肉塊は再生している最中に悪魔さんの転移で飛んで俺の前から消えていった。あーなんか空気がさっぱりした気がする。清々したって言うのかな?


 ......まさかとは思うけど、こんな感じの気持ちを周囲に与えるモノを俺はアレから寄越されていたのかな? それならば、足りない。お詫びがこれっぽっちじゃ......死ぬほど足りていない。


 絶対にアレを再生出来ないくらいグッチョグチョにして殺してやる。ふざけんなよオイ!! そりゃああれだけクソみたいな扱いされる訳だ!!

 それでも......あんな扱いしたヤツらは許さない。俺は今殺意が増しているからわかるけど、元々持っていた負の感情とかが増幅している。だから俺に対してしてきた行為の数々は、ヤツらが元々備えて持っていたアレが出ただけ。


 もし仮に俺が普通に生きていたとしても、過ごしていく内にポロッとアレらは発露していたと言える。同情の余地もない。でもまぁとりあえず......


「ババア、色々とありがとう」


『ヒッヒッヒ、これくらい構わんよ』


 この後俺は悪魔さんたちが帰ってくるまで、ババアと一緒に日本茶を飲みながら話をした。

 悪魔さんが日本に行けるようになったから色々と買ってきたり、文化を取り入れている最中なんだって。だからパーカーとかがあったという訳だった。


 それで今、日本はダンジョンが出現しまくっていて荒れ放題らしい。基本的に人々の生活に直結している施設がダンジョン化していて、攻略すれば元の施設に戻るらしい。アイツらは死んでいなさそう。生き汚いからね、絶対に他者を蹴落としたりして生き伸びているよ。


 それで、施設が人にとって重要であればある程、攻略難易度は上がるそうだ。何個かダンジョンは攻略されていたらしいけど、中位のダンジョンは未だに一つも攻略されていないと言う。

 悪魔さんは超大型複合施設ダンジョンに入って中を探索。その過程で日本の製品を見つけたので漁り、本屋エリアでは役立ちそうな物を確保、最深部まで一応行ったけど弱すぎてヤル気がおきず。時間を置いて日本製の品々を、再収穫する方が良いと判断したので攻略せずに戻ってきたそうだ。

 流石悪魔さん。あ、ババアありがとう。


「おぉ、お煎餅だ!!」


 日本茶には煎餅なんじゃろ? と、茶色くて海苔が巻かれているオーソドックスな煎餅を渡してくれた。


 外見だけ見れば完全に異文化交流の極みだけど、日本茶と煎餅で和むババアは完全に日本人が想像するババアだった。

 後は......そうそう、妖精さんの遺品をババアにプレゼントした。ペンはババアに、髪飾りは悪魔さんへ渡してと頼んだ。目を細めて悦ぶババアを見て、初めて心が暖かくなった気がした。




 ◆◆◆◆◆




 人生で一番心穏やかに、そしてゆったりとした時間を過ごしていた俺。長期休暇中に田舎の祖父母の所に行って楽しむなんていう都市伝説が本当の事だったと確認出来た初めての経験。

 世界がこんな事にならなければ、絶対に経験せずに人生が終わったであろう。ちょっと感動。


『ただいま戻りました。あ、あのクズからは貰う物を貰った後、クズが滞らせていた仕事を全て終わらせるまで回復出来ないようにして来ました』


 グッジョブ悪魔さん。働かない有能は死ね。人様に迷惑かけないようにずっと働いていろクソ野郎。


『よくやったわい』

「ナイスー」


 報告された悪魔の如き所業に満足そうな笑みを浮かべるババアと俺。それを見て朗らかに笑う悪魔さん。


『では、こちらをお納めください』


 そう言い、渡されたのは四冊の本、それと大きめのバスタオルくらいの半透明なフィルターのようなサランラップのような何か。


『本は上から、中位鑑定、中位収納、中位修復、上位隠蔽の技能になります。半透明な物は巻き付けた箇所を完全に消滅させる使い捨てのモノです。我々でも消滅するくらいのモノなので、取り扱いにはご注意くださいね』


「あっはい」


 大した事なさそうで使い道もよくわからなかった物が一番ヤベー物だった。念願のスキルと上位隠蔽に喜びかけた感情が瞬時に消え去った。


『それじゃあこれで妾たちはお暇するよ。またのぅ坊主』

『また会いましょうね』


 呆然としていると、正気には戻さねぇよとばかりに畳み掛けられた別れの言葉。返事をしようとした時には綺麗さっぱり目の前には何もなっていた。


「えぇぇ......まぁまた会えるからいいか」


 渡された本に一気に目を通し、それから生じた黒い何かに身体を襲われた。




 ─────────────────────────────


 吉持ㅤ匠


 人化悪魔

 職業:暴狂血バーサクブラッド


 Lv:91→1


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:250→300

 物防:1

 魔攻:130→180

 魔防:1

 敏捷:200→250

 幸運:10→30


 残SP:42→60


 魔法適性:炎


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残613.7L

 不死血鳥

 部位魔化

 魔法操作

 血流操作

 上位隠蔽

 中位鑑定

 中位収納

 中位修復

 空間認識

 殺戮

 状態異常耐性Lv9

 壊拳術Lv4

 鈍器(統)Lv7

 上級棒術Lv3

 小剣術Lv7

 投擲Lv8

 歩法Lv8

 強打

 強呪耐性

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv4

 熱傷耐性Lv4

 解体・解剖

 回避Lv10

 溶解耐性Lv6

 洗濯Lv2

 アウナスの呪縛


 装備:

 壊骨砕神

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 火山鼠革ローブ

 再生獣革のブーツ

 貫突虫のガントレット

 聖銀の手甲

 鋼鉄虫のグリーブ

 魔鉱のブレスレット

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高17000※下三桁切り捨て


──────────────────────────────


 三章終了! ババア回おしまい!

 ギリギリまだ人から人外へとなり、大幅に強化されました。望む物は貰えないと思っていたので、買った鞄とかは無駄に......なりません。安心してください。


 コメントでBCがBPに変わっていたと指摘を受けました。私は全く気付いていませんでした。

 でもなんかもうBPが馴染んじゃってるのでこれからはババアポイントで行きます。今週中には多分きっと変更終わると思います。以後気を付けます。

 次回から四章なのでよろしくお願いします。序でによければ☆とかコメントとか何やらもよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る