第43話ㅤ看破

「アハッ......アハハハハハッ!! 何が何だかわからないけど、あのレイス共の動きが止まったのは僥倖だ。何がよかったんだろ......わかんないや。さっきと同じようにやってみればいつかわかるでしょ!!」


 1、ストレスのような負の感情を込めてありったけの力を込めてぶん殴る

 2、レイスを霧散させるイメージでありったけの力を込めてぶん殴る

 3、殺れるモンなら殺ってみろと開き直ってありったけの力を込めてぶん殴る

 4、1~3の全部を混ぜ合わてありったけの力を込めてぶん殴る


 今の所思いつくのはこれだけ。


「どれだけ脳筋なんだよ......アハハハハ!」


 思いついた案が全部ぶん殴るな事に乾いた笑いが出る。魔法攻撃とかを覚えても、やる事は最後まで変わらず殴るのみ。


「怨念の塊でも負の感情を込められて殴られれば効くのなら、こっちの得意分野だよ。自分の歪んだ性根を舐めんなクソレイス!!」


 新しく手に入れた剛腕鬼の金棒を手に持ち、動きが鈍くなったレイスに殴りかかった。




 ◆◆◆




「ハァッ......ハァッ......アハハハハ......くそっ、全然効かねぇじゃん......」


 あれから1~4を順々に何度も何度も繰り返していった。


 しかしどれも効果は無く、次第に動きが戻っていったレイスのデバフで体力も気力も削られていく。ありったけの力を込めてぶん殴れば特大の隙が出来るからコレは仕方ない。


 だが、これ以上デバフを受ければ動けなくなる。今のデバフの量でまともに動けるギリギリの量。


「何だ......何がよかったんだあの時は......木の棍棒じゃないとダメなのか?」


 考えている最中でもそんなのお構い無しに襲ってくるレイス共。よくわからない病原体を振り撒くレイス、呪いを振り撒くレイス、攻撃を受けた事でようやく能力が判明した古傷を開くレイス。


 どれも厄介で仕方ない。


 今までのボスが単純すぎたのかもしれない。が、いきなり難易度が上がりすぎだろう。ふざけんな。


「これ、自分じゃなかったら簡単に殺されるだろ......病気と呪いで動きを止めて、動けなくなったら古傷をジワジワ開いていくこのコンボ極悪すぎる......」


 あまりの厄介さに焦りが募るが、どうにもならずにストレスとデバフが蓄積していく。

 呪いが重なり重くなる一方の身体、病原体に蝕まれて悪化していく体調。


 途中から少し楽になったから耐性のレベルが上がったのかもしれない。それでも焼け石に水程度のモノだが......


「ア゛ァァァァァァッ!!!」


 唯一ダメージらしきモノを与えられた木の棍棒。だがそれは既に持ち手だけになってしまっていて、これだけでは有効打は与えられそうにない。


 手に持った棍棒だったモノの残骸である木片をストレスを乗せて、こちらの身体に群がろうとしてくるレイスに向け、裂帛の気迫と共に投げつけた。






『キアァァァァァァァア!!!』


 投擲した木片がレイスを突き抜けて飛んでいったが、どう見ても全く効いているように見えない......そう判断し、諦めようとした瞬間、レイスの一体が悲鳴らしきモノをあげて苦しみだした。


 投げ付けた木片は地面に当たり、粉々になった後......石と共に墓らしき物に降り注いだらしく所々削り取っていた。そして、その影響を受けたレイスが苦しみ悶えている。


「............アハハハッ、喋れたのかお前。それと、お前らの秘密はそういう事だったんだね。はぁ、攻略法はとっても単純だったんだなぁ......もっと早く気が付けていたらよかったんだけど......」


 レイスの弱点は墓っぽい物で間違いないだろう。気付いてみれば確かに単純で、此処に入ってきた時にレイスはその墓っぽい物の上に浮かんでいた。

 最初にレイスが動きを止めた時、こちらは地面が抉れるほど思い切りぶん殴っていた。地面を殴った衝撃が墓に伝わり、ダメージを受けていたんだろう。


 苦しんでいるのはシックレイス。左はソイツの墓でいいのかな......?


「それじゃあ、弱点もわかった事だし反撃させてもらいましょう。ここまでで溜まったストレスの全てをぶつけるからな!! お前らの墓をぶっ壊される前にこっちを憑り殺せるといいな!!」



 金属製の金棒と金砕棒の持ち手を、手型を付けるくらいの気迫で握り締めて走り出した。





 弱点を看破された事に気付き、慌てるレイスだったが、呪いを受けて弱体化しているとは言え、元が110まで伸ばしてある敏捷値を持つ相手に追いつける筈もなく......置き去りにされ自らの弱点が砕かれる様をただただ眺める事しか出来なかった。




「おぉぉぉ......らぁっ!!」


 全速力で走り出したがすぐに止まれない事に気付く。なので叩き壊す事を即座に諦め、無傷な墓石を狙い、それとすれ違いざまに金砕棒と金棒を当てる事に意識を切り替える。



 速さとは力である。


 重量を伴った物体が高速で飛来してきて、それに当たればどうなるか。



 交通事故を思い浮かべればすぐに理解出来ると思う。



 スピードに体が流されないように気を付けながら、インパクトの瞬間に力が逃げないよう気合いを入れ、駆け抜けた。


 貧弱な体はインパクトの衝撃に耐えきれずに腕が吹き飛んでしまったが、無事に墓を二基粉々に粉砕する事に成功した。


 本体もそのまま止る事が出来ず、壁にぶつかる前にせめてもの抵抗として生えてきていた腕を使って頭を守りながらわざと転ぶ。


 そのまま地面に体を削らせるという荒業で勢いを殺すも、勢いを全て殺しきる事は叶わず壁に衝突し......赤い染みを作った。



 幸い頭部を全損せずに済んだが、弱点部位を破損した影響ですぐには動けそうにない。


 だが、残ったレイスもボロボロ。


 大苦戦した対レイス戦も、決着の時まであと少しとなっていた......



 ──────────────────────────────


 吉持ㅤ匠

 闘人


 Lv:42


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:110

 物防:1

 魔攻:60

 魔防:1

 敏捷:110

 幸運:10


 残SP:6


 魔法適性:炎


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残95.4L

 不死血鳥

 状態異常耐性Lv8

 拳闘Lv5

 鈍器Lv8

 小剣術Lv4

 簡易鑑定

 空間把握Lv7

 投擲Lv7

 歩法Lv4

 呪耐性Lv2

 ■■■■■■


 装備:

 魔鉄の金砕棒

 肉食ナイフ

 魔虎皮のシャツ

 悪魔大土蜘蛛のバンテージ

 合成皮革のズボン

 再生獣革のブーツ

 魔鉱のブレスレット

 剛腕鬼の金棒

 丈夫なリュック

 厚手の肩掛け鞄

 黒革のナイフホルダー

 予備の服一式×3セット

 ババァの店の会員証ㅤ残高740

 魔石多数


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