第7話ㅤ実感
◇◆原初ノ迷宮第三層◆◇
この階層も多分だけど、上と同じで単純な造りをしていそうな予感がする。
無我夢中で家を飛び出してきた事、なんの準備もないままここに放り込まれた事には後悔が残る。
......鞄やノート、ペンが欲しい。
それと、もう少しまともな服装をしてくればよかった。
......こんな事言っても後の祭り......か。
蹴りを使えればアシッドスライムをもう少し楽に倒せたと思うけど、靴を溶かされたらたまったものじゃない。
ゲーム的な世界なら宝箱から装備品とかを手に入れられると思うんだけど。
靴と手甲みたい物だけは、なるべく早く手に入れたい。
ここら辺の事は幸運の領域なのだろうか。なかなか手に入らなかったら、......その時は幸運を伸ばしてみればいいかな。
一本道を進んでいくと、第三層でのモンスター初エンカウント。
アシッドスライムLv7が二匹と、ダークゴブリンLv8が一体。
ダークゴブリンはナイフを所持している黒緑色の餓鬼。初めての人型モンスター、そして武器持ち。
人型武器持ちというのに躊躇っていても、どうせヤツらはそんな事お構いなしに襲いかかってくる。
それならばヤツらに先制攻撃を仕掛けて、初戦闘のダークゴブリンとサシで戦える環境を整えた方がいいかな。
そう決めて行動を開始した後は早かった。
物攻を二桁に乗せたのがよかったのか、アシッドスライム一匹をパンチ二発で倒す事が出来た。計四発......大幅な時間短縮と、修復の血液消費も少なくて済んだ。
アシッドスライムを攻撃している時にダークゴブリンが攻撃を仕掛けてきたけど、スライムよりは素早いが自分よりはスピードが遅い程度だったので問題なく対処できた。
刃物を向けられて振るわれるのには恐怖を感じてしまったけど、自分はこの程度では死なないんだ......そう思うと不思議と心が落ち着いた。
ダークと名前に付くだけあって魔法を使えるらしく、回避していると攻撃が変わる。手に持ったナイフに黒い靄が纏わりつく攻撃に切り替わったが、どうやらゴブリンに出来るのはそれだけみたいだ。
「魔法って初めて見たよ! いつか自分にも使えるようになるかな」
初めて見た魔法に感動し、いい気分のままダークゴブリンの顔を殴りつける。手応えの無さに驚き、頭が弾け飛んだゴブリンを見て再び驚く。
「ハハッ......アハハハハッ! なんだ、ダークゴブリンのレベルが高いから心配していたけど、アシッドスライムが異常に固かっただけなんだね」
この成長戦略は間違っていないと気付けたのはとても大きい。......それと、自分は人型のモンスターを殺しても、特に何も感じなかったのも収穫。拳に付いた血や肉片を、腕を振って払う。
『レベルが1上がりました』
アナウンスを聞きながら、ゴブリンの死体からは血液を採取。血液0.5L、それとゴブリンが使っていたナイフを入手できたのでこの階層は二階層よりも美味しい。
レベルも上がったし、いい事尽くし。
この階層にいるモンスターもしっかりと全滅させてから下に進もう。
......出現順を間違えていたんじゃないだろうかと思うほど、ダークゴブリンの討伐が簡単すぎた。
この階層最初と二回目の戦闘だけアシッドスライムが一緒に出たが、三回目の戦闘からは出てくるのはダークゴブリンだけになった。全く脅威ではなく数が増えただけ。
ゴブリンは群れるイメージが多かったから特に違和感はなかった。こんな序盤の内に対多数との戦闘を経験できた事と、血液のストックを楽に増やせた事を喜ぼう。
アシッドスライムに攻撃した時のダメージ以外は全く受けず、無事に四階層へ進める階段まで辿り着いた。
血液は7Lを超えてから自動で増える事がなくなったので、説明にあった一定値とは7Lだったということがわかった。
贅沢を言うならあと五回くらいダークゴブリンの群れと戦いたかった。血も増やせて経験値も貰える自分にとってのボーナスステージは短すぎた......次の階層もダークゴブリンだけ出てきてほしい。
この迷宮のルールというか、気付いた事がある。普通は倒すと死体が丸々残るんだけど、10%くらいの確率で小石だけになる。
ダークゴブリンからは、ヤツと体色が同じな黒緑色の小石。使用用途や意味が全くわからないので、死体が残ってくれたほうが自分にとっては嬉しい。
この迷宮のシステムなのだろうから仕方ないと思うしかないんだけど。
倒したダークゴブリンの持っていたナイフの中から比較的綺麗なのを選んで持っていき、小石は三個ずつ確保して残りは嵩張るから捨てた。
階段を下りる前に自分の体とステータスをチェック。体は不調さも疲れも感じていないので、ポイントはしっかり振って終わった。
気分はとても高揚しているので、休憩をしてこのコンディションが変わるのを危惧。さっさと次の階層へ行くことに。
次の階層にはどんな敵が出てくるんだろうか。自分がここまで攻戦的な一面を持っているとは全然わからなかったよ。絶望して死にかけていた自分を、迷宮に挑めるくらいの性能まで引き上げてくれた存在に感謝しないといけないね......
きっとこの迷宮を完全攻略する事が、この迷宮と出会わせてくれた者への恩返しになるはずだから頑張ろう。
「アハハッ......アハハハハハハッ」
楽しくて笑いが堪えられない。
ㅤ生きてる事が苦痛だった自分が、こんなに生きてる事を楽しいと思える日が来るなんて思わなかったなぁ......
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:8→11
HP:100%
MP:100%
物攻:10→12
物防:1
魔攻:1
魔防:1
敏捷:6→10
幸運:3
残SP:0
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残18.3L
不死血鳥
状態異常耐性Lv1
ㅤ■■■■■■
──────────────────────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます