第2話 何もない

 目の前にいる子はどうやら幸夜翠という名前らしい。


 「私は水乃唯花です。気軽に唯花って呼んでくれると嬉しいな」

 

 私は微笑みながらそう言う。

 みどりはそんな私を見て顔を赤らめていた。


 うん!なんで?私何かしたかな......?


 「は、はい......!.........あ、あの私のことみどりって呼んでほしいです...」


 みどりは上手使いでこちらを見てくる。私はその可愛いさについ頭を撫でてしまう。

 みどりはビックリして目をパチパチとさせている。

 

 

 「う、うん!みどり」


 私は目の前にいる子の名前を呼び、さりげなく手を繋いで歩き出した。


 

    ♪〆〇 


  私とみどりはこの場所を探索することにしたのだが、全くもってなにもない。人もいないし、食糧や水だってない。


 「ど、どうする?まだ探索する?」


 「し、しよ?」


 「うん、わかった」

 



 それから数分....いや、数時間経過した。数時間探索してわかったことがある。そう、本当にここにはなにも無いということだ。


 「本当になにもない....」


 「そ、そうですね......」


 私はため息をつき、考え事を始める。

 んー....どうしようか....ここから離れるつもりではある。しかし、問題が一つ...いや一つどこではないけどある。それはここが日本なのかどうかだ。私を含めた総勢170人の一学年が気がついたらさっきいたあの建物内にいた。そして私以外いなくなっていた。それを踏まえて考えると、ここに長くいるのは危険だ。

 

 


 「あの、何もないしここから離れない?」


 私はこの場から早く去った方がいいと思ったのでみどりにそう言う。


 「は、はい!」


 みどりは二つ返事で了承すると、私の横に来て一緒に歩き始めた。

 

    ♪〆〇



 「お金とか食糧ないけどどうする?」


 「......今は気にしなくてもいいと思います」


 みどりは視線を左斜め下に落とす。


 「う、うん....そうだよね!」


 「そうですそうです」


 みどりはそっと胸を撫で下ろす。

 私はもう一つ疑問に思ったことを言う。


 「ねぇ、みどり。ここって日本なのかな?」


 私がそう言うとみどりはビクッと体を跳ね上がらせ、その場に立ち止まる。私はみどりの前に行き、「だ、大丈夫?」と心配してそう言う。みどりは少しの沈黙の後、不意に顔を上げこちらを見て冷たい声色でこう言う。


 「そんなことよりも今は歩く。いいですよね?」


 みどりは不気味な笑顔でそう言う。

 その不気味な笑顔に私は背筋が凍るような思いをした。


 「そ、そうだね、そうしよう!」

    

 私は慌てながらもそう言い、前を向いて再び歩き始めた。


     ♪〆〇


 歩くこと数十分。


 「やっと、人がいそうなところに着いた!」


 「そうですね!」


 私とみどりは人がいそうな場所にたどり着いたのだった。




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