第40話 新たな指導者

「……………」


ローズはケイオスとリベリオンを見つめていた。


「にしてもよくこんなアーツを見つけたな」


「ベル」


「地下室なんてあったんだな」


「俺とじいちゃんしか入れないがな」


「そうか、さてとローズ、依頼だ」


「依頼?」


「九郎さんからの依頼だ」


「なんでじいちゃんから?」


「終戦の指導者へ依頼だと」


「何故バレたし」


「このアーツを作ったのは誰だ?」


「あ、そっか」


「さて、依頼内容だが、『とある女性』を護衛してほしいとのことだ」


「とある女性?」


「何でも九郎さんと親密な関係にある女性らしい」


「え、まさか…」


「心当たりが?」


「う、浮気相手…」


「そんなわけないだろ!…無いよな?」


「心配になってんじゃねぇよ」


「ま、まぁそれはそうと頼めるか?」


「ああ、任せろ」


「…ついでに関係も探ってくれ」


「それに関しては俺も探りを入れるつもりだ」







「ここが待ち合わせ場所…か」


ローズが待ち合わせ場所で待っていると見たことのある人影が。


「お、陽炎!」


「じいちゃん、早かったな、それと後ろの人が護衛対象か?」


「おう!」


「…浮気相手とかじゃないよな?」


「何を言う!俺は嫁一筋だ!」


九郎は胸を張って浮気相手では無いと言い切った。


「さて!紹介しよう!彼女は新政府の女王『坂戸見さかとみ 沙弥香さやか』だ」


「は、はぁ…(な 、名前長ぇ…)」


「よろしくね、陽炎君」


沙弥香は陽炎の手を取り握手をした。


「よ、よろしく」


「さて、とりあえず沙弥香の護衛は俺と陽炎の二人だ」


「あ、そうなんだ」


「そりゃあお前、まだ戦闘経験が一年未満の若造が重要人物の護衛が務まるかってんだ」


「うぐっ…仰る通りです」


「面白いね、二人」


「「そりゃあどうも」」


「そっくり!」


沙弥香は九郎と陽炎の話を聞いて笑っていた。


「それでどうやって沙弥香…さんを政府のトップに立たせるんだ?」


「まずは機能していない国家に代わって統治するところから始める」


「…そんなこと出来るのか?」


「Actorを舐めるなよ?これでも国家が認める組織だぞ?」


「それでも権限が…」


「俺たち先代がそこまで持っていったんだよ」


「…というと?」


「ふざけた法令や、政治家を正せることが出来る」


「…へぇ」


「ま、やってみたほうが早いな」






議会にて


議場は開戦してからずっと開催されている。


そこでは国民を保守する者たちや、自分だけしか考えていない者たちが論争を繰り広げていた。


「よし、沙弥香、準備は良いな?」


「ええ、出来てます」


「…まさか今から乗り込むとは」


陽炎たちは議場の扉の前まで来ていた。


「よし、行くぞー」


「え、じいちゃん何を…」


「オラァ!」


九郎は扉を足で蹴り開けた。


『ザワザワ』


「失礼すんぞ」


「なんだ!貴様らは!」


近い所に座っていた政治家が九郎に向かって歩いて行った。


「煩え!」


九郎はその政治家を片手で投げ飛ばした。


「ぶべらっ!」


「お…おっふ…」


九郎たちは議場の真ん中まで歩いて行った。


「あー、今からこの政府は改造させてもらう!」


『ザワザワ』


「まぁ、お前たちの不満もわかる!しかしだ!今はどうだ!何も出来てないじゃないか!そこでだ!」


沙弥香が九郎の前まで出てきた。


「彼女が新たな国のトップだ!」


『ザワザワ』


「ふざけた事を言うな!そんな事をすれば尚更国は混乱し、犠牲者が増える一方だ!」


「確かにその考えは間違えではない、しかし今国民が頼っているのは誰だ!」


「我々政治家や議員だ!」


「違うのな!今は『終戦の指導者』だ!」


「なっ!」


「奴はお前たちがオドオドしながら自衛隊の派遣要請をする前に事を片付けている!」


「っ!」


「その『終戦の指導者』と彼女が組めばこの戦争は終わる!」


『ザワザワ』


「だが!その終戦の指導者が何処にいるか分かるのか!」


「ここに居るだろ?」


「(え、名乗るの?マジで?)」


急にふられた陽炎は混乱していた。


「…俺が終戦の指導者だ!」


『ザワザワ』


(陽炎、今からお前は心の底から思うことを言え)


急に九郎が陽炎に話しかけてきた。


(え?)


(沙弥香の能力は『思いの拡散』、他人の思いを拡散させて、共感させられる)


(分からんが、わかった)


「…俺は!この戦争を止めたい!血を流したくない!苦しみたくない!幸せを取り戻したい!その一心で戦争に介入した!後悔は無い!」


(今だ!沙弥香)


沙弥香は九郎の合図と共に目を閉じてを合わせ、念じた。陽炎の思いを。


『ザワザワ…』


「…そうか…君はその一心で…」


「我々は何をしていたのだろうか…」


「自分勝手で…」


次々に共感し、考えを改める者が増えていった。


「私は!彼と共にこの戦争を終らせ!この国を変えて行きます!どうか!私と彼らActorに任せていただけませんか!」


『…』


もう異論を発する者はいなかった。


「良かろう」


九郎が蹴破った扉から入ってくる老人が一人。


「任せよう、新たな国のトップよ」


この老人こそ国の真の主、『加山かやま 雄策ゆうさく』である。


「そして、Actorの方々、我々国民を守って欲しい」


そう言うと雄策は額を地につけた。


『ザワザワ』


「顔を上げてください」


そう言い雄策は顔を上げた。


「必ず成し遂げます!」


『ウオオオオ!』


歓声が上がった。


新たな国のトップが誕生した。

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