第11話 思いの外…

「…ここは…」


俺は目が覚めると何処かわからない

ベッドの上にいた。


「…」


辺りを歩き回ってみるが何も手掛はなく何処かわからない。


「おはよう」


扉を開ける者が1人


「氷河の女帝、シズか」


シズは黒髪で青色のメッシュが入っていて、目は透き通る様な青色瞳をしていた。


「ええ、元気そうね」


「ここは何処だ」


「ここは私の部屋」


「そうか…」


「帰りたい?」


「…いや、俺はまだ任務を1つ遂行していない」


「…へぇ、その任務は?」


「お前を助けること」


「…そう」


「だが、流石にお前の主は殺せないだろうとは思ってる」


「…私の主はムーンの最高幹部の1人よ」


「厄介だな…」


「ま、とりあえずこれから貴方は私と来てもらうわ」


「…わかった」









ムーン 中継基地


「…」


「こいつが…お前が言っていた奴か?シズ」


おそらくここは司令部なのだろう、

デスクにいる男は司令官だ。


その司令官は髪が赤く、無精髭が特徴の男だった。


「はい、カイザーさん」


「シズ、少し席を外してくれ」


「はい」


シズは出ていった。


「俺はカイザー、ムーンの第三部隊の司令官だ。

さて、突然だが君に問う」


俺は無言で頭を立てに振る。


「…」


するとカイザーは俺の真横にやってきて。


「…シズの束縛を解こうとしているのか?」


「…ああ」


「理由は?」


「単純だ、哀れみを感じた」


「それだけか?」


「…シズは泣いていたぞ」


「…」


「…俺はシズを助けることを目的に今から動く」


「…シズの命令は『裏切るな』だ」


「…」


「俺もシズを救おうとしている、暁もそうだあいつはシズの親友だ」


「…あんたの部下なのか?」


「ああ、2人とも…な」


「…そうか」


「俺は胡散臭いか?」


「…なぜだかわからんが俺はあんたを信じる」


「直感か?」


「そうだ」


「ふふふ、君は面白い」


「よく言われるよ」


「名は、ルーキーだな?」


「仮だがな」


「そうかなら俺がコードネームを付けてやる」


「すまんがコードネームは遠慮する」


「そう言うな、そうだ『ローズ』ってのはどうだ」


「『ローズ』…薔薇」


「花言葉で『愛』だ、君にピッタリだな」


「どこがピッタリなんだ?」


「君の愛でシズは救われるさ」


「…だと良いがな」


「君のアーツはちゃんと修理してある」


「それは助かる」


「さて、君にはすまないが捕虜になってもらう、ああただしシズが見ることになっている」


「シズ?何故に」


「君の世話係に手を上げたんだよ」


「…そうか」


「シズも君の言葉に心を決めたようだ」


「…」


「つまり君のおかげでシズは生きる

希望を見つけたと言ったところだ」


「そうか」


「うむ、シズ入りたまえ」


「はい、失礼します」


「さて、彼を部屋に戻してやってくれ」


「はい!ついてきて」


「ああ」


俺はシズのあとをついて行く。








「ここが貴方の部屋よ」


「檻かと思ったが、まともな部屋だな」


「そうよ、カイザーさんが用意してくれたの」


「そうか、感謝しないとな」


「…ねぇ本当に助けてくれるの?」


「…もちろんだ」


「ありがとう」


俺は始めてシズの笑顔を見た。











1週間が経過した。


「…よし」


俺はここに来てずっと刑務作業に似た作業をしていた。


「やるな」


「おい、あのリングの捕虜、素直に働いてるぞ」


「珍しいこともあるもんだな」






「…ふぅ」


なかなかハードな作業を終え、部屋に戻ってきた。


「お帰り」


「…ただいま」


シズが出迎えてくれた。


「それで、怪我は?」


「無い、だが疲れた」


「そう、お風呂湧いてるわ」


「ありがとう」


気が利く女だ。








風呂


「…ふぅ」


俺は湯船に浸かり目を閉じ、心に思ったことを口にする。


「………夫婦かよ…」


「っ!?」


何かが落ちる音がする。


「…大丈夫か?」


「な!何でもない!」


「そうか、気をつけろよ」


「え、ええ」


何だ?動揺してるな。


「…ふぅ、まぁいいか」









「はぁ〜、さっぱりした」


「そ、そう」


「シズちゃんいる?」


暁が訪問してきた。


「ふぇ!?あ、暁ちゃんか…」


「どうしたの?動揺して」


「さっきから変だぞシズ」


「な、何でもないってば!」


「ぐほぅ!?」


思いっきり殴られた。


「シズちゃん!?」


「お…お前…嫌なら嫌って言えよ」


「君もそこにツッコむ?殴られたことにツッコもうよ」


「ご、ごめん!つ、つい手が…」


「ま、まぁ幸いにも少し痛いで済んだが」


「少し痛いで済むんだ…」


「薬物投与で痛みに耐性があるからな」


「…こくね」


「ああ、だからシズを救おうと思ったこれは救われた俺なりのやり方だ」


「…あ、そうだシズちゃん、経過察表貰いに来たよ」


「あ、ありがとう」


シズは暁に経過観察表を手渡す。


これは俺の体調や行動、食事などを記載する…らしい。


「そうそう、あとカイザーさんがそろそろ来るよ」


「そうなの?」


「今来たがな」


ぬるっと後ろからカイザーが。


「カイザーさん、どういう用件で」


「ローズの様子を見に来た」


「「ローズ?」」


「彼の名だ」


「あんたに付けられたコードネームだがな」


「気に入ったか?」


「まぁ…」


「なら良かった」


「それで、なんの用だ」


「そうそう、君のアーツに少し改造を施して良いか聞きに来たんだ」


「どう改造するんだ?」


「そうだな、主にオートリペアを搭載する」


「オートリペアだと!?」


「試作段階だがな」


それでもありがたい。


「まぁそれでも普通の損傷なら再生する」


「ありがとうカイザー、頼むよ」


「おう、なら今から研究所に掛け合ってくる」


そう言うとカイザーは部屋を出ていった。


「カイザーはいいヤツだな」


「ええ、私達を優しく出迎えてくれたわ」


「私達からすればお父さんみたいな人なの」


そうか…ムーンはテロリストだと思っていたが…こういう奴らもいるんだな


「…率直に聞きたい、お前たちは

ムーンが嫌いか?」


「…う〜ん、嫌いに近い、でもそれは私達だけ、他の人はむしろリングが

大嫌いだと思うよ」


暁が説明してくれた。


「私はそう言っちゃうと命令違反になるから、暁ちゃんと同じ」


「そうか、ならシズの束縛が解けたらリングに来るか?」


「…う〜ん、どうしよう」


「私はそれも言えないわね」


「気が向いたらでいい」


「そう」


「さて、とりあえず今日は…」


こんな感じで1日が過ぎていく。










3週間が経過した。


「さて、ローズ今日はお前に機体を返す」


「唐突だな」


「…まぁ、そうだな」


「なんだ?何か言いたげだな」


「…そうだなまずは、シズの膝枕はどうだ?」


そう俺はシズに膝枕されながら耳かきをされていた。


「良い枕だ」


「はい、反対側」


「おう」


「お前ら仲いいな」


「そうか?」


「ああ、暁が見たらびっくりする…」


「シ、シズちゃん!?何してるの!?」


噂をすればなんとやら、暁が現れた


「何って…耳かき?」


「いやいや、膝枕してんじゃん!そのうえ耳かきとか『夫婦』じゃん!」


「なっ!///」


すると…ザクッと耳に綿棒が刺さった


「痛ぇ!!?」


「ご、ごめん!」


「ほんと仲いいな」


「シズちゃん…」


「ち、違うの!3週間も耳かきしてるの見たことないから!やってあげないとって!」


「その発想が夫婦なんだよ」


「そうなのか?」


「そうだよ」


「さて、どんな感じに仕上がったんだ?」


「見てみるか?」


「ああ」







格納庫


「ほぉ〜凄え」


「気に入ったか?」


「ああ、特に肩に入ってる

『薔薇のマーク』が俺好みだ」


ray-Sのパーツに全てオートリペアが施されている、しかも装甲が厚くなってもいる。


「かっこいいじゃん」


「ああ、ありがとうカイザー」


「礼はシズを開放してからにしてくれ」


「ああ、必ず開放するし、礼も返す」


「ふふ、待ってるわね」


「期待してろよ?」


「それと、お前はリングに返す」


「え、良いのか?」


「ああ、上からの命令でな」


「…わかった」


「待ってるわね」


「必ず迎えに行く」


「…なんか2人とも…」


「ああ」


「「?」」


「「ラブラブだ」」


「「!?」」


あらぬ誤解をされた。

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