第186話 希鏡期⑥ トゥーマ・ファルマ兄弟

〔アーク、実はさっきの協力隊の彼なんだけど・・・。〕


僕は協力隊の彼に鼻で笑われた後、不敵な笑いをしていたビジョンについてすぐさまアークに伝える、すると


「めっちゃキナ臭いですね。疑うべきでした、そもそも平常時のショウさんならもう少し冷静に彼の話の真偽を能力で確かめる事だって出来たのに。


今から追いかけるにしても車が無いし。そもそも私の考えとカガミさんの情報を交えて総合判断すると昨日の協力隊の青年もアティウスの可能性が拭いきれません。


私たちが世間を知らないのもありますが、情報量が異常でした。カガミさんの人物像を掴んで敵対した時、攻略のカギにするつもりだったのかもしれません。


あるいは小柄なエイトを捕獲したかったけれども南の町へ行ったので次に小柄なカガミさんに誘拐の目星をつけて探りを入れに来たとか。


あぁ、そうか、敵対するかどうかのテストだったのかも。ハイドラについて負の感情を持っている場合、アティウスに勧誘しやすい。


そう考えるとトゥーマ・ファルマは既に説得され避難民と一緒に身を潜めている可能性が大です。その青年が言った南の町での話は全部ウソでしょうね。


厄介なのはトゥーマとファルマが完全に寝返った場合、こちらの情報も盗まれていると言う事。」



アークさんよ。話長いし結構むずいんだけど。


〔結局どうすれば?〕


「さしあたっては協力隊の人数を把握しましょう。さりげなくです。」


その夜は緊張で挙動不審になっていた。クローズドフードのおかげで顔はバレないんだけど、こっちが1人しかいないって情報はもうバレてるし、もしたくさんで攻められたらまずいぞ!何もできない。まさにヘビに睨まれたカエル状態。


【たぜいに ぶぜい む むねん...がくっ】ってなるよな。 


初代ゲーボーイの元ネタをツッコんでくれる竜二が懐かしいよ。

たぶん竜二なら「カガミの為に鐘は鳴る。」って言ってくるだろうなぁ。カエルだっけ?


さて、食う間を惜しんで難民キャンプをざっと見た感じ協力隊の服装の人は3人しかいなかった。

でも昨日の奴が見当たらない難民に紛れているかも知れないな。そう思ったその時、


小さな声で

「カガミ!お~い!カガミ~~。」と兄弟でコッソリ寄ってくる二人を見つけた。

他の人の目に付かない所まで離れてアークが

「トゥーマ!ファルマ!心配したじゃないか!!」と言ってくれた。良かった~生きてたんだね!!


2人は気まずそうにしながらもトゥーマから「カガミここで戦闘はよそう。」との打診があった。しないけどね。


「無事でよかったよ!でも二人じゃ無いんだろ?アティウスの勧誘を受けたのか?僕たちハイドラの事はどこまで話したんだ?」と聞くと二人はビックリして


トゥーマは驚きながら

「あぁ。よく知ってるな!アティウスって奴らだ。みんながA4の加勢に行ったすぐ後にテントに来て、俺達は説得を受けて今まで避難民に紛れて隠れてた。


まだ100%は信用してないからハイドラの大人と子供の人数しか話していない。アティウスの人らは4人いて1人はあの砦にいる。」

と山上の中腹に構える砦を指差した。


「兄ちゃん俺が言うよ!カガミ、悪いんだけどハイドラの残った一人を連れて来て欲しいって言われてて。あの砦まで一緒に来てくれないか?ハイドラに比べたら悪い話じゃないと思う。と言うか、カガミ意外と頭キレるんだな。バカだと思ってたよ。」とファルマ。

ほっとけ!


アークは僕に話しかける「絶対罠ですよね?」だよね~~【絶対】は無いけど。すぐさま首を縦に軽く動かした。


優しい口調で事を起こさないようにアークが質問をする。

「2人はどうしてハイドラからそちらへ寝返った?」


ファルマが

「テロ組織としてのハイドラの陰謀について聞かされた。ここの避難民を救いたいんじゃなくて天然ガスの利権を欲しがってるだけだろ?」と答えたが兄のトゥーマはまだ悩んでいる雰囲気も感じ取れる。


「俺達もわからない。迷ってるんだ。ただ、ハイドラに生贄にされるのなんてごめんだ!指をくわえ見ているなんて事はできなくって。嵐の時の港はどこだっていい。そんな気持ちだよ。カガミもわかるだろ?」


??僕は【嵐の時の港はどこだっていい】のか?と思っているとアークは

「きっと【藁をもすがる思い】のことわざの海外表現でしょう。」とコッソリ教えてくれた。

なるほどねぇ。



アークは

「まず僕としてはみんなに君らの無事を報告したい。」


「それはダメだ!それならここでカガミを捕縛する!」とトゥーマ。


いや戦闘はダメって言ったのそっちじゃん!

「落ち着け、少し考えさせてくれ。」とアークが時間を稼いでくれた。

「わかった。」



「どうしますか?ショウさん達が南の町について【協力隊のふりをしているアティウス】のウソに気づき戻ってくるまで恐らく早くても翌朝までかかるでしょう。カガミさん。2案準備しました。YESで咳払い、NOで鼻をすすってください。

1案、全力で逃げて南の町を目指す。カガミさんの生存率90%」


NOだ。鼻をすすった。


「おや?冷静ですね。一応、生存率の高い私のオススメ順に聞いてるんですが、では次、

2案、砦迄おとなしくついて行き、アティウスの人間とコンタクトを取る。相手に悪意があった場合、カガミさんの生存率50%以下」


これだな。

僕は咳ばらいをした。


「なぜそちらを?なんてのは野暮ですね、カガミさんの生存率に反比例してトゥーマ・ファルマの生存率が変動する事ぐらいわかってましたもんね。私から一言、これだから人間は。」


だと思ったよ。アークはバカにするような言い方ではなく、そう来ると思ったぜ!って感じでそう言ってきた。竜二を見習え!!あくまで希望は捨てない!!!


アークが二人に返事をする。







「砦はおとなしく付いて行く。」

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