第129話 連繋期④ 長い物には
5月の半ば。
いつも通り訓練を終わらせて、家に着くと母さんが、
「カガミ遂にやってきてしまったわ。」
母さんは真剣な顔で僕にそう話してきた。
「なになに?ムギ薬局でイベント??」どーせ大したことないんだろう。新作のパン発表会か?店長のカレー発売か?
母さんは
「業界最大手ウレェシアが巨大配送センターを引っ提げてムギの前に新店舗を開店するのよ。」
ふーん。あ、母さん期待した目で見てきてる。
僕はきっと親想いなんだろう。大きく息を吸うと極力わざとらしくない感じで
「えぇーーーーーーー!!!!」っと驚いてあげた。
ご満悦な母さん。へへッ。バカだね。
「店長はなんと!キャリン堂の店長さんの妹さんよ!貧乳の。」
おいおい!悪意悪意!最後の一言!無自覚で悪意を垂れ流してますよ!みかんちゃん!
僕は鼻をほじりながら
「とうとうドラッグ四天王揃い踏みだね。そもそも何でドラッグストアがそんなに集まってくるんだよぉ。」と聞くと
「初めはドコファイの兄妹が亡くなった親から譲り受けた土地を使ってドラッグストアを建てたみたい。たまたまムギの近くにあったんだけなんだけど。
次にできたキャリン堂は本部が薬局特区かと勘違いしたらしいの。」
「薬局特区ってなんだよ。」巨乳店長と似てキャリン堂本部もふわふわしてるなぁ。
母さんはさぁ?って顔をして話を続ける
「最後のウレェシアはシンプルに姉への嫉妬で近くに建てたんじゃないかしら?」
「・・・どうなってるんだよ!ドラッグストア業界!」
「問題は高速のサービスエリアと併設して作られた巨大配送センターよ。」
「あれっ?あそこnamazonじゃなかったの?」
「いつも思うけど、カガミって人の話をちゃんと聞いてる?」
そっくりそのまま母さんに返したいよ。いや、遺伝か。
「あそこがウレェシアの配送センターだったのよ。」
「えー!終わったね。OMGじゃん。今からでもウレェシアに転職して安定を手に入れたら?」
「大丈夫よ。父さんの遺族年金が、株で負けなきゃ先の心配はまだいらないわ。」
「ちょいちょい!父さんの遺族年金全額株につぎ込んでるの?!」
「そうよ?全世界株ETF投資よ。買ってばっかりだけど。」
「リスク高くない?」
「そうねぇ、じゃあ世界経済が落ち込む前にタイミングを見て売ろうかしら。」
母さんぼーっとしてるから売りそびれそう。心配だなぁ。
母さんのアーク!頼んだよ!老後の資金は君にかかっている!
「じゃあさ、これからのムギ薬局のビジョンは?」
「なに?カガミ面接官?」眉を寄せる母さん。
あんたの息子だよ!
「いや、いいや、どーせ母さん上手いことやるんだろうし。」
「息子の信頼が厚くって幸せだわ〜。」そう言うと母さんはポワポワした顔でマカロニを茹で始めていた。
「今日のご飯は何?」
「今日はねー師匠のレシピで作るハンバーグとサラダよ!ただのサラダじゃなくてマカロニサラダ。」
「今、ムギのオリブラでマカロ」
「ストップストップ!!!なにそれ?オリブラ?」
「あ、ムギ薬局のオリジナルブランド。」普通に言えよ!
「マカロニを売り始めたんだけど、あ、これも私の案。
アークの弾き出した計算で、いづれマカロニが世界を救うそうだから今のうちにと思って提案したの。よく言うじゃない
長い物には【マカロニ】って。」
あ〜あ。またやっちゃったよ。何だそのことわざ。
【巻かれろ】だよな?
「ちなみに母さん僕はバカだから今のことわざ聞いたことあるけど、どう言う意味なんだい?」
「え?!知らないの?マカロニはパスタの仲間じゃない?ペンネとかラビオリとかあるけど、一番歴史が長いものにはマカロニが挙げられるのよ。
で、意味は、何か夕飯の選択を迫られたら、とりあえず歴史の長いマカロニで攻めたら喜ばれはしないけど文句が出たりもしない。大局に身を委ねる安全ルート・安定コースって事なのよ。」
悔しいかな!!100%間違いでも無いんだなぁ。
「へー母さんすごいね!」すごいバカだね!
僕はムギブランドのマークが描かれたマカロニのパッケージから一本だけマカロニを取り出して、眺める。
「これが世界を救うのか〜。って母さんのアークやっぱおかしく無い?」と言いながら、
ライトにかざしてマカロニを直軸方向から眺めると最近見たアレのサイズに近いことに気づいて、
「茹でる前のマカロニはアオリちゃんの作ってた【アイロンビーズ】にそっくりだよねぇ。」
とぼそっと呟いたんだ。
そうしたら母さんが
「!!!今なんか閃きそうだった!!アーク起動!!
1分前からの音声を保存しといて〜。」
と、言っていた。 アークはバックグランドで常に起動してるのか?
まぁどーせまた
今日もみかんの豆電球は電池切れだ。
夕飯を食べて携帯ゲーム機のアドバンスを取り出し
【ハイなるファンタジーV】を起動しながらスマホのツブッターでアイロンビーズのスーハミドット絵作品を眺めていると、知らない電話番号からショートメッセージが届いた。
ポチッと開いて文章を読む。
【寿 蒼里です。お母さんから電話番号を聞きました。登録してもよろしいでしょうか?】
「アオリちゃん??」
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