第116話 伝心期① ちょうちょの話

春休みが終わり今日から中学2年生になった!

僕らは一年前と同様に四人とも同じクラスに振り分けられていた。振り分けられてない??その通り!でもたぶん原因はこいつにある。


「隠しても無駄だぞ!今回はいくら積んだんだ?」こいこい!竜二も言ってやれ!


「高級車何台分だ!?吐け!!」いけ!やれ!竜二に首を絞められるヒカル。


「いや、僕はやって無いよ!そもそもそういうお金貰うと公務員クビだからね!」

「建前は良いんだよ本音を聞いてんだ!」


「父さんに言いました。やめてケロ!うっ!ぐふ。」芝居上手になってきたじゃん!今日はここらで許してやるか。


佐井寺の権力をもって、いやホントは視覚障害、聴覚障害の支援という形で僕と竜二は2年になってもヒカルとネネちゃんと同じクラスになったみたい。聞くところによるとヒカルだけじゃなくって、


「天道君が支援??それは無いんじゃない??最近は不良の行いを【支援】って言うの??」って言う校長先生達をゴリ先が説得してくれたらしいけど、結局納得しなかったみたいで校長室から大きな物音が聞こえた後、校長の一声で僕の事は誰も話さなくなって、いつの間にかみんな同じクラス分けになってた。とかいう都市伝説を耳にした。


掃除のおばちゃん談の「校長室の机がへっこんでて、絨毯がオシッコ臭い」と言う噂はそのすぐ後から広がるこれも都市伝説である。


やりすぎだよゴリ先。


兎にも角にも中二になった僕らはマジメに授業を受け、マジメにゴリ先と修練を積み(シバかれ)マジメに情報交換をしあった。


一番得意な理科の授業は楽しかった。先生が変わっていたのかもしれない。その先生はひょろっと背の高い男の先生なんだけど、賢すぎたせいか他の生徒には特に好かれていなかった。


中学生にはちょっと難しい事を言ってるんだろうけど僕らはイチゴサイダーの恩恵のせいかすんなり入ってくる内容が多くって他の生徒そっちのけで質問をして、それに先生は嬉しくなったのか更に難しい事を教えてくれた。でもやっぱり保護者から他の生徒中心で進めるように指摘があったらしく、しょぼんとした理科の先生はチョットかわいそうな気がしたんだ。


印象に残ってる授業がいくつかある。2年生最初の授業だった。



「風が吹けば桶屋が儲かる。このことわざを聞いた事ある人は手を挙げてください。」

僕は聞いた事があっても詳しく説明できない気がしたからいつものトラブル回避モードをON

にしていたんだけど。


シュピン!と伸びるキレイな手とキレイな姿勢、アカのヘアバンドに

ミディアムボブの髪型の我らがネネ様が当てられて、立ち、先生に「説明できる?」と聞かれていた。


「はい。」と答えたネネ様が喋り出す。


「風が吹くと砂埃が舞って、砂が目に入って、失明する人が増えて、三味線を弾く人が増えて、その三味線に貼る為の猫の皮が必要で、猫が減るとネズミが増えて、増えたネズミは桶をかじるので桶屋が儲かる。ということです。


ことわざの意味自体は、何かが起こると、巡り巡って意外なところに影響が及ぶ事の例えです。」


クラスのみんなは開いた口が塞がらなかった。初めて同じクラスになる何人かの男子は恐らくネネちゃんを好きになったと思う。バカめ!!既に我らがネネ様にゃー竜二がいるんだよ!あいつが勝つに決まってんだろ!初恋だったら尚更ざまぁだな。


おや、まてよ?!

今日も今日とて優しい僕は竜二とネネちゃんの恋路を案じて陰ながら応援をする。

きっと僕は恋のジャービットなんだろう。キューピッドだっけ??


関東のプロ野球チーム、ジャーアンツのマスコットキャラクター【ジャービット】は暑い着ぐるみと言う危機的状況下で何度もチームを優勝に導いたジャーアンツの一員だ。何だったら一番長い在籍選手だよ。


きっと竜二とネネちゃんが結ばれた時、初めて影の立役者である僕に感謝をしてくるんだろう。それまでは全力で君たちを応援するつもりだよ!!個人的には関西の弱小チームトラーズの方が好きだけど。



それよかネネちゃんの知識ヤバいな。先生もビビって教科書落としちゃったし。


先生は「素晴らしいです!」と言うと、その話を理科に結び付ける。


「いま佐井寺さんが話してくれたことわざは大正解だ!でね類義語かなぁ?国語の先生じゃないからわかんないんだけど近い考えの言葉で理科と言うかその延長の物理ではバタフライエフェクトと言う言葉があります。」


エフェクトは効果だから、マジックバタフライでPP(サイコパワー)が回復する事かなぁ??

きついなぁって思った時、良い所にいるんだよね~!ちょうどPPが減って来た時にふらふら飛んでて。ドコドコ砂漠ではお世話になりましたっと。


なんで砂漠でPP消費したのかって?コンタクトを落とした奴がいたんだよ!!おっと授業中だった。


「バタフライ、ちょうちょね。ちょうちょが羽ばたくその僅かな変化。これを物理的な力学変化って言ったりするんだけど、それがあった時と、逆に無かった時にその後の状況や起こる事が大きく異なってしまう現象、それをバタフライエフェクトと言います。」


へ~そうなんだ。


「でもみんな考えるんだ、起こってしまった事はただの偶然でちょうちょの羽ばたき程度で大きく未来が変わるんだったらマジメに勉強してもしなくてもいいんじゃないか??って」


先生は中学2年生の事をしっかりわかってて僕らの葛藤なんてお見通しなんだろう。


突き詰めて考えたら自分以外の何らしかの影響で状況が大きく変わる、あずかり知らない所で良くなったり悪くなったりするんだったら、何にもしなくてもちょうちょが飛んでくるだけでテストが満点になるかもしれないし、隕石が来てテストが中止になるかもしれない、なんて考えるかも。僕だけかな。


「確かになぁ。」ごくごく小さな声で先生に答える。


「でもそんな考えになった時、一瞬で良いから僕の考えを思い出してほしい。考え直してほしいんだ。


【他人の行動で変わる未来より、自分の行動で未来を変えてみるのはどうだろうか?】


そこにまた新たなちょうちょがやって来て努力や研鑽を粉々に崩して行くかもしれない。

でもその次も変えられたら?


そしたらその次を君たち自分自身の力でまた上書きする。いや力なんて無くてもいい。意志だね。


ちょうちょは羽ばたき一つで未来を変えられるんだから、君たちだって意志だけで未来を変えられるはずだ。


中学2年生は世間で何かとよく使われる年代だけど、当の本人達、つまり今の君たちは実際には何の気にもして無い人の方が多いんじゃないかい??」


あ、僕はしっかり気にしてますしわずらってます。中二病。


なんで印象に残った授業だったかと言うと、きっと先生の言葉が心に残った事と、質問した奴がいたからだ。




「先生!意志だけで変えられない未来を知った時は、どうしたらいいですか?」


僕はそのちょうど前日、話したくは無かったけど情報共有の為、洗いざらい過去のブレイバーの話をしてしまった。


振り返る前に聞き慣れた声で誰だか分かったんだ。

しまった。そう僕は思った。話の内容を考えるべきだった。


先生に質問したのは今代の【ブレイバー】









竜二だったんだ。

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