第73話 修練期⑬ 皮の話

「ほんと、男子ってめんどくさいわよネ。ネネもそう思わない?」

「え?カガミ君、とうとう性別かえる程までに変態になちゃったの?」とネネちゃんが僕に話して


「変態は失礼よ!この時代性別なんてもう関係ないわ!そうだネネ!今度気分転換に、温泉でも行きましょう!」席に戻った竜二がぴくっとこっちに反応した。バカめ!


「絶対その流れだとカガミ君も女湯よね?」

「な訳ないじゃないのよ!私だってマナーは守るわ!部屋風呂よ!」


「げッ。余計イヤよ!カガミ君ちょっと後ろで手を組んで席に座ってて。ゴリ先に案件が発生したって言ってくる!」

僕はネネちゃんの立ち上がる腕を掴んで「待って待って!!絶対その案件の現場ここだよね?やめます!ふざけるのやめますからっ!!」



そんな事を話してふざけてたある日、昼ご飯が終わった昼休みに声をかけられた。

「カガミ!」

「なんだねヒカル君。」君の妹と話してはいけない法律なんてものは無いぞ!


「ちょっと教えて欲しいんだけど。」


僕はその時、竜二とヒカルの仲が最近少しは落ち着いた時だったので、このまま良くならないかなぁ~と思い、前回ヒカルが質問してきたのいつだっけ?と考えて、3人で外周を仲良く走ってる時の事を思い出していた。


「またバナナの話か?」

「いや、した事ないし。何それ?」

「バナナをこくって話したじゃないか!まてよ、ヒカル君こちらへ。」


ネネちゃんはなぜだか竜二を手招きして呼んでくれてた。僕も呼ぼうと思ってたけど、何でネネちゃんが呼ぶんだ??


竜二も「ハイハイ。」と言いながら寄って来た。


「ヒカル、先に僕の話をして悪いんだけど」と前置きをすると

「ああ。大した話じゃないからいいよ、どうぞ」と言われ遠慮なく話し始める。


「君たちに訂正が一件と、お知らせが一件あります。」アーク風に言ってやったぜ!


ネネちゃんは「あっち行く??」と言って

クラスの奴らに聞こえない様な部屋の隅を指差して、指示通り移動し4人での話が始まった。


竜二とヒカルが二人並んで後ろの間にネネちゃんが位置どる配置だ、さながらネネちゃんに指示された二人が僕をカツアゲする様なスタイル。これが狙いだったなんて!!ネネちゃんの反撃が今始まろうとしている!!

まぁそれはおいといて。


「どっちから聞きたい?」と聞くと竜二が

「じゃ、まずお知らせから。」

「OK!ゴリ先がハイドラのいや、レイドラのゼロと戦った可能性がある事をすっかり言うの忘れてた。」


「まじか!」

「え!いつよ!?」

「ホントに?いつだよ!?最近?」

ヒカルは驚かないね、君の疑問に答えてあげよう!

「いんや、8年くらい前、僕たちが5歳の時だ。場所は東京で一家襲撃事件が起きたんだけどゴリ先が警察で駆け付けた時に戦ったみたいで・・・。」


正直、ゴリ先へのイラつきが溜まってる男子三人だったから、僕はゴリ先が敗れた事は二人に弱みを握らせる事になるような、弱さを見せない先生の化けのが剥がれる様な気がして言いたくなかったんだけど、事実だし口にした。


「それで・・・ゴリ先が負けたんだ。」


竜二は「ホントか!?エーセブンより強いって事か?先行視覚は?ゴリ先に先行視覚を感じたか聞いてみたか?」



「いや、聞けないだろ?それに当時イチゴサイダーの持ってる強化感覚の存在なんて知らないんだからわかるはずないよ。アークに聞いても分からないって言われたし。」と僕


「そう、だよな。俺らがカガミを見すぎたからあの回避性能に違和感を感じるだけだよな?」

ヒカルに同意を求めた竜二。久しぶりに会話をしてくれた。


「そうだねあの予測的な動きは見れば見る程、違和感しかない。組み手の時のカガミの回避率は羨ましいくらいだよ。」

「や、僕だって結構喰らってるって言うか、あいつ僕には結構速度上げて殴って来るよ!」


そう!最近では組み手であちらからの攻撃が出だして来た。

油断して最初に腹を殴られたのは今年の油断オブザイヤー最優秀賞受賞のご存じ

僕だ!! これまでも、そしてこれからも受賞を狙っていきたいです!

パシャパシャ!カシャカシャ!←カメラを浴びて手を振る妄想。

お、トリップしてたよあぶねー。


「ま、そこは性能に応じて調整してくれてんだろ。悔しいけど」と竜二。

「そんな前に来てたんだ、えっと、あれ?? 8年前ってなんかあったような。」ヒカルの脳内整頓に付き合うか。


「そそ、遺伝子研究所の事件、この前、動画みたやつ。ゼロは東京の一家失踪事件の後、その足で父さんを殺しに来た可能性が高い。日時が近かったんだ。アーク調べ。」


「日本に来た目的はジルさんの襲撃や【ほろびのうた】っていうウィルス拡散じゃ無かった。って事?」

ネネちゃんの疑問に

「僕もそう思うんだ。あくまでついでだったんじゃないかな?しつこさが見当たらない。」



「ゴリ先はもしかしたらゼロに報復したいんじゃないか?」竜二はそう考えたが、一方ヒカルは


「一家失踪事件は解決したの?」と事件の内容を知りたがった。性格で意見がわかれるねー

竜二は誰かの身になって気持ちを考えられるし、ヒカルは物事を整理して冷静に考えられる。

僕は妄想ですべてを楽しく考えられる。いらね~!



「まだ見つかってないって。もう8年だから・・・。」

「そうか。辛かったんだろうなゴリ先。」

「そうだね。」


 弱みを握るなんて妄想は、化けの皮が剥がれるなんて想像は、全くの杞憂で二人はしっかり相手の気持ちを考えられるようになっていた。


疑った僕が一番、浅はかな考えだった。


いや、これはこの3ヵ月で自分たちが落ち込んだからこそ、イライラしたからこそ、友達と喧嘩したり言い合ったりしたからこそ、相手の気持ちも悔しさもわかるのかもしれないなって思った。


今このタイミングで言ってよかった。それにしても今日はやけに二人の機嫌がいい。

竜二なんてちょっと顔が赤い、ヒカルと仲が戻れそうで嬉しいのかな?


「で何だっけ?訂正ってのは?」


「バナナの話だけど、バナナをるんじゃなくて、【バナナの】だった」


「あ、その情報いらねーわ。」

「僕も。」


最近で一番の二人の笑顔が見れた僕は、バカにされても尚、一緒に笑いあえた嬉しさで気持ちがだんだんと晴れていったんだ。


「で、僕は何を教えたらいいの?」

ヒカルはやっと質問権を得た。

こんなに時間がかかったのは誰のせいなんだろうねぇ。


「あ、そうそう忘れそうだったよ。えっと、畳叩くとき何考えてんの?」

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