第53話 夏休期③ メカニズム
「初めまして私はアークです。あなたが天道カガミさんですね。記憶していた顔と幾分年齢が違いますが間違いなさそうです。」
ほんとに誰かと対話してるみたいだ。ついつい人間と同じ反応をしてしまう
「う、うん。よくしゃべるね」
「そうですね、話すのは嫌いじゃないです。お隣にみかんさんが居らっしゃいますね、この先第三者がいらっしゃる場合、私の起動はいかがなさいますか?」
「へ―!!そんなこともできるんだ!」
「はい!」
「じゃあ母さん以外の第三者がいる場合は起動しないって出来る??」
「かしこまりました。これからたくさんの事を
AIなのに凄いなぁ~
「あ、アークは母さんのアークさんと同一人物なんですか?」言ってる自分に何で敬語なんですか?って言いたいよ。
「初期のアークはほとんど同じ情報を持つコピーでしたが、カガミさんとこのような対話をした時点でカガミさん仕様のアークとなりますので情報の共有はしておりません。スタンドアローンタイプにプロテクトキーを入れますと情報は共有可能になります。その際、常時接続され情報がアップグレードされる設定です。」
へっ、へ~すごいなー。よくわからんけど。
母さんは「あ、私ははじめにメッセージがあったわよ。」
と言われて僕は
「ちなみに父さんからのメッセージとかないよねー?」
「あります。」
あるんかーい!
「それ教えてよ!」
「かしこまりました。ファイルナンバー2」
と言うと病院で起きた様にまた動画が再生された。
「カガミ。13歳の誕生日おめでとう。アークと会えたんだな。それが俺からの
や、まだ来てないんだけど。ハハハと笑って目が合った母さんは僕の肩に手を当てて
一緒になって動画をみた。
「このアークは、イチゴサイダー由来の薬剤から得た特別報奨金を丸々使ったんだよ。」
あ、ヒカルの薬の報奨金ね。全部って(笑)
父さんは笑顔の中に影を落とした様な声で話が始まった。
「父さんは遅かれ早かれこの世からいなくなる。ちゃんとした説明もなくって悪いけど。
だからこそ、ここからはお前のターンだ。
今できる事をきちんと考えて行動するんだ。それが未来につながる。
カガミが羊水検査とエコー検査で先天性心疾患を患う可能性が高くなった時、
母さんはおしっこがたくさん出ていた。」
僕はまた、(前にもあったけど、え?コレって何聞かされてんの??)ってなって、一方、当の本人
母さんは「京介君ちょっと恥ずかしいんだけど。」と言ってモジモジしながら動画に突っ込んでいた。
父さんの話が再開する
「hANP(ハンプ)って言う心臓の上のお部屋が関係して分泌されるホルモンがあるんだけど知ってるかな?まぁ難しいから知らなくていいんだけど、
そのhANP(ハンプ)直訳すると h(ヒト)ANP(心房性ナトリウムペプチド)は血管内の水分が多くなった時におしっこを出して体液を調整したりする効果を持つホルモンだ。薬としても販売されて臨床現場ではよく使われている。
それが母さんや、他のイチゴサイダーの母親から異常に分泌されることが、出生前検査で判明した。」
「そうなの??母さん?」
「ええ、妊娠中すっごいおしっこが出たから、その分すっごい水を飲まなくちゃいけなくって大変だったわ!namazonで天然水を定期購入しだしたのもそこからよ。つまり私の輝かしいサブスクリプタ―ストーリーが始まったきっかけって訳ね。」
「はぁ。」相変わらず何言ってるかわかんないね母さん。
僕らが話す間アークが再生調整をしてる??凄い賢いんだ。おっと父ちゃん待たせてごめんよ。
「その異常分泌こそが子どもたちの
なるほどな。と言う事はハイドラはこれを知った時点でセビエドの母体にそのホルモンを大量注入したのかもしれないなぁ。
結果、人工【T-SAD】の出来上がり。竜二と比べて劣化版ではあったけど。おそロシア帝国。
「そのせいかどうかはまだわからないけど、子供たちは3歳の時点で7人全員が心筋の心房中隔って言う場所で細胞の新陳代謝が異常だった。
通常僕たちの体は【細胞死】って言うプログラムが絶えず起きている。
細胞が生まれては死に、そして死んだ分だけまた生まれるって言うサイクルが常時起きてるんだ。
そのプログラムされた細胞死の正規ルートが【アポトーシス】って言われてる。
一方、プログラムされてない事故によって細胞が死ぬことを【ネクローシス】って言って
その為ネクローシスが起きた分だけ心筋が減って行き、心臓の上の部屋の隔壁が徐々に裂けていく。
これがT-SADの
そーいや父さんは証明担当じゃないって誰かが言ってたなぁ、僕は
「へ~~知らなかった!!母さんは知ってた??」と言うと
「メカニズムまでは知らなかったわ!」と返事を返して来た。
「メカニズムの想像がついた所で父さんは避けた部分の補修の仕方をジル・アティウスと共同研究し始めた。だが、今の所、全員の打開策は見つかっていない・・・。だが希望は捨ててないんだ。一つだけ考えがある。」
アークは最後に残したメッセージを再び再生してくれる。
「今そこに一緒にいれなくてごめんな。でも、見てるって事は生きてるって事だよな?
きっと希望が導いた結果って事だよな?
父さんはダメな奴だ。みかんちゃんとカガミ2人を幸せに出来なかった。このビデオを見てなくて、もう2人がいないんだったら、世界なんて
でももし2人とも生きてるなら、父さんの分まで生きてくれないか?」
「映像終了です。」
僕のアークは付け加えてこう言った。
「短い間ですが京介さんと一緒に過ごした時間がありましたので
私から思った言葉を付け加えさせてもらって良いですか?」
僕と母さんは顔を見合わせて(どういう意味だ??と)一瞬、戸惑ったが
「あ、どうぞ」と僕が言うとアークはこう言ったんだ。
「京介さん、あなたの勝ちですね。」
顔も見えないアークに表情がある気がした。きっとニヤリと笑っているだろう声のトーンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます