第45話 遭遇期⑩ 遭遇
じめじめした夏の粘着質な雨も昨晩には上がって今日は天気も良いし、絶好の肝試し
僕らはこの時、まさかあんな事態が起こるなんて考えてもいなかった。
今日のリーダーは竜二で理由はじゃんけんで負けたから。竜負けた瞬間、愕然としていた。弱いね竜二。
しかし切り替えも早く竜二は
「え~本日は~お日柄もよく、絶好の肝試し日和となりました。目的はカガミのお父さんの京介さんが仕事をしていた旧遺伝子研究所の職場見学です。
「僕の父さんはそこで亡くなった事になってるんですが、もし
「え!?そーなの!?」 とネネちゃんもナイスな反応をしてくれて
ヒカルは
「
「あ、おばけの事。カガミよく言うから覚えてて。」
「ふ~ん。」
リーダー竜二が
「何らしかの形でカガミのお父さんの痕跡を見つけられればそれもまた手がかかりとなるので持って帰れる情報は持って帰りましょう。但し、危険なことは無いようにしましょう。では出発ー!」
僕はさっき自販機で買った500mlのペットボトルのサイダーを一口飲んでおしりのポケットにねじ込み、ヒカルと喋りながら竜二&ネネちゃんの後ろを歩きだした。
「カガミのお父さんはそこで亡くなったことになってるって言ってたけど実際はどこで亡くなったんだ?」
とヒカル
「まさか!そこじゃないでしょ?そもそも爆発が起きたって事に
悠長に話していたがそんな事はその日
みんなが見知って定期健診をするアティウスメディカルセンターに着いてコッソリと病院を大回りして草むらを抜け、渡り廊下に近づきいて病院側からちょっとだけ見える【KEEP OUT】と書かれた黄色と黒のテープをひとりずつコッソリと跨いで侵入した時、みんなドキドキしてたけど顔がワクワクもしてた。
「病院側の人に見られないように柱の陰まで行こう!」ヒカルが指示をして忍者の気分で柱の陰まで行くと佐井寺兄妹のスマホが同時にピロリン♪と鳴ってみんなでビックリした。
旧市民病院とアティウスの渡り廊下は100mちかくはあって僕らは今やっと10mくらいの所にある柱の陰で集合してしゃがんで行き先を眺めていた。
渡り廊下は片側は3mくらい下に草や背の低い木々が生い茂って、谷側には10mくらい下に同じ木々が生えていた。
落ちたらヤバいな。
僕らの行き先を見てみると伸びてきた木で途中見にくくなっていて旧病院によって影が落ち、さらに鬱蒼さが増していた。まるで闇に向かっている様だった。
ネネちゃんが「メールお母さんからだ!ちょっと待って。えっと、私たちの市で不審者情報だって。」
「たまにあるよね、小学生が声をかけられたとか。」と僕が言うと竜二が「あるある。」と返事をして、また肝試し再開となった。
「渡り廊下、横幅は結構広いな。」とヒカルが言って
「搬送用にベッドが通れるくらいにしたんじゃないか?」と竜二が返事していた。
「なるほど、ネネ、ここら辺まで来て誰かの視線とか無い?」
「今の所は。お兄ちゃんは??」
「僕も今の所は。」
すごいね2人とも索敵能力高すぎる。
「次の柱まで行こう!」
竜二が言ってみんながついていく。遠くから見たらキレイに見えた渡り廊下も人が使っていないからやっぱり老朽化が見えて、進むにつれて草も伸び放題だった。
渡り廊下の真ん中に横たわるような荒々しく伸びていた木を超えてやっと病院の入口が見えた。さすがは廃病院。自動ドアらしいドアはガラスが蹴破られた様な感じで世紀末感が肝試しを盛り上げてくれてた。
僕が踏み出そうとした時、ヒカルが「待って!!」と言ってきた。ビクッとした一同にヒカルは、
「人の声がする。」と言うとネネちゃんが旧病院を凝視して
「小柄な人がいる。こっちへくる!!」
と警戒を露わにする。
僕は遠くから歩いてくるその人の顔が見えた、外人??
僕の
「みんな!ビジョン的には話し合いは出来そうだ。普通に出よう。いや、ちょっと待って! 僕とヒカルで出よう。念の為リンクラインを。不良とかだったらネネちゃんと竜二はすぐ逃げて!今は柱に隠れてるんだ!」
と言うと僕のリンクラインでヒカルと僕はリンクして、ヒカルに小声で
「けっこー怖がってますねーヒカルさん。ひしひしと伝わりますよ〜」と言うと
「カガミのおかげで楽になったよ。」と感謝された。
ちょっとヒカルのリンクでぼんやり見えるけど、表情はわかる。
そして、2人で顔を見合わせて頷いた後、何食わぬ顔を装って
「こんにちわー!」
と大きな声で出ていくと10mくらい離れたそこには僕らくらいの歳の外人の少年がいて警戒しているのか足を止めた。良かった、強そうな不良じゃなくって。
ヨーロッパ系の白人で暑いのに黒のパーカーを着てる。
暑いからこそのUVカットパーカーかなぁ?
まぁ、それは良いとして何でこんな所にいるんだ?お互い様だけど。
ヒカルは作り笑顔で
「どうしたのこんな所で?」
と大きな話声で聞いたら少年は訝しげな顔をして、返事を考えていた。
「ヒカルさんよー違うだろ、俺たちも怪しいじゃん!こんにちは。キャンユースパークジャパニーズ?ウィーアーハッピークリエイターズ」メチャクチャ下手な英語で聞くと、
その少年は「ハッピークリエイターズ?日本語はデキル。」と言ってきた。
竜二は僕らに聞こえるくらいの声で
「なんだよハッピークリエイターズって。」とキチンとツッこんでくれた。良くやったぞ!
ヒカルは小さい声で
「心音を聞く。リンクを解除するよ。」と言ってきた。
一瞬考えたけど、話の真偽を確かめる為か、と気づいて解除。
少年から
「子供だけか??大人はいないのか?」
と聞かれた。
10mの距離はお互い警戒しあって保たれたままだった。僕は大きな声で
「友達ときてまーす!こんな所でどうしたんですかー?」
と聞くと、向こうは
「お前たちこそ何をしてる?」
と警戒を露わにして聞いてきて、穏便路線から外れてしまわない様に
「僕達は肝試しですー。あ、肝試しって英語で何で言うの?」
「冒険でいいんじゃ無い?アドベンチャー。」とヒカル
「アドベンチャーで廃病院の探検だよ〜。」
と返して、少年は少し悩んでから、
「トラブルに合って困っている。」
と言ってきた。
ヒカルを見ると
「遠くて聞こえにくいけどたぶん嘘じゃ無い。」
「何を聞く?助ける?」
「内容を聞いてからだよ。カガミ、警戒は解くな。不法入国かもしれないし」
と小声で確かめ合う。
「何があったんだい?手助け出来ればするよー!」
と僕は営業スマイルで問いかけると、同じくらいのタイミングで僕のスマホにピロリン♪っとメールが来た
「母さんからだ。市内で不審者情報あり。気をつけて!だって。ネネちゃんと一緒だね。あ、追記、変わったマスクをして顔を隠してる。って」とヒカルに言うと
「あの子はマスクしてない。それより今はこっちだよ。カガミ。」と真剣に返された。
「手助け?助かるな、じゃあ伸縮する黒い棒を持った日本人が知り合いのスマホを取ったんだ。それしか通信手段が無い。出来るなら取り返してくれよ。」と軽く笑ったが、笑顔ではなくバカにしたような笑い方だった。
嫌な笑い方で文化の違いかとも思ったけど何だか「どうせお前らにはできないだろ。」って感じが込められてる気がした。
「その棒で嫌がらせをされているのかい?大丈夫だ僕たちは暴力なんかとは無縁のミドルスクールの友達4人で遊びに来ただけだ。」
ヒカルは相手の態度に驚くことはなく、淡々と質問し返した。手の内を見せてトラブルを回避しようとしてくれた。
そして、ネネちゃんと竜二を呼びこちらに来させようとした所で、ネネちゃんが出てこない事に気付く。
竜二はこっちにを出てきたが顔はやってきた方を向いたままだった。
「ネネ!どうしたんだ?」とヒカルが聞いた時、ネネちゃんは恐怖の顔を浮かべて出てきた。
「お兄ちゃんゴメンナサイ。あたしたち挟まれたわ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます