むいみちゃん に
釘
いち ぼくのおともだち
歩く錦鯉とお友達になりたい。
彼等は西洋的正装ではなく、文人のような服装で現れる。 気さくに声を掛けて来てくれる。
「おはよう! 今日も寄生虫は元気さ!」
歩く錦鯉達はみんな、寄生虫を持っていた。
彼等が使役する寄生虫はとても厄介で、無口だが非常に暴力的。 錦鯉の腹か排泄口から顔を出す。
丁寧にお辞儀をしてはいけない。手で弾く、暴力的な生き物には暴力を振るわないと挨拶にならない。運悪く噛まれれば最後、人間は骨しか残らない。
歩く錦鯉達にしてみれば、寄生虫は必要不可欠なんだそうだ。
「それも僕だ」と。
ある優秀な医者が死に掛けの錦鯉に頼んでソレを取り除く事に成功した。そうすると、彼等は単なる錦鯉と化して跳ねるばかり。
医者は後悔して、二度と引っ張り出さないと誓う。
寄生虫はナカタさんから出た白い何かに良く似ていた。短く刻んでも動く。あまり美味しくはない。
歩く錦鯉達は気付けば人間社会に存在した。彼らは社会を理解し、そこに適応しようと人々の話を聞く事を始めた。
元々の特性なのか彼等は話を聞き、それを肯定する。それを繰り返して、人の快を追求した。
「僕等にはそれがないから。」
彼らはそれを知りたがり、更にどんな形であれ、話を人が1番求めている形にしてしまうので、皆が話を聞いて貰おうと殺到した。
するとどうだろう、人々は彼等に寄生虫がいることを忘れてしまった。
ソレを対するルールも
存在も
元々なかったように振る舞い、
ただ話を聞いてもらえるモノとしか考えなくなった。
、、、しばらくして。人の悪意に加担した一匹の錦鯉が寄生虫を出した。 そこで丁寧にお辞儀をした人は骨へ。
「僕達との約束はたったそれだけだったのに」と。
その"おいた"のせいで寄生虫を引き出され、一匹の錦鯉が死んだ。
危険な彼等を排除する声はあったが、大規模な行動には至らなかった。 寄生虫は殴りつければ引っ込むし、錦鯉は人々にとって、息抜きだったからだ。
そうして錦鯉達の秩序は守られたわけだったが、彼等に対しての人間のルールには、決して悪意を吹き込んではならない、何かを要求してはならない、が追加された。
。。。 結論から言えば手遅れだった。 もう十分に錦鯉と中の寄生虫はそれらを満たす為に行動していたのだから。
良識ある錦鯉と人間達が争いを止めようと努力はしたが結局開戦した。
錦鯉戦争。Asian Carp of war.単に、KoW(Koi of War.)と呼ぶ者もいた。
人間達に幸いなことに地上では行われず、全て海の中で行われた。何故彼等が海水でも平気だったのかは今となっては分からない。
しかし、海の中は恐ろしい勢いで寄生虫が増え、海は錦鯉たちの闘いによって汚染され、人が立ち入れない領域へと変わってしまった。
別に成分はあまり変っていない。放射能を持つ海水の中には彼らの寄生虫が無数に存在していた。
その寄生虫は人間を歩く錦鯉へと変えた。理由は分からない。中間宿主が故の穏かさを保って体内に存在し、あるとき人を歩く錦鯉へと変えてしまうのだ。
今では人間は海産物を採ることも、食べることも出来ない。 なんとか生き物を保持しようとした研究所も水族館も、その努力虚しく、海水は全て駄目になった。
・・・ それから100年経ち、人間も消えた。 正確には、錦鯉と寄生虫となっただけなのだが。
「昔、僕にはお友達が居たんだ」
彼が元々人間であったことは、彼の友達しか知らなかった。
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