49.

「…………これで満足?」


 結陽ゆうひは振り向かず、背後にいる人にそう呼びかけた。


「……ようこそ、コウセイジャーへ」


 曲がり角の影から現れたのは透子とうこだった。


「合格ってことかな。嬉しいよ」

「確かに戦力は申し分ない。それに……結陽は覚悟を示した。だったら私はそれに敬意を払う」

「だってさ。これで仲間だね」


 まるで他人事のように私に笑いかける。

 ……どういうこと? ようこそコウセイジャーって。


「それで私は何色になるなのかな? ピンクとレッドは見た。あとは何色が埋まっているの?」

「レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ピンク。君が就ける色は……ブラックかな」

「ブラックね……。ふふふ、私にぴったりな色じゃないか。透子さんが私に何を期待しているか分かった気がするよ。…………なに、その期待には応えるさ。だから安心して任せてくれ」

「透子? 結陽? 何を、言ってるの……?」

「言った通りだよ。春、今日から結陽が……いや、結陽と結月がコウセイジャーブラックだ」


 コウセイジャーは五人。ずっとそうだった。急に六人に増えるなんて……!


「それ、大丈夫なの? 支部の人とか、上の人が文句言わない?」

「それは大丈夫。さっきの戦いは彼らも見ていたから」


 ほら、とスマホを見せられる。……そこには結陽の戦闘力を絶賛するメッセージたち。嫌な気分になる。押し付けるようにして透子にスマホを返した。


「どうしたの、君は嬉しくないの? 私が……結月が同じコウセイジャーになって」

「嬉しくは……ないかもしれない。だってこれから一緒に戦うってことは危険な目に合うってことだよ? 結陽は強いかもしれないけど、それでも私は……嫌だな」


 それが本音だった。いくら強くても大好きな人が危険を冒すのは耐えられない。さっきの戦いだって棍棒を喉元に当てられた時は気が気じゃなかった。


「それは……私も同じ。君が傷つくのは見たくないな。結月も……きっとそう望んでいる」

「……」


 お互い様だ。どうやら結陽も譲る気はないらしい。


「でも——」

「おい! レッドォ! 撤収すんぞ!」


 言いかけたが、私たちを迎えに来たイエローによって遮られてしまった。


「イエロー、久しぶり。助けに来てくれてありがとう」

「仲間だからな! 気にすんな!」

「イエロー、ピンクの容体は?」

「今、救護チームに任せてきたところっす。ろっ骨が折れてるって」

「そう……」

「しばらく休養が必要らしいっす。それまでは四人で——」


 イエローは言いかけた口を閉じた。ブラック……結陽を見て怪訝な顔をする。


「透子さん、その人は……?」

「コウセイジャーの新メンバー。彼女をブラックとして迎え入れるからよろしく」

「は⁉」


 開いた口が塞がらない。イエローはぽかんとしたまま固まっている。


「……信用できるんすか?」

「それは大丈夫。そこに倒れている結社の幹部を倒したのは結陽だよ」

「初めまして。急にコウセイジャーに入るなんて信用出来ないかもしれないが……それは追々態度で示していこうと思うよ。だからどうか、ブラックと名乗ることを許してほしい」

「…………了解っす。よろしく」


 イエローは差し出された手をまじまじと見つめると、納得したように握り返した。


「他のメンバーには後で紹介するよ。さ、早くここを出よう」

「うっす」


 透子、イエローに続き、今度こそ出口を目指す。もう私たちを遮る者は誰もいない。

 このアジトでの戦いは、私たちの勝利だ。

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