電鬼と踊り子お兄さん、復讐珍道中

遊星ドナドナ

第一話 流れの踊り子

 中央都市アマルーナ、ある酒場……そこでは客らが酒を飲み合い、小料理を片手にして、皆談笑していた。それはよくある酒場らしい風景であった。

「いやぁ、まさかこの町で彼にお目にかかれるとは、私の人生も捨てたものではありませんね」

「私はもう二十回は見ましたよ、一度見るともはや他の者では満足できませんな」

 彼らはどうやら何かの催しを待ち、それについて話しているようだった。


 突如として照明が薄暗くなった。催しの始まりの合図である。どこかエキゾチックな雰囲気の音楽が流れだす。それに合わせてステージに件の踊り子が踊り出た。


 その踊り子の体つきは、美しく柔軟な女体を連想させた。しかし、それと同時に男体特有の剛性の筋肉美も保っている。そして美少女の如く可愛らしく、かつ、その中にトゲも感じさせる表情が、鋭利で端正な好青年の顔に収まっていた。

 その一見すると相反しているようにも思える二つの要素によって、まるでシュールレアリズム作品のように現実とかけ離れた芸術性が、彼から生みだされる。

 露出の多い衣装をまといながらも、ストリップなどのような下品さや妖艶さを連想させる隙すら与えない。

 観客は皆、夢の世界へと誘われるような感覚を味わっていた。


 舞いが終わった瞬間、踊り子に対して観客から男女問わない黄色い悲鳴が寄せられ、果てには硬貨や手紙を投げたり、失神したりする客までいた。


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 踊り子が自身の演目を終えて、楽屋で一人の青年に戻っていたところへ、彼にビール腹の中年風の男が声をかけた。


「いやぁー今日の演技も素晴らしかったよ、ロナ君」

「どうも」

 ロナと呼ばれた男は、踊り場での様子とは変わって、ニコリともせずに答えた。


「ところでだがねぇ…本当に引き受けてくれるのかい?」

 中年風男性は念を押すように確認した。

「ええ、もちろんです、私も行先が同じだったので」

「助かるよ、予算は好きに使ってくれて構わないからね」

「ありがとうございます。ご期待に沿えるよう努力します」

 ロナはそう言うと、店の裏口から出て行った。


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 アマルーナの西部、ここには「冒険者組合」とよばれる組織の演習場がある。そこに一機の機械仕掛けの兵士、通称「機兵きへい」が停められていた。

 その蒼い機兵のコクピットの中で、大柄な女性が一人、退屈そうにをしつつ、寝転んでいる。

 その頭から生えた黄金色の角を、時折手遊びに撫でながら。



 


 

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