このオモイ、とどきますか……

神稲 沙都琉

第1話 小学校時代

生物学的に女性。

遺伝学的にも女性。

戸籍上も女性。


間違いなく女性である、ボク。

もちろん、外見上も疑いようがなく女性だ。


でも、本当に女性なのだろうか?

どこを基準にして『女性』なんだろう。


…………


「ソラ、サッカーやるか?」

昼休み、隣のクラスのタイチが誘いにくる。続けてソウタ、カケルと集まってくる。

「やる、やるけど待って」

パンを口にねじ込み牛乳で流しこみながら大急ぎで食器を片付ける。


「ばあちゃんに言いつけるぞ、ソラ」

「そっちこそ、残したの父ちゃんに言いつけるからね」

幼なじみのトモが笑いながら行儀の悪いのを指摘する。お互い家は隣で生まれも5分違いという不思議。

「今日もやらない?」

「自分はこっちが忙しいです」

ノートを机からだしてくる。

サッカーに誘うがのってきたことはない。

いつも静かにノートに何か書いている。

「早く行けば。待ってるよ、みんな」


………………


放課後。サッカーとバスケの試合に助っ人として出てるボクを律儀に待っていてくれているトモと家路につく。

「先に帰ってよかったのに」

「綺麗な状態でお届けするのが自分の仕事ですから」

「ボクは荷物かいっ!」

「狂犬」

「っ!」

1度、帰宅途中で中学生にからまれて大喧嘩になったことがあった。確か小3?1対5で、相手を完全にねじ伏せた。

1人で頑張ったのに家に帰ってみたら大目玉だった。


「女の子はお淑やかに、だろ。ボクには無理だって」

「だからストッパーで自分がいる」

自分がいるときは思いっきり暴れちゃえ。

トモはニヤっと笑って言った。


他愛もない話が続く。もうすぐ家、というところでトモがいきなり聞いてきた。


「中学になったら制服着るの?」


ボクらが進学予定の中学では普通の学校でいう制服か、動きやすい運動用制服かを選ぶことができる。運動用といってもいわゆるジャージみたいなダサいものではない。すごくオシャレでカッコいいのだ。

普通の制服は女子はセーラー服風、男子はブレザータイプだ。


「スカート履きたくないな」

ボクはそう返した。トモが更に言う。

「女子には人気だよ」

制服はすごく可愛くて女子たちの憧れだった。

「女子には、ね。あんなのボクは嫌だ」

ボクはきっぱりと答えた。


トモは意味有り気に笑い、また明日、と手を振って家の中へ消えた。


せっかく、忘れかけていたのに。

小さくため息をついて家に入る。


どうやって、親たちを説得したらいいんだろう。たかが制服だけで悩まされる自分にイラだちを覚える。


そもそも、自分ってなんだろう?











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