第13話本気なんだよ…この気持ち

彼に恋人が居るのかを訊ねて、二週間が経過した。

通学鞄に突っ込まれた長財布の奥に隠れる物をどう処分しょうひしようか、迷いに迷っている。

数日前にクラスメイトの女子から手渡された紙切れを誘う口実に出来たら、とそんなことをぐるぐると考える。

紙切れ、とは映画のペアチケットだ。

譲ってきた当人かのじょは恋人を誘おうとしていたらしいが、手元に届いた時には恋人と破局して使い道を失ったからと、私が譲渡された。

長机を挟んだロッカーの前で帰り支度の真っ最中である久代の背中と映画のペアチケットを交互に見ながら、決めかねる私だった。

「あの、久代先輩……今週末のどちらか、空いてたり……しません、か?」

「えっどうしたの……橘さん?それに先輩って……」

「どっどうなんですかっ久代先輩?」

彼の返答を聞きたくて、動揺を隠せずに急かしてしまった。

「ああっと……二日とも空いてます」

振り向いた彼が右手で後頭部を掻いて返答した。

「宜しかったら私、と……映画、を観に行き……っません、か?」


「えっ……え、映画、ですか?俺……ですか?誰かと……間違ってませんか、誘う相手……?」

「久代さんですぅ……久代さんをっ誘……ってます、私ぃ……」

やっぱりからかわれてると思われてる……

真面目なのに、本気マジなのに……どうして、貴方くしろくんに伝わらないの。



私の気持ち、受け取ってよッばか……


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