第8話後輩の勘違い

「えっ?でも……」

俺の返答に納得してない困惑した表情を浮かべる後輩の女子——宇佐見文乃うさみあやの

黒髪のミディアムで落ち着いた印象を感じさせる彼女は、身長が160cmもなく見上げる形だ。

「ほんとに付き合ってないよ、佳澄とは。ただの腐れ縁なだけだよ、あいつは」

改めて返答する俺。

「そうでしたか……勘違いしてすみませんでした、久代先輩」

「あぁ、うん……じゃあ」

俺は片手をあげ、別れを告げて教室へと足を踏み出し、歩き出す。


俺の足音だけが廊下に響いていた。


教室に足を踏み入れると、教卓を囲み雑談していた男女らの一人、浅原陽菜美に挨拶をされる。

「はよー、久代ぉ〜!ぷふっ……その顔、また佳澄にやられたんだぁー。ウケるんだけど」

「浅原さん、おはよう。笑うなんて酷くない?」

「いやいやぁ〜面白いじゃれあいを笑わずにいろなんて、酷すぎだってぇ〜!」

「酷って……」


教卓を囲んでいた群れから抜けた彼女が、席についた俺に駆け寄る。

「逃げなくてもいいじゃん、久代……」

「逃げては、ないよ……」

「……?どうすれば、晴れる?久代……」

「そうじゃ……」

「久代にとって……こういうのは駄目、だった?」

「違っ……」

先ほどとは打ってかわり、低い声音の彼女。


浅原かのじょの瞳には、俺がそう映っているのか……



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