第12話……エピソード7……東アジア交易
海南島から真珠母、西安から陜西産の麝香が運ばれてきた。各地から砂糖も運ばれてきた。塩は何時も不足している。白生糸と薬用
この南京にはあらゆる綿織物があり、また富裕な商人が居る。北京から南京までは川を通って1ヶ月の行程である。広州港の北には別の港があり、福建と呼ばれる。陸路で3日、海路で一昼夜の行程である。
広州と福建が明の2大貿易港である。広州には広州市舶司、福建には福建堤挙市舶司が置かれ、広州と同じく貿易港として繁栄した。
1387年10月中旬木曜日午前10時……広州
ガーリブは側室たち10名を全員引き連れ、妹たち夫婦2組も同行させ、マラッカへと出発した。
インド洋海上ルートを用いるとマラッカまでは約1ヶ月掛かる。
1387年11月中旬木曜日午前10時……マラッカ港
マラッカに到着し、先ず交易を行った。
マラッカでは
「大量の銅銭、大量の茶、太湖からの良質な湖糸、白生糸、生糸、綿糸、綿花、綿織物、
の一部を売り、他の地域からマラッカに集まって来た物を購入した。
香料諸島からは
「
を購入した。
カンバヤからは
「多くの種類の多量の綿織物、粗質の衣服、種子、すなわち胡椒草「実を調味料とする」、ひめうぃきょう、アメオ、ころは、蕪のような根「プショ」、ラックのような土「カショ」、蘇合香およびその他の品物」
を購入した。その他の品物の中にはセイロン産の肉桂も入っていた。
ジャワからは
「沈香、檀香、
を購入した。
また、ジャワのグルシク産の粗末な織物やカスと呼ばれる貨幣「中国から輸出された粗質の私鋳銭」を入手し、スンバワ島産のモルッカ諸島向けに生産される織物、米、その他の食物を購入した。
インドシナ、フィリピン、ボルネオからは
「象牙、アンバー香、蜜蝋、
を購入した。
マラッカ、マライ、スマトラからは
「銀、沈香、白檀、竹、蘇芳木、金、樟脳、鼈甲、生薬、胡椒、檀香、蜜蝋、森林資源」
を購入した。
明の広州や福建で売却する
「大量の胡椒、丁子、肉豆蔲、肉豆蔲花、肉桂その他の香辛料、香料など」
は倉庫に保管した。
要するにジャワのグルシク産の粗末な織物やカスと呼ばれる貨幣「中国から輸出された粗質の私鋳銭」と、スンバワ島産のモルッカ諸島向けに生産される織物、米、その他の食物しか積んでいかなかったのである。
金、銀、宝石、香料などは連れて来た10名の側室たちに好きなだけ持って行かせた。一番人気は麝香とアンバー香「竜涎香」、鼈甲、白檀などであった。麝香はジャコウジカから陜西省で採れた物だが良質で量が少ない。竜涎香も貴重な物で奪い合いする始末であった。
来年早々にモルッカ諸島に行くが、それまで時間がたっぷりあるので側室たちとあちこち見物あるいは各地を渡航し、楽しんだ。2人の公主寧国公主23歳、安慶公主19歳たちや
側室たち10人の間で自ずと仲良しグループが出来上がっていた。
インド娘3人クリシュナ28歳、アンペリーナ35歳、メディル26歳のグループが第1グループである。すでに男、女、女と出産していた。クリフ男0歳、エイミー女0歳、キャロリン女0歳と名付けた。女官5名、女奴隷10名をそれぞれ付けている。当座の家計資金として大銀錠100個をそれぞれ渡した。
メリンパ・チャン28歳、
バーバラ女0歳、ベティ女0歳、ベン男0歳、ボブ男0歳と名付けた。女官5名、女奴隷10名をそれぞれ付けている。当座の家計資金として大銀錠100個をそれぞれ渡した。
2人の公主寧国公主23歳、安慶公主19歳たちと
1387年11月下旬日曜日午後7時……マラッカ王宮
今日は遥々カイロから馬皇后と
多量の黄金、銀、
これとは別にエチオピアで採れるコーヒー……注①の木の種子とコーヒーの実を1隻の船一杯に積んで持って来たのである。
ガーリブや寧国公主23歳、安慶公主19歳たちと
馬皇后が焙煎機なる物を船から取り出し、コーヒーの実を焙煎すると、辺りに得も言われぬコーヒーの良い香りが充満してガーリブは目がクラクラした。
馬皇后はガーリブに砂糖を持ってこさせ、後宮の者全員にコーヒーを味合わせた。全員この飲料を気に入り、午後3時からの30分はコーヒーを飲む時間と決めた。
ガーリブはこれは大変な名産品になると直感し、焙煎機を沢山作らせた。コーヒーの種子はとりあえず「スマトラ島、ジャワ島」に植えさせる事を決めた。他には南米も候補に上がる。
色々算段しているとき、珍しくガーリブの母親ライサと叔父のアドリアンがデリーから連れ立ってやって来た。
叔父が来るのはよっぽど重要なときだ。
ガーリブが身構えたとき、アドリアンは娘たち2人の婚礼祝いにわざわざ訪れたそうだ。なるほど2人の妹イーナースとガーダーは2人の間に出来た娘だったな。
アドリアンとライサは自分たちも一緒にモルッカ諸島見物に行くと言い出してついでに
マラッカからパンダ、モルッカ諸島に向かう航路としては、カリマンタンの北端を経由してモルッカ諸島に達する航路があった。パンダに行かず、パンダからモルッカ諸島に前もって肉豆蔲や肉豆蔲花を持ってきてもらってストックしておくのである。
何故こんな事をするかというと、季節風のせいで、モルッカ諸島→パンダ諸島へは1月しか行けず、パンダ諸島→モルッカ諸島へは5月しか行けないのである。パンダに行かないので、時間が大幅に短縮される。
1387年12月上旬日曜日朝5時……マラッカ港
マラッカ港を出発したガーリブたちはカリマンタン島のブルネイを経由してハルマヘラ島のジャイロロ「ロロダ」港に到着した。ここにも商館と砦を置いていたので、砦に入り一日宿泊した。
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★ハルマヘラ島
ハルマヘラ島はモルッカ諸島の東側にある大きな島で、その北側にあるモロタイ島とともに食料の生産が盛んである。以前この島はすべて異教徒のものであった。彼らは盗みを働くためか、あるいは取引のためにモルッカ諸島を訪れた。この島の主要な港は、テルナテ島から北北東に進んだところにあるロロダである。
バンダ諸島がこの海域の南の方の貿易の中心であったのに対して、モルッカ諸島は北の方の貿易の中心であった。
ハルマヘラ島とモロタイ島2つの島の住民は、様々な食料品や丁子をつめる袋テルナテなどの島々に運んで交易を行っていた。
「東方諸国記」によると、モルッカ諸島の貿易圏はスラウェシ島のトゥオリ湾、バンガイ諸島、それにホロ島を含む広大な海域で、それらの各地からは主として食料品がもたらされた。
バンガイ諸島からは大量の鉄と鉄製の斧、大包丁、剣、小刀がくる。スラウェシの住民はモルッカ諸島にやって来て「これらの島々に産する丁子や、カンバヤ産の織物、それに錫を入手する。交換に長く、幅の広い片刃の太刀、その他の鉄製品、相当量の黄金を持って来る」
また、他の島々からは黄金、小さな象牙、独特の粗末な織物、モロタイ島からはオウム、セラム島からは白いオウムが来る。
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ここの商館とも取引し、
「ジャワのグルシク産の粗末な織物やカスと呼ばれる貨幣「中国から輸出された粗質の私鋳銭」、スンバワ島産のモルッカ諸島向けに生産される織物、米、その他の食物」
を売り、
「
を購入した。
★アドルフが占領する前のモルッカ諸島
モルッカ諸島の主要な島々は北から順にテルテナ、ティドレ、ムティル、マチアン、バチャンの5つである。この他にも幾つかの小さな島々がある。モルッカ諸島は丁子の原産地で、当時は世界で唯一の丁子の産地であった。
住民はマレー系である。一番北のテルテナ島が最も重要な島で典型的な火山島である。この島では硫黄が採れ、2,3隻のナウが碇泊出来る港があり、この港には立派な集落がある。この集落はテルテナ王国の首都ガンマランマである。島の西南に位置していた。住民の数は約2,000人で、うち約200人がイスラム教徒である。その他に若干の外国人が住んでいる。
テルナテ島をはじめとして、幾つかの島々には王国があった。テルナテの王はティドレの王とは絶えず戦争をしている。彼は100隻のプラウを持っている。
ティドレ島はテルナテ島のすぐ南にあり、一番近いところでは1キロそこそこしか離れていない。この島も火山島で、ナウが碇泊できる港がない。
住民の数は約2,000人で、うち約200人がイスラム教徒である。ここには80隻のプラウがある。
アドルフはテルナテ島、ティドレ島に砦と商館を築かせ、守備兵500名を置き、マレ、ムティル、マチアンにも砦を築かせ守備兵500名を置いた。
バチャン諸島の西にあるカシロタ島とその南のオビ島にも砦を築かせ守備兵500名を置いた。カシロタ島には商館も置いた。カシロタ島では丁子が採れるからである。
南のバンダ諸島の住民は航海術に長けており、季節風が逆向きの時はカヌーを使ってカシロタ島まで肉豆蔲や肉豆蔲花を売りに来るのである。
ガーリブたちは順にテルナテ、ティドレ、カシロタの商館を訪れ、ロロダの商館と同様の取引をした。
カリマンタン島経由で全員一緒にマラッカに寄港した。3月になっていた。
今回はここまでにいたしましょう。
次回をお楽しみに。
用語については第12話……エピソード6……各地の反乱始末の参考資料を御覧ください。
注① ……コーヒー
生育には熱帯地方のサバナ気候や熱帯モンスーン気候のような雨季と乾季、または熱帯雨林気候の山岳地帯など昼夜で寒暖差が大きい気候が適し、多雨も好む。一方、冬霜など寒さには弱い。 土壌は有機質に富む肥沃土、火山性土壌を好み、火山帯や高地が適し、特にブラジルのテラローシャは最適とされる。
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