第10話……エピソード9……サカテカス銀山

1378年4月上旬日曜日朝7時……サカテカス銀山

 アドルフは20歳になっていた。本国からは30万名の応援部隊が来たが3方向に派遣され、アドルフのところにはカリーナを筆頭に、同母姉アリサ25歳夫婦「夫ヴィクトル25歳」と同母姉ハティジェ24歳夫婦「夫ゲルマン24歳」以下一族郎党が10万名の軍隊と2万名の工兵隊を引き連れて駆けつけた。

 アリサは医者兼看護婦、ハティジェは薬剤師である。カリーナは言わずと知れた交易の第一人者で外交の強者つわものでもある。ヴィクトル、ゲルマンは諜報の達人である。

 ヴィクトル、ゲルマンにそれぞれ5万名の兵を率いさせ、ヴィクトルは西のタラスカ王国……注①をゲルマンには南の方面を攻略するよう命令した。ヴィクトルにはカリーナと通訳のマリンチェが付き添った。敵を懐柔するためである。

 ヴィクトルはカリーナに敵の族長のタリアクリ2世を懐柔させ、大西洋を横断してきた救世主だと信じ込ませた。救世主と思い込んでいる族長を軟禁し、彼の口からタラスカ王国は以後ヴィクトルに従うべしと言わせた。アドルフのもとに帰還したヴィクトルはタラスカ王国の軍政長官に任命され首都のツィンツンツァンに派遣され、北方攻略を命じられた。当然族長以下の男系子孫は処刑し、妻妾たちはアドルフの妾となった。ゲルマンも南のオアハカ一帯を武力で占領してアドルフの元に帰還した。ゲルマンはオアハカ以南の軍政長官に任命され、南方攻略を命じられた。

 アドルフ自身は5万の軍隊と2万名の工兵隊を使って拠点建設と鉱山の発掘にあたった。このサカテカス銀山は元々ライフル銃やカービン銃の弾丸製作に使用する鉛を得るためにも必要としたが、鉛だけでなく銀もよく採れたのだ。

 工兵隊は銀の抽出に際してアマルガム法……注②を用いた。鉛も銀もよく採れた。また工兵隊には先住民を指導して農業の生産に当たらせた。アドルフの占領地は緯度としては熱帯地域だが、高地であるため温暖で湿潤である。メキシコシティの北西に位置するバヒオ地域……注③には、肥沃な農地が広がる一方で中山間地もあり、複雑な地形と多様な農業形態を有する。先住民には畜産、さとうきび、果実、アボカドの生産を行わせた。

今回は目的も果たしたのでここで終わりましょう。次回をお楽しみに。

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注① ……タラスカ王国……ウィキペディアによると

 タラスカ王国とは、今日のメキシコのミチョアカン州全域およびハリスコ州とグアナフアト州の一部にあたる地域を領有した、先コロンブス期の国家であり、メソアメリカにおいて2番目の大国だった。

 14世紀初めに建国され、ミチョアカンと呼ばれた。ミチョアカンというのはナワトル語でのタラスカ王国の名前で、「魚の多い場所」を意味する。タラスカ王国で話されていた言語であるプレペチャ語ではIréchecua Tzintzuntzániと呼ばれ、「ツィンツンツァン王国」という意味になる。

  タラスカ王国の民の多くはプレペチャ族に属していたが、その他にナワ族、オトミ族、マトラツィンカ族、チチメカ族がいた。これらの民族集団は次第に多数民族であるプレペチャ族に同化されていった。

 タラスカ王国は貢納システムによって構成され、カソンシとよばれる支配者のもと次第に中央集権化していった。タラスカ王国の首都はミチョアカン州のパツクアロ湖の畔にあるツィンツンツァンである。

 タラスカ王国はテパネカ帝国と同時期に存在し、敵国として多くの戦争を行った。タラスカ王国は、メソアメリカ最初の真の領域国家として拡大したテパネカとの国境の防備を固め、その北西への拡大を妨げた。

注② ……アマルガム法……ウィキペディアによると

 金や銀を含む鉱石から水銀を利用して金や銀を取り出す製錬法です。 金や銀は水銀に溶ける性質があり、水銀に金や銀が溶け込んだものをアマルガム (amalgam)といい、そのアマルガムを加熱し水銀を蒸発させると沸点の高い金は後に残ります。 鉱石を粉砕し、金や銀のを含んだ粒子と岩石を分離し、水銀を加えアマルガムを作り、不純物を濾過、洗浄した後、水銀を加熱蒸発させて除去すると後に金や銀が残ります。 水銀は密閉した容器内で蒸発させ、蒸発した水銀は再利用されます。

注③ ……バヒオ地域……ウィキペディアによると

 バヒオ(Bajio)とは盆地を意味し、メキシコ中部にあるメキシコ高原の盆地地域一帯がバヒオ地区と呼ばれます。

標高は1500〜1800m、肥沃な土壌と温暖な気候で適度な降水に恵まれた、メキシコの主要な農業地帯です。

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