第9話……エピソード20……セウタ攻撃

1374年4月下旬日曜日昼12時……カイロ宮殿

 妊娠していたスサンナがアドルフの息子を出産した。アドルフはアラブ名のカイスと名付けた。スサンナをアドルフのハーレムの女主人に任命した。正式な皇后になったのである。ハーレムには現在誰もいない。

 戦後処理を終えてアドリアンはカザンに帰っていった。その時アドルフに命令していった。

アドリアン「セウタ、ジブラルタル、アルヘシラス攻略を終えたら一度イスタンブールに帰還せよ。ハーレム制度を確立するのだ。キリスト教徒の女奴隷をハーレムの住民とせよ。言っておくがビアンカはやらんぞ。その代わりに兄たちを3人派遣してやる」と言い残した。やむを得ずアドルフは兄の言葉に従った。

 入れ替わりに兄たちケイマン、クタイバ、スハイルが30万名の軍隊を引き連れてカイロにやってきた。

息子の出産と兄たちの歓迎を兼ねてカイロ宮殿で大宴会を行った。兄たちの話を聞くとアドリアンはこの際スペイン王朝を滅ぼしてしまいたいらしい。

 確かにスペインとポルトガル及びイギリスはこのところ力を付けてきているからな。宗教的な対立もあるだろう。

 セウタ、ジブラルタル、アルヘシラス攻略は簡単にできるが、守り抜くのが大変だ。周りは敵ばかりだ。

 ジブラルタル海峡を守り抜けば確かに計り知れぬメリットが有る。ジェノバ、ベネティアの牽制にもなるからな。アドルフはカイロをケイマンに任せ、セウタでしばらく滞在することにした。イスタンブールでハーレム生活なんてとてもやっていられない。

 ガレオン船がまた300艘出来上がったそうなのでアレキサンドリアまで全員で出掛けた。

 600艘、1艘400人乗れるので、24万名乗せてメリリャ、セウタ、アルヘシラス、ジブラルタルの順に砲撃した。敵の軍艦を全て沈め、港を占領した。それぞれ5万名の守備兵を置いてアレキサンドリアに寄港した。

1374年6月下旬日曜日昼12時……アレキサンドリア港

 新たに24万名の兵隊を乗せて600艘のガレオン船で出発し、メリリャ、セウタ、アルヘシラス、ジブラルタルに向かった。

カイロにはケイマン次兄と残りの兵隊12万名を駐屯させた。

 メリリャにはカイロの軍人アサド・フサイン32歳と10万名の兵隊を置いた。

 アルヘシラス、ジブラルタルには、それぞれ10万名の兵隊とクタイバ、スハイルを置いた。

 セウタには残りの兵隊と600艘のガレオン船全てとアドルフ自身が駐屯した。

1374年8月下旬日曜日朝7時……セウタ港

 セウタには造船所がある。ガレオン船を追加で300艘新造した。金塊150キロ支払った。1艘300万円である。

 アドリアンからイスタンブールに帰還せよと矢の催促である。

セウタにはケマツ……スネジャーナの長男、嫁ちはる夫妻が派遣されてきた。兵隊10万人を連れてきたので、入れ替えにガレオン船300艘、兵隊10万名を引き連れてイスタンブールに戻った。

 イスタンブールのお話はまた次回といたしましょう。前回に引き続きワクフのお話をします。

★都市の施設とワクフ

 ワクフは「所有権の停止」を意味する。ワクフの設定者ワーキフは私財をなげうち、それが「神の財産」であると宣言し、そこからの収益「賃貸収入」を用いて、イスラム法にかなった形で、「永久に」慈善をおこなう。

 イスラムの喜捨には、五行の一つで義務であるザカートと、任意の喜捨であるサダカがあるが、ワクフは後者の一形態とされ、「サダカ・ジャーリヤ」……永続的サダカとも表現される。

 実際には長続きしない場合もあり、ワクフの解消や交換も可能だったが、設定者は自らの死後、現世「ドウンヤー」の終わりまで寄進による慈善が続くことを願い、最後の審判で秤にかけられる善行を増やし続けることを希求して「独立運営体」であるワクフを新設したのである。

 財を生むワクフ物件「ワクフ財」とワクフ対象「人や施設」からなる個々のワクフには、経営責任を負う管財人「ナーズィル」が必要である。通常は設定者が管財人をかね、自身の死後の管財人職の継承について細かく指定した。

 子孫を管財人や受益人に指定すれば財産の一部を手堅く継承させることが出来る点もワクフ設定が流行し続けた一因であった。

こんな裏があったんだね。ロシアの貴族が修道院に財産を寄付して、引退後に自分が修道院長に収まるのと同じだ。

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